#40 大型ジェネレーター
#40 大型ジェネレーター破壊
昶Side
「もう!どれだけオートマタを配備したのよ!キリがないじゃない!!」
いやマジで次々に戦闘用の武装オートマタが湧いて出てくる。
弾薬だって無限にあるわけじゃないしどうするよこれ。
「とにかくジェネレータまでたどり着かないとどうにもなりませんな」
「オートマタの制御はどうやってるのかわかる者はいる?」
「おそらく制御を司る魔術師がいる筈ですがそれだけの魔力とそれを制御出来る者は限られます・・・・例えば魔力キャパシティが大きい者やその制御能力が極めて高い者が考えられますが・・・」
「巨大な魔力のキャパシティね・・・まず間違いなくジェネレータを使用していると考えるべきか・・・」
「この13号浮遊島の魔術士官にどの程度の奴が配属されているかですが・・・」
「・・・亜耶は正気に戻ってるし考えるまでも無いか」
「また来ますぜ!」
「ああもう鬱陶しい奴ら!!」
みんなそれぞれ遮蔽物に身を隠して射撃しつつ排除するがどうにもキリがない。
亜耶Side
「・・・・・・・・?・・・・・おかしい」
私は撃墜したセンシングホークに違和感を覚えた。
・・・・・・何か違う。
上手く言葉に出来ないけどおかしい。妙な魔力を感じる。
「完全に破壊した筈ですが・・・」
105mmアサルトライフルを構えながら慎重にセンシングホークの残骸に近づいた。
銃口をコクピットに向けたままミスティックシャドウの右足でうつ伏せになって倒れているセンシングホークを転がしてコクピットハッチを上に向けた。
「・・・・コクピットブロックが!」
センシングホークの残骸からはコクピットブロックが丸ごと消えていた。
私はミスティックシャドウから降りると周囲を警戒しつつセンシングホークの胴体に登った。
「そうか、転移魔法・・・・!」
転移魔法は短距離しか使えない。発動させる為に膨大な魔力が必要というのもあるがそれ以前に転移する本人の身体が持たないからだ。
最悪の場合その肉体が膨大な魔力によって崩壊する可能性がある。
とは言えこの浮遊島の範囲内ならば多分問題無く転移出来る。
・・・・・いや、でもそれは「普通の人」の場合だ。
そうか、こいつの能力ならあるいは。
いずれにしても、もしあいつがジェネレーターに転移魔法で向かったとすれば昶達が危ない。
「トパーズ1よりアトロポス管制・・・ノイズが酷い・・妨害?」
周辺の魔力濃度が上昇してる。多分その影響で通信が効かないんだ。
遠くへ逃げられない以上行ける場所は限られる。
私はミスティックシャドウを離陸させると13号浮遊島のドッキングポートへと機体を向ける。
するとヴァイスカノーネが接近してきて手首から発射した直接通信用のワイヤーをミスティックシャドウに吸着させた。
ノイズで通信が出来ないのはヴァイスカノーネも同じらしい。
『どうしたのよ?』
「センシングホークのコクピットブロックが丸ごと消滅しています、おそらく転移魔法で脱出したかと」
『でも転移魔法じゃロクな距離移動出来ないわよ・・・そうか、ジェネーレーター!』
「おそらくそうかと」
『どうするつもり?あたしも付き合うけど』
「陸戦隊の援護に向かいます」
『そうね、どっちみち施設内に転移したと考えるべきだし』
「このまま突入します」
私は戦闘機形態のミスティックシャドウでドッキングポートに突入した。
さっきのアトロポスの艦砲射撃とキャンドルタウンの自爆で大破したプロメテウスの真横を高速で通過すると人型形態に変形させたジェネレーターに通じる通路に着地させる。
着地したミスティックシャドウは脚部スラスターを使用したホバー走行でそのままジェネレーターへの通路を駆け抜けて行く。
昶Side
「これで最後の一体!!」
ガラガラと音を立てて戦闘用オートマタの最後の一体が崩れ落ちた。
その時、ズシンという振動が響いた。
「今度は何!?」
突然通路の先で発生したらしい大きな破壊音にあたし達は顔を見合わせた。
どう聴いてもヤバそうだ。
「なんだありゃ?」
双眼鏡から目を戻したカールス大尉が呟いた。
「どうしたのよ?」
「ちょっと見て下さい」
「どれどれ・・・・」
通路の陰から覗いてみるとその先には目指していたジェネレーターが見えた。
その大きさは3階建てのビル位はあるだろうか。それは無数のパイプや水槽のような大きなガラス管が繋がっている。
それはまあいいのだが、その手前に小さな翼、何ていうのかな・・・・カナード翼に小さな前進翼とその両端にウイングレットの付いた小型の航空機のような物がある。
どうやらそれが魔導機兵の脱出ポッドを兼ねたコクピットブロックであるらしい事に気付いた。
「ねえ、あれ不自然じゃない?・・・・どう見ても普段からあれが追いてある感じじゃないわよ」
「見た所魔導機兵のコクピットブロックっぽいですな・・・それにしても」
「何でここに?・・・よね」
「ですなあ、格納庫どころか整備スペースですらないときた」
『トパーズ1・・・陸戦隊、聞こえ・・・』
「亜耶?」
『良かった、無事・・・たか』
「どうしました亜耶姐さん」
『魔力濃度が高く・・・手短・・・・ます・・・』
「ノイズが酷いみたいね・・・も少し大きな声でお願い亜耶」
『コルディアの身柄・・・センシン・・・撃墜・・・・コクピットブロ・・・・転移・・・・・私も・・・・』
「亜耶?!」
そこでノイズが酷くなって通信が全く使えなくなった。
「肝心な所で切れましたな」
「ま、大体の想像は付くけどね・・・・あのコクピットブロックごとコルディアを確保するわよ」
「了解しました」
コクピットブロックに銃の照準を合わせたままみんなで取り囲みつつ慎重に近づく。
いわば脱出ポッドだからコクピットブロックそのものには特に武装は無い。
しかし乗っている本人が武器を構えて出てくる可能性は考慮しておく。
「!」
コクピットブロックのキャノピーがプシューっと音を立ててゆっくりと開いた。
「なるほど、流石に練度の高い傭兵部隊だけの事はあるわね」
「お前・・・・!!!」
あたしは躊躇せずにコルディアの脚を狙ってアサルトライフルの引き金を絞った。動けないようにして身柄を確保する為だ。本音を言えば今すぐにでも射殺したいのだが。
「無駄よ」
「うあっ!!」
跳弾した弾丸が跳ね返りあたしの左肩を擦過した。
コルディアの脚に弾丸は命中するはずだった。
だがそれは魔法の障壁に防がれてしまった。いや、防がれたのとはちょっと違う、反射させて弾き返した、というべきだろうか。
亜耶がよく使うフォースフィールドともマジックウォールとも異なる。そうか、多分これは艦砲射撃を防いだあの防御魔法とほぼ同じやつだ。
「私の部隊が開発した新しい防御魔法、「リフレクトシールド」よ、銃どころか出力次第で艦砲射撃だって防ぐわ」
「でも貴女の敗北は変わらないし意味無いでしょ、それに帝国軍の別働隊が既に司令室を抑えているはずよ」
「そんな事どうでもいいわ、ここでの用はもう済んだからジェネレーターごと貴方達を処分させて貰うわ・・・・さて」
コルディアはジェネレーターに向き直ると何か呪文を詠唱したように見えた。
するとジェネレータ本体やそれに繋がる無数のパイプ、透明なガラス管から淡く輝く魔力の粒子が漏れ出す。
低い音を立てながらジェネレーターが稼働し始めた。
「それじゃあせいぜい生き残りなさいな、あのカテゴリーⅡにやられたのは癪だけど私はこれでサヨナラするわ」
「そんな事許さない!!」
あたしはアサルトライフルに装着されているグレネードランチャーを発射した。
小銃弾が駄目ならあるいは。
「無駄だと言ったでしょう!!」
「っ!!!」
グレネードランチャーの弾もリフレクトで反射させられてダメージを与えられなかった。
「昶!!下がって下さい!!」
「亜耶?!きゃあっ!」
「コルディア!!!!殺す!!!!」
横の壁を吹き飛ばしてミスティックシャドウが突入してきた。
一瞬あたしはゾッとした。普段あれだけ冷静な亜耶がここまで怒りの感情をあらわにするのは初めて見た。
「あら、カテゴリーⅡの亜耶ちゃんも来たの?でも残念、貴女を殺すのは次の機会にしてあげる」
「減らず口を!!」
ミスティックシャドウが105mmアサルトライフルをコルディアめがけて発射した。
その弾はコルディアに直撃するはずだった。しかしその弾丸はコルディアの身体を透過してその後方の壁に命中した。
「転移魔法・・・!」
「じゃあね、詰めが甘いわよ貴方達・・・ああ、この周辺を捜索しても無駄よ?」
「くっ!!」
それだけ言うとコルディアの姿は綺麗さっぱり消えてしまった。
「そんな遠くには転移魔法じゃ行けないはずよ」
「・・・・それは「普通の人」の場合です昶」
「どういう事?」
「コルディアが文字通り「普通の人」ならば近距離の転移しか出来ないでしょうがもし彼女が魔法によって身体を強化されていたとすればかなりの長距離を転移魔法で移動できる筈です」
「そっか・・・・そういやこの前転移魔法について色々調べてたっけ・・・うわ!」
大きく床が揺れた、いや違う。ジェネレーターのあちこちから火や煙が吹き出している。
「ジェネレーターが暴走してますぜ!あの性悪女め細工して行きやがった!!」
「大尉、周囲にどれ位の被害が出ると思う?」
「最低でもこの浮遊島が真っ二つになるくらいは」
「昶!ジェネレーターへの魔力供給のパイプを破壊しますから先にアキレウスで脱出して下さい」
「わかった!みんな、下がるわよ!」
あたし達は通路をアキレウスに向けて走り出した。
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