1 布団の中にて(※イラスト)
ジェレマイア共和国ナイアガ自治州――そこに私の勤めている図書館はある。
ナイアガ自治州は他州からみたら大きめの市ほどの規模しかなく、そこにある州立図書館も他州の市立図書館ほどの規模しかない。
蔵書数は三十万冊ほど。そのうち魔導書は五万冊ほどで、開架に三万五千冊、閉架に一万五千冊ほどが所蔵されている。
開架――利用者が触れられる場所に出ている魔導書は、読んでも精神に影響がない、いわゆるクラスF~Cの魔導書が中心になっている。今日の魔導技術を支える重要な資料である。
閉架――従業員のみ立ち入れる書庫にある魔導書は、開架に出ているもので古くなったものや、精神に悪影響を及ぼす危険のあるクラスB以上の魔導書が中心に所蔵されている。
内容も今じゃ古いものや捨て去られた技術がたいがいである。隔離され、貸し出しや閲覧の制限さえ設けられている。
これは図書館法でも定められていて、取り扱いができるのは司書や魔導書取り扱いの資格を持つ者だけだ。
危険度の高い魔導書は、常人は読むだけでも頭がおかしくなると言われている。著しく精神に異常をきたし、正気を失わせ、最悪何らかの形で死に至ることだってある。
この図書館は、そんな魔導書が書庫に山ほど所蔵されている。
あえて言おう。
そんなもの新人に任せるかと。
館長の決定で、すでに従業員達には情報が伝達された。
圧倒的決定事項。
私が魔導書担当になったのは、もはやゆるぎない事実となっている。
どうすりゃいいのか、経験もノウハウもない私には全くわからない。
「…………」
いきたくねー仕事いきたくねー。
布団の中から出たくない。
思えば、勤務初日からおかしかったのである。
昨日が勤務初日で、二日目の今日、もう仕事行きたくなくなっているわけである。
私は怠けようとする身体を鼓舞するが、しかしいつまで経っても上体は起き上がろうとしない。
昨日繰り広げられた、げに恐ろしき出来事が思い起こされるのだ。




