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#70 セント・パッカード国際航空ショー

 #70 セント・パッカード国際航空ショー


 亜耶Side

 

 「このように「ミスティックシャドウⅡ」と「ヴァイスカノーネ」、更にこれを量産化した成層圏の影こと「ストラトシャドウ」やこれに遠距離砲撃支援パックを装備した「ストラトガナー」を現在開発し、実戦配備に向けて各種試験を行っております」


 昶がラティス帝国航空設計局の展示ブースでキャンペーンガールの格好でマイクを持ち、私達の機体の説明、プレゼンをしている。

 かく言う私もまるでアイドル衣装のようなキャンペーンガールコスチュームを着せられてアサルトギア形態のミスティックシャドウⅡの開け放したコクピットから観客達に手を振りながら一般には初公開となるマニューバギア形態へわかりやすいようにゆっくりと変形させる。

 世界初の可変型魔導機兵の変形に観客達からどよめきが聞こえた。


「すげえ……まるでガウォー○だ……」

「最初に見た時はZガンダ○やリゼ○みたいな機体かと思ったけどちょっと違うんだな」


 ………どうやら観客にも昶に近い世代の日本人転生者がいるらしい。


「ではここでミスティックシャドウⅡのメインパイロットの涼月少佐に聞いてみましょう」


 私はコクピットから飛び降りると昶の所に駆け寄りマイクを受け取るとその性能や武装について発表が許されている範囲で説明を始めた。


 …………それにしても何故に私と昶とリトラが航空設計局の展示ブースでキャンペーンガールまでやっているのか?

 その答えは簡単である。単純に「予算も人手も足りない」からだ。

 戦力の再編に忙しい帝国正規軍はもちろん、自分たちが世話になっている傭兵組織「アトロポス」もわざわざ専門のキャンペーンガールを雇う余裕など無いのだ。

 そのおかげで誰が観客へのプレゼンをするのかが決まらず、出航間際になってどう言う訳か私と昶とリトラにぴったりなサイズのコスチュームが艦に届いて半ば強制的に私達がキャンペーンガールをやる羽目になったのである。




 昶Side

 

 ああ、やはり亜耶は飛び抜けて可愛いし綺麗な娘だ。

 うんうん。

 キャンペーンガールを引き受けて良かった。一応設計局からもその分の手当を給料の時に一緒に出してくれるって言うし。

 それになんといってもあのアイドル衣装っぽいコスチュームを着た亜耶がめっちゃ可愛い。

 え?親バカ?

 そーだよ親バカだよそれの何が悪い!

 だって見てみ?ステージでミスティックシャドウⅡとストラトガナーの横でポーズを取っている亜耶やリトラ、あたしの3人へのカメラの砲列のまあ凄い事。

 そりゃ美少女が揃ってるんだからこうなるか。

 ………沢山のカメラに若干引き気味の亜耶とリトラの作り笑顔が微妙にひきつってるように見えるのは気のせいだろうか。

 この手のイベントでのアマチュアカメラマンって日本も異世界も変わらないのね。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 アレだよ、転生する前のあたしが、つまり生前に「亜耶が主人公の同人誌」を描いたりコスプレROMを製作してコミケで領布してた頃を思い出すわ。

 ………コスプレ可能エリアだった防災広場に少し露出が多めの衣装で出たらあっという間にやたらと大きなカメラマンの囲みが出来ちゃってコスプレ後にはSNSでその囲みを称して「#ウォール・昶」なんてハッシュタグまで付けられて拡散されてたっけ(笑)。


 今日は展示スペースに駐機しての展示のみで明日にはリトラの「ストラトガナー」と亜耶の「ミスティックシャドウⅡ」の2機で展示飛行をする予定である。

 ちなみにここへの到着が遅れている例のアグレッサー出身のパイロットが操縦する「ストラトシャドウ」は今日直接ここへ飛来する予定らしい。糸川大尉の話だとこれまで工廠での最終調整に手間取っていたのだとか。


 ちなみにメカル共和国軍が正式採用するのではという噂の「M5Mワーキャット」の展示飛行は今日の午後に行われる予定である。

 それもかなり気合いが入っていてこれまでに製造された試作機や先行量産機をかき集めた12機の部隊で派手にお披露目をするのだそうだ。

 ちょうど休憩時間と重なる時間帯だから亜耶と一緒に見に行く事になっている。リトラは自分の「ストラトガナー」の展示・説明のシフトと時間が重なっているので見たいけど来られないと言っていた。

 

 


 亜耶Side


「そろそろですね」

「そう言えば「M5Mワーキャット」って大パワーで振り回すタイプの魔導機兵って坂崎准将が言ってたよね」

「ですね、それにメカル共和国の次期主力魔導機兵の筆頭候補ですし正直どんな機体か気になります……まだラティス帝国の魔導機兵しか相手にした事がないですし」

「確かにこれまでクーデター軍やテロリストの機体が相手なのばっかりだねあたし達」


 昶は展示飛行しているメカル共和国軍の魔導機兵を眺めつつ頷いた。


「でも大パワーに任せて振り回すのは亜耶の好みとは違うんじゃない?」

「そうですね、多少ピーキーでも軽くて運動性能が高い機体が私は好きですから」

「亜耶は運動性能を活かしたドッグファイトの方が得意だもんね」

「はい……あ、「S-40サンダーホーク」が降りてきますよ」

「今の主力機の「S-40サンダーホーク」が「フェンリル」にパワーとスピードの両方で劣っているから「M5Mワーキャット」がパワー重視になったって噂あるよね」

「あり得る話ですね………それにしてもこの混雑、次の展示飛行がメカル共和国軍の次期魔導機兵の候補だけあって観客が多いですね」

「……そうだね、入間基地の航空祭より観客の密度は高いんじゃないかな」


 展示されている航空機や兵器を見学する観客の光景を見て昶が子供の頃に連れて行って貰った航空自衛隊の基地祭を思い出したのだろう。


 メカル共和国軍セント・パッカード基地の空港エリアと各国軍需企業の展示スペースはほぼ隣接している。

 それもその筈でこの基地の格納庫エリアの一部を解放してこの国際航空ショーに参加している軍需企業やこれに招待された軍隊の展示スペースにしているのである。


 空中艦の離着床も空港エリアにありこの目の前の滑走路を挟んだ向こう側に私達の現在の母艦「クレアシオン」が停泊しているのが見える。煙突から僅かに煙がたなびいているから主機を停止させずにいるのがわかる。


 その隣にはラティス帝国の隣国で安全保障条約を結んでいて軍事同盟関係にあるヘレンタール王国の魔導機兵搭載の軽巡洋艦がやはり停泊していた。

 他にもここを母港とするメカル共和国第一空中艦隊の戦艦や空母、巡洋艦に駆逐艦が共和国軍専用エリアの離着床に停泊しているのが見える。


 「M5Mワーキャット」の展示飛行までもうすぐだ。




 リトラSide


 うわあ……昶に「たぶんカメラマンがめっちゃ寄ってくる筈だから覚悟しといた方がいいよ」とは言われたけどさあ。


「………どこにレンズ向けてるんだよ」


 思わず呟く。マイクのスイッチは切ってあるから観客に聞こえる心配は無い。

 だってさあ、膝を地面に付けるように腰を落として、レンズを少し上に向けて撮影してる奴がいるんだけど。

 何処の部分を撮ろうとしてんだよお前ら。


「生前の昶がコスプレしてた時にカメコ対策に気を使ってたって理由がなんか理解できるな……」


 半ば呆れながらつぶやく。

 あ、カメコってのはコスプレやこの手のイベントでのアマチュアカメラマンの略称。

 まあとにかく凄いんだもん。カメコの群がりようが。

 ちょっと癪ではあるが確かに亜耶は飛び抜けて美人だし、あたしと亜耶の産みの親たる昶も(本人の自覚はあまり無さそうだが)美少女って言っていいレベルだし、この非常識な量のカメラの放列は理解するよ?

 でもなあ………うん。

 あ。勿論こういう場だから営業スマイルはしてるよ?これも給料がでる仕事ではあるんだから。


 それにしても。

 上手く言葉に出来ないんだけどなんかこの状況って言うかさ、空気が気にくわないんだよなー………。

 妙な胸騒ぎがすると言うか、嫌な予感がすると言うか。

 

「よし、決めた」


 あたしは小さく呟くとマニューバギア形態でステージに展示されている「ストラトガナー」前での撮影タイムを適当な所で切り上げるとステージ裏で機体の武器展示の準備をしている糸川大尉の所へ駆け寄る。


「あれ?どうしたんですリトラ大尉?」

「ちょっと頼まれてくれないかなあ」

「何をです?」


 きょとんとした表情で糸川大尉が聞き返す。


「ここにある弾薬は展示用に信管を抜いてあるんでしょ?」

「ええ、そうですが」


 それが何か?と言いたげな大尉。


「ちょっと耳を貸して」

「?……はい」


 あたしは考えている事を糸川大尉に耳打ちする。

 それを聞いた大尉は仰天した。


「駄目ですってばそんな事!」

「お願いだってば、このまま何事もなければそのまま元に戻せばいいんだし?」

「いやでもそれはマズいですよリトラ大尉」

「この前あたしが亜耶とACM訓練した後の艦長の話、覚えてるでしょ?この国の今の状況……だから、ね?」

「ちょ、ちょっと大尉?!」


 糸川大尉の腕を掴んでぐいっと引き寄せてその顔をあたしの両胸に抱く。


「あああ、あの大尉?!」


 両胸に顔を押しつけられ真っ赤になって慌てる糸川大尉。


「ね?終わったらちゃんとお礼するからさ」

「わわわわかりました、絶対に内密ですよ?!」

「うむ、よろしい」


 あたしは糸川大尉を離すとまたストラトガナーの所へと戻った。


 暫くすると場内の案内放送が聞こえてきた。


『観客の皆様、間もなく我がメカル共和国軍の次期主力魔導機兵「M5Mワーキャット」の部隊が西の方向から到着いたします、12機の編隊でのフライパスをするとそのまま展示飛行に入ります。皆様ゆっくりとご覧下さい』


 あたしの感が取り越し苦労だといいんだけどな。




 セント・パッカード空域、M5Mワーキャット隊長機コクピット内にて


『隊長、間もなく展示飛行空域です』

「アルファリーダーより各小隊、問題ないな?」

『全機異常なし………もうすぐですね』

「ああ、これで今の世界が終わり、新しい世界の始まりになる……我々がその先駆けになる。各機、気合いを入れて行け!いいな!」

『ブラボー小隊了解』

『チャーリー小隊了解』

『デルタ小隊了解』


 指揮下の部隊からの返事を聞き、隊長は満足そうに頷いた。


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