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#32 レイ・リフレクター

 #32 レイ・リフレクター


  アトロポス 艦長室にて


 「・・・・今回の一件の報告は以上です」

 「コーネウス准将か・・・まさか涼月少佐の精神を乗っ取った上に拉致して飛び去って行ったとは・・・」

 「・・・・・申し訳ありません・・・・あたしの責任です」

 「お前さんを攻めてる訳じゃないさ、我々もコーネウス准将の資質を把握していながらこの事態を防げなかった時点で同罪だよ若桜少佐」

 「そうですよ少佐、自分らの飛行隊だって5分早くスクランブルできていれば状況は違っていたでしょう」

 「・・・・はい」


 「問題なのはセンシングホークは一体何処に消えたのかだ、、あの機体の航続距離内に基地どころか民間レベルの小さな空港すら無いというのに・・・・考えられるのは母艦の存在だが心当たりはあるかね副長」

 「コーネウス准将の指揮下にあるのは技術試験艦「プロメテウス」ですが3日ほど前に13号浮遊島を出航しているそうです」

 「13号浮遊島?」

 「空中ドックのひとつよ、元々は試作兵器工廠だったんだがその性格上今は魔法技術試験隊が使っているの」

 「うーん、3日あれば該当空域まで来られるな」

 「それともう一つパルマポートの帝国軍艦隊司令部から気になる情報が、結晶石を輸送中だった012号輸送艦が消息を絶ち現在行方不明だそうです」

 「やれやれ、問題は山積みだな・・・・」


 「まだありますよ艦長、先程パルマポートの艦隊司令部から入った情報ですが」

 「・・・まだあるのか副長」

 「13号浮遊島ですが忽然と消えてしまったそうです」

 「あれは移動自体は可能だったな」

 「はい、試作の戦艦用の主機がありますのでそれを使えばゆっくりですが可能です」

 「しかしあれから散々索敵部隊をだしていますが全く引っかからないのは変ですよ艦長」


 「・・・13号浮遊島は帝国軍が捜索するだろう、とにかく索敵機は現状維持の態勢で続ける、この件は艦隊司令部にも報告を入れておくから我々は涼月少佐の救出作戦を考えなければな・・・・良い作戦案を期待しているぞ」

 「とにかくここは前向きに行動する事を考えましょう、少佐」

 「ありがとうございます艦長、副長」

 「絶対に帰ってきますよ、あの涼月少佐がそう簡単にくたばったりはしませんって」

 「・・・・うん」


 アトロポス魔導機兵部隊の隊長であるルスター大尉が昶をなだめるが昶の涙は止まらなかった。




 アトロポス艦内 士官食堂


 亜耶がコルディアに連れ去られてから3日経っていた。

 昶は未だに亜耶が突如として自分の前からいなくなってしまったショックから立ち直れずにいた。

 

 「まだ落ち込んでるんですか昶姉さん」

 「・・・カールス大尉」

 「身も蓋も無い言い方ですがこの稼業やってりゃ仲間がいきなりいなくなるなんて珍しい事じゃありませんよ」

 「それはわかってるつもりだけど・・・・・・・ってちょっと!」

 「なんです?」


 カールスはしれっとした顔で昼食を口に運んでいる。


 「なんかその言い方だとまるで亜耶が死んだみたいじゃないのよ!」

 「・・・・・なんだまだそれだけ元気に喋れるじゃないですか」

 「だって・・・!」

 「元気に喋るくらい出来ないと亜耶姐さんが戻ってきた時に呆れられますぜ」

 「・・・・・・・そう・・・だよね」


 昶は昼食を終えたトレーを持つと立ち上がった。


 「で、どうするんです?」

 「資料室、それとすぐには母艦は見つからないだろうからちょっとセレーネでお出かけかな」

 「どうやら頭を切り替えられたみたいですな」

 「切り替えって程じゃないけどさ、ちょっと色々調べ物をしに出たいのよ・・・それと」

 「なんです?」

 「ありがと」


 昶は士官食堂を後にすると格納庫へ向かった。




 魔法省調査部にて


 「大体の状況は妹から聞いてるわ、大変だったみたいね昶」

 「でもまだ亜耶の行方がわからないんです」


 魔法省調査部のシャフリラ大佐と強襲揚陸艦アトロポス副長のティア中佐は姉妹である。

 それ故によく似ている。


 「で、調べたい事があるって話だけどどんな事なの?」

 「帝国軍魔法技術試験隊についてです」

 「近衛騎士の資格があるんだから帝国軍でも調べた方がいいと思うわよ」

 「そっちは坂崎艦長が調べてくれるそうなので手分けしてあたしは魔法省調査部でって話になったんですよ」

 「うーん・・・ちょっと待って昶」


 シャフリラはぶ厚い資料を戸棚から出すと開いてみせた。


 「確かこれにあったと思うのよ、母艦はまだ発見出来てないそうね」

 「はい、稼働できる機体全部を投入しているんですけど未だに・・・」

 「あったあった、これだわ」

 「なんですこれ?「レイ・リフレクター計画」?」

 「艦艇や航空機を視覚的に隠す・・・と言うよりも消し去る魔法技術らしいのよ」

 「どれどれ・・・技術概要・・・「レイ・リフレクターとは魔法技術試験隊が実証試験までこぎつけた新しい魔導兵装の一つである。その原理は魔力粒子によって特定座標の可視光線の屈折率を自由に変えて任意の物体を視覚的に消し去る技術で有視界戦闘が主である艦隊戦および航空戦において奇襲攻撃の確実性を著しく向上させる先進技術である」・・・・・?」


 これって光学迷彩の一種と理解するべきなんだろうか。

 そう考えると対抗策も練りようがあるかもしれない。


 「センシングホークの航続距離内に母艦が見つからないと言うのはこれが原因じゃないかと思うのよ、以前この技術資料をコーネウス准将が読んでいたのを思い出したの」

 「確かにこれなら航続距離内に母艦がいても索敵機が発見出来ないのも納得出来ますね」

 「もし彼女がプロメテウスをセンシングホークの母艦にしているのならこれの実証試験の機器を艦に搭載していると考えるべきかもしれないわよ」

 「そうなると奇襲攻撃は向こうのタイミングで仕掛け放題ですよね」

 「そうなるわね、だから「ディメンション・カウンター」としてのテロ行為に利用する可能性は大きいと考えるべきよ」

 「なるほど・・・何か他に魔法技術試験隊がやっていることについて心当たりはありませんか大佐」


 昶の問いにシャフリラはしばらく考え込んでいたが何かを思い出したように顔を上げた。


 「そう言えばコーネウス准将が大型の魔導ジェネレータの技術情報を欲しがっていたけどそれに付いても調べた方がいいかもしれないわね」

 「大型の魔導ジェネレータですか?艦船の主機の物くらいしか思いつきませんが・・・」


 昶の言葉にシャフリラはゆっくりと頭を横に振った。


 「違うわ、船舶用よりもっと大規模で高出力な施設を13号浮遊島に実証施設を建設したらしいのだけどそれ以上は帝国軍でも現状じゃ把握していないらしいのよ、目的すら判明していないの」

 「問題なのはジェネレーターに何を組み合わせるかですね」

 「魔力を収束して放射するだけでも大変な破壊力が得られるでしょうけどコスト的に割に合わないのよ」

 「それでも警戒するには充分な高出力ですね」

 

 その後も色々と魔法省調査部にある資料を引っ張り出して調べたものの大きな成果は無く昶はアトロポスへと戻る事にした。




 昶Side


 「うーん・・・「特定座標の可視光線の屈折率を自由に変えて任意の物体を視覚的に消し去る技術」か、厄介だな・・・」


 どうにも対処に困る技術である。あたしが元いた地球世界でのステルスに匹敵するだろう。

 もっとも消し去るのはあくまでも「視覚的に見えなくする」だけであってアニメの次元潜航艇みたいに異次元に潜るというわけじゃないし、実体としてのプロメテウスはその場に存在しているんだよな。

 ん?「実体が存在する」なら見えるようにすればいい?


 「・・・・そうか、これでプロメテウスを見つけられるかもしれない」


 あたしはセレーネのコクピットで呟いた。




プロメテウス艦内 ブリーフィングルーム


 プロメテウスのブリーフィングルームはそれが終了したらすぐ出撃できるように格納庫の近くにある。

 亜耶とリトラは作戦図が投影されたスクリーンの前の席に座りコルディアの説明を聞いていた。


 「さて、貴方達二人に仕事よ」

 「どんな内容なのよ」

 「聞きましょう」

 「貴方達にアトロポスを潰してもらいます」


 少し考えてから亜耶が口を開いた。


 「それは組織としてのアトロポスですか、それともあの艦をですか」

 「そうね、まずは主戦力たる空中強襲揚陸艦「アトロポス」からね」

 「あの艦の練度は極めて高いですよ司令」

 「認めたくないけどかなり手こずると思うわよ」

 「専用機の使用及びその特殊兵装の使用を許可します、それでかなり楽になるはずよ」

 「そうですか、わかりました」

 「あーあ、また生みの親とやりあうのかあ」

 「あら、気が進まないのなら辞退してもいいのよ、それならそれで涼月少佐に一任するから」

 「やらないなんて言ってないでしょ、ところであんたはそれでいいの?」

 「どういう意味ですリトラ」

 「あんたのパートナーやってた産みの親よ、あいつは射撃がやけに上手いし確実に魔導機兵で出てくると思うわよ」

 「関係ありません・・・・昶の実力は把握していますし私が相手をします」

 「あっそ、じゃああたしはあの艦の兵装を潰すからあとはあんたに任せるわよ」

 「ご自由にどうぞ」

 「アトロポスはまだあの空域を中心にしたセンシングホークの航続距離内を重点的に捜索、索敵を続けているから他の帝国軍部隊と合流する前に襲撃するわ、出撃は一時間後、任務完遂の後にこの艦に帰投する事、いいわね二人共」

 「はあい」

 「了解しました」


 亜耶とリトラは作戦内容を頭に入れるべくコルディアから受け取った資料を読み込んだ。

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よろしくお願い致しますヽ(´▽`)/!

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