#51 ラーシャとギルドマスター
カスタムキャストで昶と亜耶、それにリトラ、コルディアも作ってみました。
黒髪ポニーテールの娘が昶、銀髪ロングの娘が亜耶、金髪ツインテールの娘がリトラ、茶髪の娘がコルディアです。
今回の改稿をした時に挿絵を追加しました。
プロローグ、#2、#9、#12、#21、#23、#24、#25、#43、#47に挿絵を入れました。
#51 ラーシャとギルドマスター
二人は一緒に冒険者ギルドの喫茶スペースに入ると二人はランチセットを注文した。
日替わりのランチセットの紅茶を一口飲むとおもむろにラーシャは話し始めた。
「さて、本題に入るが私は魔法省技術管理局から依頼を受けてこのキャンドルタウンの街に来たのだ」
「え?魔法省からですか?」
驚く亜耶に頷きつつエルフ少女は話を続ける。
「うむ、これでも魔法技術学の博士号を持っていてな、それで魔法省にとある調査を頼まれたのだがさっきのような事に備えて、簡潔に言えばその間の護衛と簡単な助手を頼みたい」
「なるほど、魔法省の調査とその護衛という事は帝国政府の公式な護衛依頼ですよね?………ならば冒険者ではなくて帝国軍でも良いのでは?」
「いや、今の所は魔法省は軍隊まで関与させるつもりが無いらしいが私はそうは捉えていない」
「?………そこそこ厄介な事になりそうなんですか?」
ラーシャ博士は紅茶を飲みながら頷いた。
「うむ、断言は出来ないがここの住民の生活にも直接影響が出かねないと私は考えているのだがまだ確証が無くてな………早い話が確証の無い事象に税金を使って軍隊の護衛は出せんと現状では判断しているようだ」
「その辺は調査が進まない事にはわからない部分でもありますね」
「確かにな……どうだろう、受けて貰えないだろうか」
「うーん………報酬次第という事になりますが」
亜耶は少し悩んでいた。ラーシャ博士の話を聞く限り冒険者として護衛は普通の仕事に感じるが何か引っかかる。
「確かにそうだな、報酬の話もせずに仕事の依頼はないな・・・・一日あたり小金貨3枚でどうだろう、魔法省から言われている調査期間は十日間なのだが受けて貰えないだろうか、さっきのような輩を退けてもらえるならそれぐらいは支払わないとと思っているのだが」
条件としては十分といって良い金額である。
この世界の通貨には紙幣が存在せず、貨幣によって流通は成り立っている。
その貨幣一枚あたりの価値は日本円に換算するとこうなる。
大プラチナ貨=500万円
中プラチナ貨=100万円
大金貨=50万円
中金貨=25万円
小金貨=1万円
大銀貨=5000円
中銀貨=1000円
小銀貨=500円
大銅貨=100円
中銅貨=50円
小銅貨=10円
この依頼だと十日間で30万円相当だからかなり良いといっていいだろう。
「わかりました、お受けします・・・それと差し支えなければどんな調査なのか知りたいのですが」
「わかった、話そう・・・私が魔法省に頼まれたのは水質調査だ」
「水質調査?」
「うむ、最近この街の河口にある橋で役人が水質の定期検査をしたのだが不自然に高い負の魔力を検出してな、その原因とそれが何処から河に混入しているのかを調査する、というわけだ」
「例えば具体的にどんな事象での魔力混入を想定してるんです?魔導種の死骸が川底に沈んでいるだけでもある程度の負の魔力が流れると思うのですが」
「それも有り得る話だが………それ以外でも命を奪うような違法なマジックアイテムを生成する課程が原因だったりしたらまずいだろう?、例えば強力な麻薬に似た作用の霧を作り出す魔法薬とか……あとは今騒ぎになっているが新たなマナヴォルカンができた場合とかかな」
「マナヴォルカンですか………」
「ま、今想像した所であまり意味は無いがな、大切なのは調べて出てくる現実だ、では依頼受付のカウンターに貴女への指名でこの件を提出してくるよ」
「はい、宜しくお願いします」
「うむ、こちらこそ宜しく頼む」
話が終わり報酬受取の待ち合わせ時刻になると亜耶は冒険者ギルドのカウンターから呼び出しを受けた。
「これが報酬になりますがどうされますか?」
「少金貨20枚は受け取るので残りは私の口座に預けますのでお願いします」
「わかりました」
遊覧船護衛とシー・サーペント一体の討伐報酬は全額で護衛分と合わせて中プラチナ貨8枚、つまり800万円相当であった。
金額の内訳は遊覧船護衛が中プラチナ貨3枚、シー・サーペント討伐が中プラチナ貨5枚であった。
護衛に際して船の損傷があったとは言え乗員乗客がほぼ無傷だったために船主であるキャンドルタウン温泉観光ホテルの会長が相場の倍の金額を提示したとの話である。
「それでですね、当ギルドのギルドマスターとキャンドルタウン温泉観光ホテルグループの会長が貴方と直接話しをしたいと応接室で待っておられるので来て頂けないでしょうか?……先日の一件に関わる依頼と付近一帯の魔力調査なのですが……」
「魔力調査ですか…それならば私よりも詳しい方が今ここにいらっしゃるので同席を許可して頂けますか?」
「それはどのような方ですか?」
「魔法技術学の博士号取得者なので……ラーシャ博士!こちらに来て頂けますか?」
「ん?どうした?」
ラーシャ博士に事情を簡単に話し、彼女の身分証を確認した受付嬢はすぐにギルドマスターに取り次ぐと2階の応接室に亜耶達は通された。
亜耶 Side
私とラーシャ博士が応接室に案内されるとそこには眼光が鋭くがっしりした体格の中年男性と恰幅の良い50才位の紳士が待っていた。
一礼して部屋に入るとソファーに座るよう勧められた。
「シー・サーペント討伐と民間船護衛依頼ご苦労だった。私がここのギルドマスターだ、そしてこちらがキャンドルタウン観光ホテルグループの会長でキャンドルタウン商業ギルドのギルドマスターもしておられる」
眼光の鋭い男性が先に自己紹介した。元冒険者で現在は冒険者ギルドのギルドマスターといったところか。
「初めまして、涼月亜耶です。そしてこちらが……」
「私はラーシャという。魔法技術学の博士号を取得している」
簡単な挨拶を交わすと会長さんが話しだした。
「先日は我が社の大切なお客様と従業員を護って頂きありがとうございました」
「いえ、シー・サーペントの狙撃をしたのは昶……私の相方ですから」
「謙遜なさる必要はありませんよ、先日の一件で緊急依頼を出した時に経歴を見させて頂きましたが驚きましたよ……お二人共に騎士の資格持ちにしてレベルは上限の50lvを超えておられる」
「昶はまだ50lvじゃ……ああ、シー・サーペントを倒した経験値ですか」
「そういう事だ、それと来月から冒険者ギルドの規約改正でlv表示の上限が50から100までになる、それで改めて新しい冒険者証を配布する事になったんだ……忘れないうちに渡しておこう」
「ありがとうございます」
ギルドマスターから新しい冒険者証を受け取ると62lvに上昇していた。
「さて、本題に入りたいんだが…これは商業ギルドにも関わる話でね」
「それは私から話しましょう」
会長さん(両方ギルドマスターと呼ぶと紛らわしいので商業ギルドマスターはこう書く)がギルドマスターを制して話し始めた。
「実は最近温泉やその周辺の河川に異常がありましてな……温泉の湧き出す量にも下落傾向があって調査をしてみたのです」
「どのような異常があったのだ?」
ラーシャ博士が身を乗り出す。自分が調査する対象地域の異常なのだから当然の反応である。
「魔力の調査をしたのですが異常に増加していました」
「どういう事です?」
「行ったのは我々商業ギルドと市役所の合同なので大学や魔法省の調査ほど厳密な数値ではありませんがそれでも明らかに異常とわかる変化でした……これがそのレポートです」
ラーシャ博士は書類を受け取ると素早く目を通した。
「確かに誤差を差し引いてもおかしな数値だ……これは私の調査とも被るな」
「博士も調査に来られているのですか?」
「うむ、私は魔法省技術管理局の依頼で水質調査をしに来ていてな……彼女には冒険者ギルドを通じて護衛兼助手を依頼する為にここに来ていたのだ」
「そうでしたか……では我々商業ギルドとしても同様の調査を依頼させてください、何しろ大きな利益に関わる事案なので腕の立つ冒険者と魔法の専門知識を持つ方にお願いしたいのです……お二人共これを受けて頂けないでしょうか?」
「私は構いませんが仕事ですし一応相方にも話は通しておきますよ?」
「私も魔法省の許可が得られれば構わない、念の為にキャンドルタウン商業ギルドから魔法省への話を会長からしておいて貰えるか?」
「わかりました、充分な根回しを魔法省とここの市役所を始めとした各所にしておきましょう」
その後は現在商業ギルドが持っている全ての情報の受け取りをするとラーシャ博士と別れて昶が入院している病院へと戻った。
昶 Side
「おかえりー」
「ただいま戻りました」
「久しぶりの冒険者ギルドはどうだった?かなりlv上がってたんじゃない?」
「62lvに上がってました、昶も50lv超えたそうですよ」
「え?50が上限じゃなかった?」
「規約改正で上限が100までになったそうです…あ!それと今回の報酬ですが合計で中プラチナ貨8枚でした」
「そんなに?!」
「ギルドにあの遊覧船とホテルのグループの会長さんが来ていて乗客乗員に犠牲者が出なかったのでかなり上乗せしてくれたんですよ」
いやいや、正直驚いた。
さすが会長兼商業ギルドマスターだわ。
「それでですね、昶」
「ん?どうしたの?」
「実は新しい依頼がありまして」
「どんな?」
「それが……」
亜耶の話を聞くとどうにもこの前のシー・サーペント討伐事件と被ってそうな気がする。
なんか危なそうな話だなあ。
「それで亜耶は受けるつもりなのね?」
「はい、既に私達はこの一件に嵌っているように感じますし、それに放っておいたら大変な事になるように思えるので
「亜耶がそう思うならあたしはそれを信じるよ、でもまた大怪我したりしないでよね」
「大丈夫ですよ昶、安心して下さい」
何ていうか不安なんだよなー……。
どうも亜耶は真面目すぎて時々危なっかしい。
そして微妙に不幸体質なんじゃないだろうかって気がする。
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