#2 「うちのこ」と合流!
二人目のヒロイン登場回になります。
#2 「うちのこ」と合流!
ラティス帝国のとある街道にて
昶は現世で死んだ時の年齢、17才の状態でこの世界の教会で転生した。教会で聞いた話ではまず神様のお告げの後に転生担当の神、つまりこの場合はシリカを信仰している教会に転生するのだがそれ自体は珍しいものではなくてこの世界にはかなりの数の転生者が存在するらしい。
取り敢えずの生活の糧にと教会で貰った転生者給付金、転生証明書を受け取った昶はそこの神父に転生者はどうやって生活をしているのか聞いてみた。
するとやはりというか異世界転生のお約束というかシリカの言っていた通り冒険者になる者が多くまずは冒険者ギルドの場所を聞いて行ってみる事にした。
転生したラティスポリスという大きな都市の冒険者ギルドで登録した時にギルド直属の武器屋でスコープ付きの小銃と拳銃に護身用の剣、防具を買うと、折角高めの冒険者能力があるからとギルドで登録をした。
冒険者ギルドの新規受付カウンターの女性から冒険者証明カードを受け取るとlv28になっていた。
職業クラスは「戦士/射手」を選ぶ。
魔法を使ってみたかったのだが昶は魔法使いは選べなかった。転生者は生前の種族特性を引き継ぐために生前に魔法を使えなかった(当然といえば当然だが)昶には選べなかったのである。
それでも昶自身のステータスには魔力がありそれは何のためにあるのか訊いてみたら精神攻撃系の魔法に対する抵抗値やマジックアイテム、例えば攻撃魔法を撃てる指輪のような魔術師以外でも魔法を使用できるアイテムを使う時に消費されるとの事であった。
ちなみにこの世界の冒険者の職業には戦士や魔法戦士、魔術師や僧侶といった基本的な職業以外にも「魔導機兵・魔導航空機パイロット/装甲車等運転手」というのがある。
魔導機兵というのは大出力の魔法炉を搭載した身長18m程の機動兵器で現在の軍隊の装甲兵器の主力となっていてアニメやゲームで言ういわゆるリアルロボット系の人型兵器に相当する。
軍から払い下げられた魔導機兵や装甲車を使って大型モンスターの討伐や隊商の護衛等の依頼を受ける冒険者は結構多いらしい。
二次元オタクとしてはその魔導機兵とやらが非常に気になる所である。
ところでこのlv28という初心者の割に高めのlvがついたのはどうやら転生した時にシリカにすぐにまた死んだりしないようにと付与してくれたそれまでの人生経験値や高めに付けてくれた各能力値を総合した結果のlvだと昶は受付の女性から説明された。
ちなみに新規登録の冒険者の場合はその人物のこれまでの職業や経験によってスタート時のlvは変動する。
わかりやすく言えば冒険者ではなくてもそこらの冒険者より強い軍人や格闘家はいるし、例えば軍人や猟師ならば初登録の初心者でもそれまでの経験に比例した高めのlvが付くといった具合である。
だから冒険者登録したらlv1からスタートするという事はまずあり得ない。
昶がスコープ付きの小銃を武器に選んだのは現世にいた頃にサバイバルゲームで電動ガンやガスガンを使って狙撃手として遊んでいたからというのと、昶の父親が陸上自衛隊員でその知識を色々と教えて貰っていてそれを覚えていたからである。
更に小銃を試射した時の感覚に琴線に触れる物があったからだ。
そして昶が転生してから一ヶ月たった今日は比較的簡単な仕事として都市間を移動する商人の荷馬車の護衛を引き受けていた。
・・・・・・・・・・そして。
昶達はいきなり苦戦していた。
本来なら大きな幹線街道沿いである故にモンスターや野盗の襲撃はほぼ無いはずの旅路だった。
しかし。
現れたのは昶達護衛の冒険者を遥かに上回る30人程の野盗の集団だった。
それに対して三台の荷馬車の護衛の冒険者は昶達六人しかいなかった。
「このっ!サバゲーでスナイパーやってた腕をなめんな!」
昶は愛用の小銃で既に何人も仕留めているが劣勢は覆しようがない。
善戦している、と言って良いだろう。なにしろかれこれ一時間程持ちこたえているのだ。 が、しかし多勢に無勢。昶達はじりじりと押されつつあった。
「うわあああああっ!」
一緒に護衛に付いていた冒険者の戦士一人が弓を足に喰らって倒れた。
何しろ街道沿いの比較的安全とされる道中での護衛の仕事だから昶達六人ともまだ初心者以上中級者未満。それに対してある程度経験を重ねた野盗相手には分が悪かった。
昶はスコープ付きの小銃をもっている為に護衛対象の荷馬車の陰から狙撃を続けていたのだがついに昶からあと10mほどの所まで野盗が迫ってきた。
「こりゃ本気で危ないかな・・・・・・ん?」
その時、空から一条の光が垂直に昶たちと野盗の集団の中間に差し込んできた。
そしてその光は太い光芒となって直系3m程の光の柱とでも言えるような太さになった。
その光の柱には色々な文字の術式らしい文章がたくさん浮かび上がっているのが昶に見えた。
「昶さん、聞こえますか?」
何処からか女神シリカの声が聞こえた。
「聞こえるけど今は取り込み中よ、何か目の前に出てくるみたい!」
「はい、その光は私が昶さんのパートナーとなる方をそちらに送るゲートの出口の光です、本人も快く了承してくれていますので仲良くしてあげてください。転生者カテゴリーⅡですから実力は保証しますよ」
「ゲートって・・・今来るの?てか転生者カテゴリーⅡって何」
「今そちらに向かってもらいました、転生者カテゴリーⅡというのは元から持っている能力が特に高い方たちの事です・・・ゲートを開きますね」
その光芒は一層太く、大きくなった。
光の柱が消えるとそこに佇んでいるのは銀色ロング髪の少女。年齢は17か18才くらいだろうか。
陽の光を反射してキラキラと煌く見事な銀色の髪に、意志の強そうな眼は神秘的な金色の瞳。クールビューティー系ではあるが冷徹な感じは全くなく可愛い。
素材の良さが活きる控えめなメイク。大きくは無いものの形の良さそうな胸に綺麗にくびれたウエスト、すらりと伸びた脚。
服装はいわゆるヘソ出しの丈の短い半袖Yシャツに真っ赤なリボンタイ、その上に着ているのは階級章らしい刺繍や箒に乗った魔女と稲妻のマークの軍隊の部隊章らしきワッペンやその他の記章、Yシャツ同様に丈の短い半袖の濃いブルーの上着には金のパイピングが入っている。
その背中には魔方陣の紋様とそれを囲むように術式の文字が刺繍されている。
銀で出来ているらしいチョーカーに白い手袋、上着と同じ濃いブルーのショートパンツと長めのブーツにグレーのニーハイ。身体や脚のラインがかなりはっきりとわかる衣装である。
右手に持っているのはステンレスのような銀色をした1メートル位の長さの金属製の棒状の武器。
右の太腿にはダガーが付いていて腰には拳銃のホルスターが装着されている。
銀髪の少女が昶を見ると「やってもいいか?」と訊くようにちょいちょいと野盗の集団を指さした。
昶は無言で頷いた。そして昶はこの銀髪の少女を誰よりもよく知っていた。
銀髪の少女は野盗達に対してその年齢に不釣り合いな落ち着いた口調で言う。
「貴方達の腕では私には勝てません・・・・悪いことは言いませんから大人しく退散して貰えませんか?」
「舐めるな!この人数に勝てるつもりでいるのか!」
「さっさとその馬車の中にでも引っ込んでな、これが片付いたら俺達で可愛がってやるからよぉ!」
野盗達の間からからかうような笑いが起きる。
銀髪の少女ははぁと小さくため息を付くと不愉快そうな表情で呟いた。
「単なる下品なおバカさんの集団でしたか・・・ビット」
少女が呟くと同時にその周囲に淡い青に輝く魔法陣が幾つも出現した。
そのまま少女は野盗達の集団の方向に右腕を向け、手の平を上にして右手をすっと前に伸ばす。すると一瞬で10個程の魔法陣が発生し魔力の粒子の塊、つまり魔弾がそれぞれ一斉に発射され飛んでいく。
「当たれ!」
野盗の上を光弾が一旦通り過ぎたタイミングで少女は右手をくいっと自分の方に曲げる。 それに呼応して全ての光弾が鋭角的に軌道を変えると魔力の粒子は野盗達へと正確に誘導されて斬り刻むように降り注ぎ、今まさに襲いかかろうとしていた野盗は10人程が眉間を魔弾に貫通されて次々に倒れた。
「・・・・まだ続けますか?」
少女は野盗達を睨むとそれまで抑えていた殺気を開放した。
その凄まじい殺気に野盗達がたじろぐ。ついさっきまで舐めきっていた少女に一瞬で仲間10人が倒されたのだから当然である。
「返事が無いようですからこちらから行きますね」
少女は右手に棒状の金属製の武器を構えると野盗の集団に向けて飛び込んだ。
「ソード」
ぽそりと少女が呟くと一瞬で棒の長さの8割ほどが魔力の粒子で剣に形を変えた。それを使い次々に野盗を切り倒してゆく。
あっという間に野盗は首領を含めた10人を残すだけになった。
「・・・・・まだ降伏する気はありませんか?」
魔法の粒子を剣を一旦下げて少女は首領に向き直ると冷めた口調で言った。
「舐めやがって!!」
首領が少女の身体を掴もうとするが少女はひょいと身体を捻ってかわした。
首領はそのまま連続して手を伸ばして少女を捕まえようとするが少女は上半身の動きと素早いステップバックで全てをあっさり避けた。
「隙だらけです」
呟くと少女は再度掴みかかろうとした首領の腕と襟首を掴み柔道の要領で投げ飛ばした。首領は慌てて受け身を取ると下手に格闘するのは危険と判断したのかモーニングスターを構えた。
「呆れましたね、いい歳して女の子相手に格好悪いですよ・・・お・じ・さ・ん」
手の平を上に向けて指を再びちょいちょいと動かしてからかうように少女は挑発した。
「こいつ!!」
再び首領がモーニングスターを構えて襲い掛かってくる。少女はそれを片足を軸にして身体を半回転させ脚を引っ掛けてバランスを崩させ、再び魔力の剣を抜くとモーニングスターの柄を切断し斬り跳ばした。
「なっ?」
首領が怯んで一旦下がるり体勢を立て直して突っ込んでくる。
そして銀髪の少女の頭めがけ、斬られて柄が短くなったモーニングスターを振り下ろす。
その時、首領の目には少女がゆらりと動いてモーニングスターをあっさり回避しつつ殺気をはらんだ眼で睨んだ瞬間、消えたように見えた。
首領が気付いた時には既に少女は目の前の至近距離に接近していてそこから鳩尾にキックを叩き込み、更にそのまま手加減無しのハイキックが綺麗に頭部に決まって首領は派手に蹴り飛ばされた。
「その程度の腕っ節で私に喧嘩を売るとは甘く見られたものですね」
息も切らさずに少女は冷ややかな口調で地面に伸びている首領に言った。
首領が少女にあっさり倒されて気絶してしまったのを見て野盗達は蜘蛛の子を散らすようにあっという間に逃げ去ってしまった。
昶は少女が使った魔法の武器を知っていた。
「アサルトロッド・・・・・・」
そして昶はこの少女の事を誰よりも知っていた。
少女は銀色の髪をふわりと揺らして剣の魔力を消して棒になった武器を腰に付けて昶の方に振り向くと歩み寄ってきた。
「アサルトロッドを知っているという事は貴女が若桜昶さんですね?」
「・・・え・・・亜耶・・・?」
「はい!初めてお目にかかります、マスター・・・ひゃあああああああ???」
「・・・確かにこの乳の感触は本物だわ・・・・自分で創造しておいて言うのも何だけどここまで思った通りとは」
「うわひゃああああああああああああ」
「おー・・・可愛い上にこんなにスタイルが良いとは至福」
亜耶の胸を思いっきりさわったのに続いて昶は抱きついたままその綺麗にくびれたウエストや太腿や形の良いヒップを撫で回す。
「ななななんで私が本物か確認するのにわざわざセクハラするんですかああああ」
先程の戦闘でのクールな雰囲気とは裏腹に思わず両手で自分の胸を守りながら泣きそうな顔で抗議する。
「あ・・・・ごめん嬉しくて、つい♡」
「♡付けてごまかさないでくださいっっっ」
「あのー・・・・・お取り込み中すみませんがよろしいですかな」
昶達が護衛していた荷馬車の主、この国「ラティス帝国」の首都ラティスポリスで交易商人をしているジゼルが申し訳ななさそうに声をかけた。
「彼女は昶さんのお知り合いですか?取り敢えず荷馬車や使用人達を守ってくれたお礼をしたいのですが」
昶は亜耶と顔を見合わせた。
「それはパルマポートに到着してからでいいですよ、まだ向こうに着くまでに何かあるかもしれないですし」
「私も同意見です・・・・それと」
「何でしょう」
「私も皆さんと同行したいのですがいいでしょうか」
「貴女のような強い方が来てくれるなら喜んで・・・・・あ!」
昶には声を挙げたジゼルの視線の先には目を覚ました野盗の首領が起き上がって傍らに落ちていた倒された仲間の剣を拾い上げると無防備に背中を向ける亜耶に対してそれを構えて襲い掛かってくるのが見えた。
「・・・やれやれ、本気でおバカさんでしたか」
亜耶が小さくため息をつきながらアサルトロッドを再び右手に持った。
「ピアシング」
亜耶が小さな声で呟くとそれと同時に2.5m程に伸びたアサルトロッドの先端が青く輝く。
「ぶっ殺してやる!」
亜耶は右手に持ったアサルトロッドをくるりとスピンさせると首領に背中を向けたまま、振り向きもせずにアサルトロッドを真後ろに突き出した。その先端が首領の体に触れた瞬間。
ドンッ!っという大きな音とともに首領の胴体に黒く焦げた大穴が空いた。首領は剣を振り降ろそうとしたまま後ろにゆっくりと倒れた。
「・・・・・大嫌いです、こういう手合は」
亜耶は不愉快そうな顔を隠しもしなかった。
「で、この可愛い娘が昶の知り合いなのか?見たところ普通の魔術師や魔法戦士とは使う技が違うように見えたけど・・・ところでアヤってのが名前?」
「涼月亜耶といいます、私は魔術師というよりも軍用魔法の使い手ですから魔法兵です・・・女神様が言うには転生者カテゴリーⅡという分類になるそうです」
「道理で強いと思った・・・カテゴリーⅡじゃそりゃ強いわあ」
昶と一緒に荷馬車の護衛に付いていた冒険者、戦士のライルと魔法使いのアスティが亜耶を見ながら訊いた。
冒険者には転生組は結構いて多いとは言えないものの特に珍しい存在ではない。
「うーん・・・この娘の言う通りあたしが元の世界にいた頃は趣味で物語を書いていてね」
昶はそれがコミケ用に描いていた18禁同人誌であった事は敢えて伏せておく。
ふと亜耶を見ると微妙に赤面している。
どうやら18禁同人誌でのあんな事やそんな事の記憶があるらしい。
「この娘はその主人公キャラだったのよ」
「そうなの?」
「はい」
アスティの問いに亜耶が頷く。
「・・・私は気付いたら女神様に呼ばれていて「貴女を創造した作者がこちらの手違いで亡くなってしまって貴女の世界での物語は進行しなくなってしまった、だからもしその気があるなら停止したままの物語の世界を出て自由に動いて貴女を創造した人を助けてあげる気はないか」と頼まれて私は了承しました」
「なるほど・・・それで転生者カテゴリーⅡなのか、だから能力が飛び抜けてるんだな」
「今のあたしがlv18だけど多分さっきの亜耶さんの動きだったら下手すりゃカンストに近い数値が出るかもね」
「え?そんなに?カンストって言ったらlv50よ?」
「カテゴリーⅡでも人によるけど普通は大体は高くてもlv35くらいなんだけどねー」
「ところで目的地のパルマポートの街に着いたらみんなどうするの?」
「私は昶さん・・・いえ、マスターと共に行動します」
「マスターってその言い方は・・・どこかのサーヴァントかあんたは」
「ま、カテゴリーⅡの人達は自分を創造した人をマスターって呼ぶ人が多いそうだしいいんじゃないか?」
この世界には通常の転生者に比べたらかなり少ないもののそこそこの人数のカテゴリーⅡもいるらしい。ただ全員が亜耶のような戦闘能力を持っているわけではなく、あるものは学者であったり商人であったり色々で亜耶のような飛び抜けた戦闘能力を持っている例は少ないらしい。
結局パルマポートに着いてからはそこの冒険者ギルドで仕事を探そうと言う話になった。
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