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#46 敵、そして温泉。

今回は温泉回です!

……うん、やってみたかったのw

 #46 敵、そして温泉街。     



 亜耶 Side


 

「ほらほらぁ!!!何逃げてるのよカテゴリーⅡの亜耶ァ!!!」


 私の目の前のクロスシートが砕け散った。

 まずいなあ。私の主武器のアサルトロッドは列車内のような狭い通路での立ち回りには向いていない。

 昶ほど上手くはないが仕方ない。私は銃を抜くと3点バーストに切り替えてコルディアを牽制しつつ後退する。


「そんなもの効かないんだよぉぉぉぉ!!」


 コルディアはリフレクトを展開して銃弾をはじくと次々にニードルを飛ばしてくる。


「あはははははははは死ねよカテゴリーⅡ!!!!!」

 

 こいつは部下に命令してる間はまだしも自分で攻撃に直接手を出し始めると段々と見境が無くなってくるっぽい。

 なんて言えばいいんだろう。銃を発砲する度に快感を得るトリガーハッピーと言うのは聞いた事があるがこいつの場合はさしずめマジックハッピーと呼ぶべきだろうか。

 それにしてもいい加減鬱陶しい。

 とは言えこのままじゃちょっとまずい。

 

『亜耶、今隣の車両だけど援護するよ』

「わかりました、現在引き続き鉄道警備隊の車両でコルディアと交戦中です、接近する時は彼女のニードルに気をつけてください」

『OK、これから接敵するからコルディアの気を引いてちょうだい』

「了解しました、5秒程目をそらしてください」

『ん、了解』


 私は無詠唱でライティング、つまり照明の魔法と更に数個のビットの魔法を発動させるとそれを同時にコルディアの方に飛ばす。

 見た目がどちらもそっくりだから区別はほぼ不可能だ。


「そんな物!!!」

 

 コルディアも同じようにビットを発動させて迎撃する。

 そのビットは私が飛ばしたビットに命中し、次々に叩き落とす。

 その中に混ざっていたライティングに命中した。

 するとそれはすさまじい光球になり炸裂した。ライティングの魔力が一瞬で分解して強力なフラッシュ光に変化したのだ。


「うあああっ!!!目が!!」

「昶、今です」


 コルディアに気づかれないようにぽそりと喋る。

 一瞬目を閉じて顔をそむけるとコルディアはいったん車端部にあるデッキに後退しようとした。

 だがしかし。


「え?」


 コルディアが真後ろに振り向いた目の前には昶の脚があった。


「とりゃああああああああっ!!!」

「ぶげふううううううぅっ!!!」

「……………あ。」


 昶のドロップキックが見事にコルディアの顔面にクリーンヒットした。

 てっきり射撃で仕留めるものかと思っていたんだけど。

 蹴り飛ばされてひっくり返った時に後頭部を思いっきり床にぶつけたコルディアは目を廻して気を失ってしまった。 


「身も蓋も無い倒し方ですね」

「狭い車内で亜耶のいる方向に銃を向けるわけにはいかないでしょ……それに亜耶が相手ならコルディアでも余裕は無いだろうと思ったからね、実際注意力散漫になってたし」

「確かに、でもこのタイミングでコルディアが活動を再開したという事はまだ何らかの活動計画が存在している事になりますね」

「まだ13号浮遊島事件から日が浅いのにね……ま、後で魔法省に引き渡したら尋問を任せるしかないわね」

 取り敢えずコルディアが抵抗しないように魔法の発動体のブレスレットを没収して両手首を縛る。

 すると気絶していたコルディアが目を覚ました。


「さて、これで貴方の役目は失敗、さて今度の目的は何なんです?」

「教えるわけがないでしょう?じゃあ癪だけどさよなら」

「あっ!!」


 次の瞬間、コルディアの身体に無数のヒビが入るとそのままサラサラと崩れて完全に崩壊してしまった。


「転移じゃない……死んだの?」

「でもこんなにあっさり諦めて逝くなんて……信じられません」

「ま、取り敢えず報告はしとかなきゃね」


 結局その後、生き残っていた鉄道警備隊員数名を救助した後に列車は2時間遅れで目的地のキャンドルタウン駅に到着。一応積荷は無事。

 今回のコルディアの一件に関する状況説明は生き残りの隊員達も魔法省調査部に書類にして送ってくれるそうだ。ありがたい。

 私達は無線でまず簡単な報告を済ませてそのまま休暇となった。

 どっちみち2日3日で結論は出ないだろうから予定通り休暇にしても問題ないという事らしい。





 昶 Side


 「うわあ、いかにも南国の観光地って感じで既視感を感じるわね」

 「熱海や伊豆あたりの温泉地みたいな雰囲気ですね」


 そう感じるのも無理はない。

 地方の駅としてはかなり広い駅前広場にはソテツや椰子みたいな南国系の街路樹があり、町並みを見渡すと所々で温泉らしき湯気が立ち上っているのがわかる。

 そして海岸の方向を見ると岬の頂上にこの温泉街の命名由来となった大きな白い灯台、通称「キャンドル」が見える。


 駅前の商店には「名物キャンドルタウン温泉饅頭」とか「温泉水使用!!郷土料理キャンドルタウン鍋」なんて看板やのぼりが掲げられている。

 お土産物屋の店先にはペナントやキーホルダーご当地キャラらしき縫いぐるみ、何故か木刀が並べられている。


 駅前広場には数台の乗り合い馬車や魔導エンジンで走るバスがいて行き先を見ると「系統01 大灯台経由 温泉展望台」だの「系統02 温泉バナナ動物園」だの「系統03 温泉秘宝館前」だの………。

 ………って、ええええ?!秘宝館?!?!熱海かここは?!?!


 いやいやいや日本の温泉と変わらん風景なんだけどどういう事。

 ここって日系人転生者が多いのか?


 そうこうしていると駅からたくさんの乗客が降りてきた。ラティスポリス中央駅から来た特急が到着する時刻だからその乗客達だろう。

 次々にバスや乗合馬車に乗っていく一団と商店街へと歩いていく人達でにわかに駅前が賑わいをみせる。


 団体客は旅館やホテルの送迎の馬車やバスに乗るとそれぞれの宿へと駅から出て行った。

 今の日本は社員旅行の需要が少なくなって温泉旅館の団体客は減っていると言うがこの世界ではそんな事はどこ吹く風らしい。


「あっ、あの送迎バスじゃないですか?」


 亜耶が指差す方向を見ると側面に「キャンドルタウン温泉観光ホテル」と大きく書いてあるピカピカに磨かれた小型バスが駅前広場に入ってきた。

 シャフリラから受け取ったメモを見ると確かにその名前のホテルらしい。


 送迎バスで「キャンドルタウン温泉観光ホテル」に到着するとホテルの前に並んでいる従業員たちが一斉に礼をして出迎えた。

 フロントで手続きを済ませると従業員の女の子が部屋まで案内してくれた。


 「うわあ!いい部屋だー!」

 「オーシャンビューとはいいですね」


 案内されたのは最上階にある部屋だった。

 魔法省の、つまりお役所の福利厚生の旅館だからどんなもんだろうと思っていたのだがいい意味で裏切られた。


 ちなみに部屋がどんな感じかというとまず和室。

 床の間には鍵付きの小さな金庫と小さな行灯。

 そして窓の前の謎スペースには小さなテーブルとそれの両側に椅子。

 そしてその椅子の後ろに洗面台と魔法で冷やすタイプの小さな有料冷蔵庫。


 どこまでも日本の温泉旅館のテンプレみたいな部屋である。

 この温泉ホテルの設計したの絶対に日本人転生者に違いない。

 いや日本人として嬉しいんだけどね?異世界に来た時点で「日本らしさ」のある光景とか諦めてたし。


 よし、ちょっとこのホテルの中歩き回ってみよう。すっごく気になる。




 館内を歩いていると通路の壁に「ゲームコーナー →」という表示があったから見に行ってみた。


 「………卓球台にスマートボールですか………」

 「どこまでも温泉街のお約束があるわね………」


 他に何があるのか見回してみる。

 あ、ジュークボックスがある。

 あとはエレメカ的なゲームが各種設置してある。


 どれどれ。

 潜水艦のゲームで潜望鏡を覗くと筐体の中に模型の敵艦があってそれに向かって小さな魚雷を撃ち込んで命中すると敵艦が傾いて沈没するやつとかやはり筐体の中に模型の戦車があってそれにこれまた小さな模型の急降下爆撃機がダイブして爆弾を投下、命中の判定が出ると照明が点滅して爆発の音響効果がかかるやつなんてのがある。

 ……これ子供の頃に行った温泉旅館のゲームコーナーで似たようなの見た事あるぞ。


 大浴場の前の通路脇にはラーメンスタンドや小さなバーがある。


 フロントの近くにはお土産の売店スペースがあった。

 売り場の台の上には温泉まんじゅう、地元の果物を材料にした小さなケーキやクッキー、ゼリーの詰め合わせがたくさん積み上げられている。

 他には地元の野菜を使った漬物や魚の干物、おつまみや乾物、キーホルダーや簡単なおもちゃ、観光ガイドブックが売られている。 


 ここまでくるとほぼ完全に日本の温泉旅館と変わらないな。

 ホームシックになっても完全にそれが吹っ飛ぶレベルだ。


 さて、今日はまだ時間がたっぷりあるし夕方まで亜耶と海にでも行くか。



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