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#79 ヘレンタール王国

 #79 ヘレンタール王国



 昶Side


 空中航空巡洋艦「クレアシオン」はこれまで航行していた険しい渓谷をようやく抜けてヘレンタール王国の領空へと入っていた。

 右舷500mにはつい先程合流したヘレンタール王国の魔導機兵搭載の空中軽巡洋艦「ヘルメース」が見える。


 遠くにはうっすらと巨大な浮遊島らしき物が空に浮かんでいるのが見える。

 いやいやいや、あれ異常に大きくないか?


「艦長、ヘルメースから入電」

「読み上げてちょうだい」

「はい……空中要塞都市「ヴァインシュトック」軍港の8番ドックにて修理及び各種補給の受け入れ準備が出来ているのでそこへ船を入渠させて欲しいとの事です」

「私の名前で「了解しました、ご厚意に感謝する」と伝えて」

「わかりました」


 クレアシオンは入港の為に速力を落としているからゆっくりと巨大浮遊島に接近して行く。


「巨大とは聞いていましたがこれは予想以上に大きな浮遊島ですね」


 一緒に艦橋の窓から眺めていた亜耶が普段冷静な彼女にしては珍しく驚いた表情を浮かべている。

 

「こんなに大きな浮遊島はラティス帝国にも無いんじゃないかしら」


 どんなに控えめに見ても以前あたし達が戦闘を行った13号浮遊島より遙かに大きく見える。

 これって浮遊島自体の直径が15km位はあるんじゃないだろうか。

 アニメ的にはアレだ、某デカルチャーで宇宙生物と戦った某超長距離移民船団の物語の舞台となった都市エリア宇宙船の大きさと同等って例えればわかりやすいかもしれない。


 その形状は下半分は球形の巨大なモジュールがたくさん接続されていてそれぞれの球が船舶のドックや港、工業区画や住宅区画、農業区画に別れていて上半分はビルの立ち並ぶ都市になっている。

 遠目に見るとまるで巨大な葡萄のような形である。

 なるほど、この要塞都市の名前が葡萄ヴァインシュトックになるわけである。


 近づいて行くと軍港が見えて来た。

 大小様々な空中艦、戦艦や大型空母、巡洋艦に駆逐艦、フリゲート艦や輸送艦に補給艦といった各種艦艇が係留されていてその間をタグボート等の小さな船が忙しく動き回り、更にその上空にはランドウイングを装備した魔導機兵や汎用VTOLが旋回し警戒している。


 浮遊島の中心部にはこれまた巨大なタワーがそびえ立ち、その周辺にはいくつかの大きな施設がある。


 あたしや亜耶がその巨大さに魅入ってる間にクレアシオンはヴァインシュトック軍港の8番ドックへとゆっくり入り、艦体がアームでドックに固定されて入渠した。

 

 船がドックに入って修理や整備といったメンテナンスをする事を「入渠」という。

 第二次大戦当時の軍艦を美少女擬人化した有名なソシャゲ、「艦隊をこれくしょんするあのゲーム」をやった人なら「ああ、あれの事ね」と納得いくと思う。

 

 入渠してすぐにティア艦長からあたし達パイロット全員に入渠しての修理期間の二週間のうち今日からの十日間、休暇と上陸許可が与えられた。

 あたしや亜耶、リトラはそれを聞いてすぐに私服に着替えるとヴァインシュトックの街へとこの軍港のPX(売店の事)で買った観光客用のガイドブックを持って出かけたのである。



 ヴァインシュトック要塞 商業エリア


 リトラは休暇と上陸許可を貰うなり私服に着替えるとストレス解消も兼ねてクレアシオンから降りると商業エリアへと向かった。

 最初は昶と亜耶も一緒だったのだがリトラはたまには買い物でもしようかと途中で観光名所へ行く予定を組んでいた昶達と後で夕飯の時に落ち合おうと暫く別行動を取る事にした。

 時間はまだ午前10時。買い物したり色々と楽しむにはまだ充分な時間がある。

 沢山の店やレストランや百貨店が立ち並び、路面列車(電気で走る鉄道は存在しないので魔力で走る機関車が小型の客車を牽引する)大きなメインストリートを歩いて行く。

 色々な店を見ながらのんびりと歩いているとリトラはそこからいくつも延びる路地が気になった。


「うーん……こういう路地に掘り出し物の良い店とかありそうよねえ……」


 リトラは裏道とでも言えばいいような狭い路地へと入って行った。




 ヘレンタール回廊 谷底


 昶や亜耶、リトラ達がヴァインシュトックに上陸するよりも半日程前の時刻、愛機を撃墜されたトリンガムは墜落する機体から脱出し救難信号を味方に出すとスクラップと化した愛機の前に座り煙草をふかしていた。


「やれやれ……全くついてないな、これで二機目を失ったか」


 トリンガム少佐は深く、盛大にため息をついた。

 目の前には左脚を失い、更にエンジンまで破壊されて撃墜されたメカル新政府軍の魔導機兵M5Mワーキャット。

 そのネイビーブルーに塗装された最新鋭機はラティス帝国の、やはり最新鋭機の可変型魔導機兵であるミスティックシャドウⅡとその支援砲撃型の量産機であるストラトガナーに自分の機体も含めた小隊4機全てが激しいドッグファイトの末に撃墜された。


「ミスティックシャドウⅡのパイロット、上手い奴だったな……それに射撃も恐ろしく正確だった」


 事前に聞いた情報ではミスティックシャドウⅡは副座で操縦と射撃や機関の細かい制御を二人の搭乗員で分担できるという。

 副座機にはそれぞれの搭乗員が自分の役目に集中しやすい利点があるが、逆に言えば搭乗員同士の息が合わないとその性能を100%発揮出来ないとも言える。

 しかし現実にミスティックシャドウⅡと戦ってみた結果、この機体の搭乗員はこれ以上は無いと言い切れる位それぞれの息がぴったり合っていた。

 しかも操縦技術も射撃の精度も恐ろしく高い。


「厄介な敵だがどうしたものか……ん?」


 脱出装備に付属している魔力通信機の呼び出し音が鳴った。


『ブルーソード1、聞こえるか?』

「こちらブルーソード1、感度良好」

『間もなくそちらに救助のオートジャイロが到着する、今後の行動はそのパイロットに伝えるよう言ってある。彼に命令書を渡してあるからその通りに行動してくれ』

「ブルーソード1了解、他のパイロットはどうなった?」

『ブルーソード3とブルーソード4は既に他の機体が拾い上げた、ブルーソード2は脱出出来なかったらしい』

「そうか……了解した、救助に感謝する」



 程なくして救助のオートジャイロが到着した。

 降りてきたパイロットから命令書を受け取ったトリンガムはその内容に目を疑った。


「ヴァインシュトックに潜入しろ、そしてメカルの連中の情報を持って来いだって?!上の奴らは何考えてんだ?俺はスパイ教育なんて受けてないぞ?」

「自分に言われましても……とにかく必要な装備はこれに入っていますので使って下さい、自分には別の機体が迎えに来ますので」


 思いもしなかった命令で眉間に皺を寄せながらトリンガムは飛行用のゴーグルや装備を身につける。


「観光客としてヴァインシュトックの民間空港から入るとはね……本当に大丈夫なのか?」

「ここに偽造したオートジャイロの免許証がありますから身分証明に使って下さい」

「やれやれ……乗る魔導機兵も無いとあっては仕方無い、か……では行ってくる」

「御武運を、少佐」

「ああ、ありがとう」


 トリンガムはオートジャイロのエンジンを始動させた。

 コクピットの後部にある推進用のプロペラが回転し始める。

 

 オートジャイロの外見はヘリコプターに酷似しているがヘリコプターとは異なりホバリングしたり垂直に離陸したりは出来ない。

 メインローターには一切の動力は無く推進用のプロペラによる滑走の風圧で自然に回転し、その回転で発生する揚力によって飛行する。

 だからヘリコプターのような垂直離陸やホバリングは不可能である。


 トリンガムの操縦するオートジャイロは短い滑走をすると離陸しヴァインシュトックへと進路を向けたのである。


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