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#58 魔力飽和

久しぶりの更新です!

#58 魔力飽和


キャンドルタウン近傍空域


 空中駆逐艦「雷風」は着水して停泊しつつ各部のセンサーと見張りを増やしキャンドルタウンのマナヴォルカン群の警戒を続けていた。

 

「紫電の状況は現在どうなっている?」

「現在格納庫で魔力タンクの交換中です、代わりに雷光がロケット弾ポッドと航空魚雷の装備でこれから発艦するところです」

「そうか、次の交代までに紫電を出せるようにしておいてくれ、装備は同じく対艦、対潜装備でいい」

「わかりました、整備班に伝えます」

「雷光からの定時報告はどうなっている?」

「それが……今朝から魔力の上昇が観測されていますがそれ以外の新たな報告はまだありません」

「そうか、監視は続けさせてくれ」

「了解しました、それとフリゲート艦「冬霧」から電文です」

「確か「冬霧」は水上艦だったな」

「はい、先日の13号浮遊島事件で空中駆逐艦の損耗があったためにそれを出動させる事が出来ず水上艦が派遣されたそうです」

「そうか、まだ戦力の再編には時間がかかりそうだな、それで内容は?」

「間もなく所定の位置に到着するのでそれを持ってマナヴォルカン監視任務交代となるのでよろしく頼むとの事です」

「そうか、了解したと伝えてくれ」

「わかりました」


 程なくして空中駆逐艦「雷風」は水上艦艇であるフリゲート艦「冬霧」と交代し任務の引き継ぎを終えると母港であるパルマポート軍港へと帰投する為に移動を始めた。


 そして翌日。




 昶side


 やっと松葉杖を使わずに済むようになったあたしはナシュア少尉と病院前の大駐車場にいた。

 やはり治癒魔法による治療は科学に頼るよりも回復が圧倒的に早い。

 これでどうにか、全快とは言えないものの普通に動き回るくらいはできる。

 マナヴォルカン監視任務を「雷風」と交代するために「冬霧」が到着、それに伴って現在「雷風」の艦載機とそのパイロットとなっている少尉が「雷風」に戻るというのでその見送りである。


「じゃあ気をつけてねナシュア少尉、この前は救援に来てくれてありがとう」

「いえ、任務ですから…では失礼します」


 一通り挨拶をしてお互いに海軍式の肘をたてた敬礼をすると駐機姿勢で片膝を地面についた状態になっている紫電にナシュア少尉は搭乗しエンジンを始動させた。


「……ん?」


 ふとあたしは違和感を覚えた。

 周辺の空気、大地の雰囲気にである。


「……あれ?揺れてる?」


 僅かにゴォーっという音が聞こえる。地鳴り?


「うわっ」


 揺れが大きくなってきた。

 あれ?でもおかしい。揺れ方が不自然だ。

 あたしは転生前の日本で大きな地震を経験したが地震の揺れ方じゃない。


 目の前の駐機姿勢の紫電が大きく揺れて倒れそうになるが両腕を突っ張って耐えているのがわかる。


 突き上げるような、一際大きな揺れが一度だけドカンとくるとそれっきり揺れは収まった。


「地震にしちゃ変な揺れ方だったな……少尉、大丈夫?」

『私は大丈夫です少佐!今紫電のカメラアイが沖合に巨大な水柱を確認しました!』

「水柱?ナシュア少尉、状況の確認をお願い!」

『わかりました、離陸しますので下がってください』

「ん、任せた!」


 ナシュア少尉の紫電はあたしが下がるとすぐに飛行ユニットのランドウイングを展張すると離陸し沖合へ向けて飛んでいった。




 キャンドルタウン沖合 マナヴォルカン群上空


 同じ時刻、突如として海面が盛り上がった。

 目前の海の異常を察知した「冬霧」は取り舵を切り、盛り上がり荒れ狂う海面に正対させる。

 巨大な波に乗り上げた「冬霧」は艦首のバルバスバウを見せながらそれを越えるのがナシュアの紫電から見えた。

 そして。

 盛り上がった海面の直上に直径200mはあろうかという巨大な魔法陣が発生した。

 「冬霧」の主砲が即座に魔法陣の中心に向けられた。

 その中から何か巨大なものが浮上してくる。


「なっ、何あれ?……丸い?」


 それは魔法陣からまず半球状の姿を表した。

 その薄い緑色の表面には無数の穴が空いている。

 ずるり、とそれが魔法陣から身悶えするように抜け出そうと動いたように見えた。


「……アスコモイド?それにしては巨大すぎるけど…」


 アスコモイドというのは海のモンスターでありその外見は丸く海綿と茸を合わせた特性を持つ。

 その体は多孔質、つまり非常に沢山の穴が空いていてそこから胞子を飛ばし子孫を増やすが種類によってはその胞子を他の動物に付着し寄生させ命を奪う種類のもある。


「直径は「冬霧」の全長の倍くらいだから大体200mってとこか………あっ」


 フリゲート艦「冬霧」が主砲による射撃を開始した。

 先日のシー・サーペント出現以降は艦長の判断での魔導種に対する発砲を認める交戦規定が発令されている。


 「冬霧」の初弾が命中し爆炎が上がる。

 しかし次弾が着弾した時、アスコモイドらしき個体の前面に魔法陣が展開されそれを防いだ。


「厄介な……」


 「冬霧」が更に射撃を加えようとしたその時、アスコモイドらしき個体の多孔質の穴がいくつも虹色に輝くとそこから何本もの光線が「冬霧」の艦体中央部に照射された。

 「冬霧」は一瞬だけ持ちこたえると次の瞬間、真っ二つに折れて大爆発をおこした。


 ナシュア少尉は愛機に装備していた90mmSMGでは歯が立たないと判断し母艦である空中駆逐艦「雷風」に簡単に状況報告と増援要請をしつつ高度を上げた。


「攻撃魔法?!………馬鹿な!」


 通常ならアスコモイドは植物系のモンスターであり攻撃魔法を使う能力は無いというのが常識である。

 アスコモイドの多孔質の穴が再び虹色に輝くと今度はナシュア少尉の紫電に向けて光線が発射される。


「あんな物に当たれるかっての!」


 急横転からのスパイラルダイブでそれを回避したナシュアは再び機体を上昇させてアスコモイドから距離を取る。


「…………ん?浮遊してる?」


 ホロモニターに映るアスコモイドの下部を拡大して見ると海面から浮上しつつあった。

 その下には触手のようなものが蠢いているように見える。


「てっきりアスコモイドかと思ってたんだけど……触手だなんてクラゲじゃあるまいしどうなってるのよ、あれ」


 暫く上空で警戒飛行をしていると通信機の呼び出しがあった。

 スクランブル発進した帝国正規軍偵察機仕様の魔導機兵「フェンリルRF」の到着と入れ替わりで一旦その場から離脱しキャンドルタウンへ戻るようにと母艦から指示を受けてそこから飛び去った。

 どちらにしても魔導機兵1機の戦力でどうにかなるような相手ではない。

 いずれにしてもこれまでの駆逐艦やフリゲート艦1隻程度ではなく艦隊規模の増援、そしてキャンドルタウン側には陸軍の戦車と魔導機兵の混成部隊が大規模展開をする事になる筈である。




 昶Side


 病室に戻ったあたしは念の為に退院手続きが終わるまでの退屈しのぎに本を読んでいるとナシュア少尉から連絡があった。

 さっきの地震はマナヴォルカンから大型魔道種が出現した事が原因らしい。

 そして帝国海軍から派遣されていた水上フリゲート艦「冬霧」が撃沈され、更に監視している偵察機からの情報ではこのキャンドルタウンに向けてゆっくりと移動しているらしい。

 悪い事に空中駆逐艦「雷風」は補給のために既に離脱、それと交代した水上フリゲート艦「冬霧」が撃沈された為にアスコモイドらしき魔道種の周辺海域に戦力の空白が発生している。

 今から水上艦を派遣しても速力的に間に合わないと判断した艦隊司令部により空中巡洋戦艦と空中駆逐艦を主軸とした空中打撃部隊、対艦攻撃装備の魔導機兵が現場に急行しているという。


 このキャンドルタウンの市街地にも近くにある陸軍の駐屯地から装輪戦車、日本で言えば陸自の16式機動戦闘車に相当する車輪で移動するタイプの戦車が、同じく陸軍の主力魔道機兵であるアレスが既に展開し配置されている。


 愛用しているライフルからスコープを外して海の方を見ると例のアスコモイドらしき魔道種がゆっくりと陸へ、つまりこのキャンドルタウンへ移動してくるのが見えた。


「こりゃまずいかしらね」


 あたしは呟くとベッド脇のハンガーに掛けてあった傭兵部隊「アトロポス」のジャケットを羽織り病室を抜け出した。


 一階の病院エントランスに行くと既に病院から患者を避難させるために誘導したり付き添っている看護師や医師達が忙しく立ち回っていた。

 あたしの病室を担当している顔見知りの看護師に帝国軍の病院にこのまま移動するからと声を掛けるとそのまま病院を抜け出す。

 亜耶が修理と改造の終わったミスティックシャドウで夕方までに迎えに来てくれる事になっている。

 小型の通信機を持っているからそれに連絡が来る筈である。


前回の更新からずいぶん時間が空いてしまいました(大汗)

プライベートで色々とありまして執筆する余裕が

ありませんでした。

……………まあ今でもあまり余裕がありませんが。

毎週更新できるか断言は出来ませんがぼちぼち更新してゆくつもりです。


そうそう。

先日、このお話の短編「◯◯しないと出られない部屋 ~異世界に創作キャラと転生しました【閑話休題】~」を投稿しましたのでそちらもよろしくお願いいたしますm(_ _)m

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