表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/88

#75 空中軽巡洋艦鹵獲作戦2

 #75 空中軽巡洋艦鹵獲作戦2



 昶Side


 鹵獲に成功した敵の空中軽巡洋艦「スウィフト」は谷底の少しばかり開けた平地に強制着陸させられていた。

 無理もない。

 目の前で10門の重巡洋艦クラスの主砲を突きつけられたのだから。


 そしてその乗組員達全員は艦から降ろされて捕虜となった。


 現在、「スウィフト」の艦長であるバーラット大佐は他の幹部達と一緒に集められてティア艦長や新條麻衣副長、それとあたしと亜耶による尋問を受けていた。


「さて、バーラット大佐、貴方達の降伏は確かに確認しました。この空中軽巡洋艦「スウィフト」とその装備は我々が鹵獲します」

「仕方なかろう、だが乗組員達は……」

「今の所は貴方達がおかしな事をしなければ私達は「戦時捕虜条約」がありますから危害は加えませんよ……と、言いたい所ですが適用できる状況ではありませんね」

「なんだと!貴様条約を破る気か!」

「ラティス帝国軍、もしくはそれに依頼を受けた傭兵部隊が条約に従うのは「戦時捕虜条約を批准した国の軍隊やそれに準ずる傭兵や冒険者です」

「我々が該当しないとでも言うつもりか貴様らあっ!!」


 バーラット大佐が気色ばんで怒鳴るが横で涼しい顔をして聞いていた亜耶が口を開いた。


「メカル共和国軍は確かにその対象に入っていますね、でも貴方達はこの前の国際航空ショーでこう主張していましたよね?……『我々はメカル新政府軍である。先程、我が新政府はラティス帝国、ヘレンタール王国、リドニーク王国に宣戦布告を行った。それに伴い、この場における該当する国家の兵器・装備を接収する。我々は一部特権階級や特殊な出生による者が国や国民を我が物顔に支配する事を認めない。そしてその支配から世界を解放する事を宣言する。その妨害をする者は例え旧メカル共和国軍の者でもそれを実力を持って排除する』……つまり貴方達はメカル新政府軍であって、条約を批准したメカル共和国の軍隊ではないんです」

「なっ……詭弁だ!」

「ティア艦長!「スウィフト」の艦内を調べていたら色々な物が出てきましたぜ!」

「ここに持ってきて頂戴」

「了解です……おーい!こっちに持って来てくれ!!」


 ティア艦長が指示すると報告に来た本来ならば臨検や陸戦を担当するカールス大尉の部下である陸戦隊員達が「スウィフト」舷側にある物資の搬入に使うカーゴランプから何やら荷台に物を満載にした小型トラックを降ろしてきた。


「まあこれを見て下さい艦長……ひどいもんです」

「これは……!!」

「……呆れたわね」


 陸戦隊員達が次々に荷台から降ろした物。

 それは魔導機兵用の弾薬や部品、陸戦用の装備一式や書類等。 


「バーラット大佐、これはどういう事かしら?」

「……何を言っている?「スウィフト」には常時サンダーホークや汎用VTOLを搭載している、積んであっても不自然ではないだろう」


 あたしはため息をついた。

 もうちょっとよく見て欲しい。


「……あのねえバーラット大佐」

「なんだね少佐」

「じゃあ誓って言えます?この装備は貴方達「メカル新政府軍」の装備だと」

「その通りだ、我々が母港を出撃した時から積んであった物だ」

「ふーん……どう思う亜耶?」

「図々しいにも程がありますね」

「なんだと?」

「カールス大尉、その魔導機兵用の部品を裏返して貰えますか」

「へいっ……おい、手伝ってくれ」


 カールス大尉と何人かの陸戦隊員が魔導機兵用の部品を裏返した。

 そこには決めポーズをとる「剣を持った女神」のノーズアートのアニメ調イラスト。

 この前のセント・パッカード国際航空ショーでミスティックシャドウⅡに取り付けて展示しようとあたしが描いたイラストだ。

 もっともそれもあのクーデター騒ぎからの戦闘で取り付ける前にセント・パッカードから離脱してしまったのですっかり忘れていたのだが。


「さて。これはどういう事かしら?このイラストってこの前あたしが航空ショーの会場で、それも戦闘で離脱した前日に描いたものなんだけど?どうしてあんた達が持ってるのよ?まして「剣を持った女神」はあたし達傭兵部隊「アトロポス」が使っているデザインモチーフなんだけど?」

「う……それは……」


 亜耶が冷たい視線をバーラット大佐に向けながら事実を突き付ける。


「……これは新政府軍による略奪行為として見なしても何ら問題ありませんね。明らかに国際法違反ですし戦争犯罪人として問われる事案です……当然「国際捕虜条約」の対象からは外れます」

「とにかくバーラット大佐、貴官にはまだ色々と聞かなければならないようですね」

「くっ……」


 他の物も調べてみると出るわ出るわ。ラティス帝国の装備以外にもヘレンタール王国の展示ブースにあった備品まで。

 なにしろあたしと亜耶が戦闘に巻き込まれたときに一般客を巻き込んで射撃してきた装甲車まで艦内の貨物スペースにあったのだ。

 バーラット大佐がどこまで一般客を巻き込んだ戦闘に関わったかはまだわからないが流石にこれはただでは済まないだろう。


 結局、多数の略奪した物品が艦内から発見されてバーラット大佐やその副長や実際の略奪や戦闘行為を現場で指揮した隊長は捕虜として、そして戦争犯罪人として「クレアシオン」の営倉へと放り込まれる事となった。




 クレアシオン 機関室


「どう?修理は進んでる?」

「ここでは修理設備に乏しいのでどんなに急いでも明日の朝までかかります……工作艦が来てくれればこんなのあっという間なんですがねえ、それに敵の増援も派遣されるでしょうし」

「困ったわね……」


 整備班長のマスティンがティアの質問に愚痴をこぼしつつ答えるがその手はスパナを動かし続けている。


「それなら「スウィフト」の無線を使いましょう艦長……偽の電文を打つんです、幸い彼らの暗号表も今回入手していますから」


 麻衣の提案にティアはふむ、と考え込んだ。

 現状で放置した場合、メカル新政府軍は「スウィフト」から定時連絡すらよこさなければすぐに増援を派遣してくるだろう。

 そして現在の「クレアシオン」はセント・パッカードで受けられる筈だった補給もなくこのまま戦闘が続いた場合ジリ貧になる可能性が高い。


「そうね、その手を使いましょう」

「偽電文の内容はどうします?」

「そうね……入手した暗号表を使って「クレアシオンを手負いにした、三日後には決着が付きそうだからそのタイミングでの補給を望む」と電文を打って。それならもし私達の作業が遅れて増援があっても来るのは補給艦だから問題にはならないわ、でも交換作業は出来るだけ急いでね」

「わかりました、通信班に直ぐにやらせます」

「うん、お願い」

「あと「スウィフト」の乗組員達ですがどうします?」

「そうね……武器や武器として使えそうな物は全部取り上げて、彼らの補給艦が来るまでの食料だけ与えて「スウィフト」の営倉に入れておくしかないかしらね」

「そうですね……私達も補給が現状では見込めませんし」

「あと「スウィフト」にある食料も此方に運び込んでおいて、それと艦の弾薬はユニバーサル規格で使える物も、小型の銃火器は全部此方に……それと燃料の結晶石も全部ね」

「では作業は主計科とカールス大尉達の部隊に協力して貰います」

「そうね、それでいいわ……作業が終わり次第「スウィフト」は完全に破壊して二度と稼働出来ないようにしてから出発します」

「了解しました、皆に伝えます」


 かくして空中技術試験艦「クレアシオン」はなんとか追っ手を退け、少しばかりの補給をする事に成功したのである。


久しぶりの更新になります。

ここ暫くの間、新作のコラボ作品を書いておりました。

以前書いた「○○しないと出られない部屋2」でコラボしたあのキャラクター達との連載になりそうです。

ある程度書き貯める事が出来てから投稿しようかと考えております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ