たった一つのリズム 2
先輩達の車に分乗して、みんなとはしゃぎながら遠出した浜辺は、すごく天気が良くて波がキラキラ輝いている。
カラッと暑くて少しだけ風もあってとても気持ちいい。
サンダルを履いた足で踏む砂もあったかい。
チエちゃんとカズネ先輩、ライブで写真を撮ってくれるタッキーとケン、そしてオンちゃん先輩達は着替えが済むと手早くタープを張って日よけを作る。
ラジカセで音楽を流しながら、バーベキューコンロをセットして火を起こし始めた。
ビーチチェアも並んで、ちょっとした休憩スペースができた。
チエちゃんは宣言通り、オンちゃん先輩の側で幸せそうにビールを手渡していた。
ユッケとカズ君、セイはレンタルしたバナナボートとゴムボートを押して、さっそく海に入り水遊びを始めた。
「ミキ、一緒に泳ごう」とコウが言った。
「私、海で泳いだことあんまりないんだ」
「俺ついてるから、大丈夫」
Tシャツも脱いで裸足にハーフパンツの水着姿のコウが言った。
コウは筋肉質な手足が長く伸びて、胸も厚くてやっぱり水泳選手っぽい。
私もサンダルと水着の上に羽織っていたパーカーを脱いだ。
やっぱり、コウの前だと恥ずかしいな。
レンタルした大きな浮き輪もあっったので、それを持ってコウと海に入っていった。
コウは私がつかまっている浮き輪を引っ張りながら沖に向かって泳ぎ、ザブンと潜ったり私の周りをひと泳ぎしてユッケ達のバナナボートを襲撃し、彼らを水中に落としたりした。
ユッケも負けずに泳いでコウを追いかけ、沈めてくる。
コウは深く潜って逃げて、逆にユッケの背後を取って仕返しする。
キラキラ光る青い波間をコウやユッケは海の生き物みたいに滑らかに綺麗に泳ぐ。
そしてまたコウは私のそばに戻って来てくれた。
「コウ泳ぐの上手だね」
「うん得意、部活でも毎日泳いでたしね」
ユッケとコウは小さい頃から家族ぐるみで海水浴に行ったそうだ。
「親父同士も友達だから、ボートで沖に出ていきなり二人とも海に落とされて泳げーって鍛えられた」
「えー、むちゃくちゃ」
目が痛いくらい煌めく八月の青い空と海は眩しく大きく広がり、私はコウに笑いかけた。
「すごく気持ちよくて楽しい」
「楽しいね。それとミキ、水着似合ってる」とコウも笑顔で言った。
「チエと一緒に選んだんだよ。私はお腹出すの恥ずかしくてこれにしたけど」
「可愛いよ。でも、背中結構開いてる」
コウは言うと急にまた浮き輪を引っ張って泳ぎだした。
コウの泳ぎは結構速くて、はしゃいでいるユッケ達からみるみる離れて岸からも離れていく。
浮き輪につかまっているけど足が水底につかなくなった。




