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#24 ディメンション・カウンター

 #24 ディメンション・カウンター


 昶Side


 翌朝、あたしと亜耶は冒険者ギルドにダブルキャブピックアップトラックで冒険者ギルドに立ち寄りってリデアさんを後席に乗せると魔法省へと向かった。


 平日の朝に家を出たために道路は車やバス、乗合馬車や市内列車(魔力で動く小型機関車に1両ないし2両の客車が牽引されている、まあ路面電車に近い)で混雑していた。


 この世界は色々な時代や更に異世界からの転生者からもたらされた技術や情報によって作られたインフラは多い。

 そのせいもあって技術背景や風景には色々な時代の物が入り混ざっている。


 例えば自動車はデザインを見るとあたしがいた2010年代ではなく1940~50年代の感じだし軍艦は第2次世界大戦の雰囲気だ。

 鉄道はというと蒸気機関車が未だに主力だが最近になって魔導機兵のエンジン技術を流用した新しい動力による機関車が走り始めているそうだ。


 政治体制は中世から日本で言う大正時代といったところか。

 もしこれがラノベだったら設定がむちゃくちゃだと言われるかもしれない。


 「どうかしましたか、昶」

 「ん?ちょっと考え事」

 「もうすぐ魔法省に到着しますよ」

 

 魔法省はあのクーデター騒ぎの時に崩壊(まあ私達が崩壊の原因でもあるのだが)したフロアやらいろいろなダメージから未だに原状復帰ができずに近くの解体前で空きビルになっているボロい物件を一棟借り切って業務を再開していた。


 「うわあ・・・・古色蒼然と言うか旧態依然と言うか」

 「むしろ崩壊寸前と言うべきのような・・・・」

 「バカな事言ってないで入るわよ」


 リデアさんの後をついて入ると大理石の床と壁で作られた受付ロビーで魔法省調査部の調査部長であるシャフリラさんの所在を確認するとエレベーターへと向かった。

 

 「またレトロなエレベーターねえ、昔銀座のデパートで見たやつみたい」

 「銀座?」

 「転生する前に昶がいた世界の街ですよリデアさん」

 「同じ日本と言う世界からの転生者から聞いたことあるわ、綺麗な街らしいわね」

 「いい所ですよ」


 目的のフロアに到着するとその奥にある調査部の部屋へ向かった。


 リデアが数回扉をノックすると中からシャフリラさん、いや魔法省調査部シャフリラ・シャフリル大佐の「どうぞ」という声が聞こえ、私たちは中に入った。


 調査部の仮設オフィスもまたなんというかレトロな内装だった。部屋の雰囲気はビルの中というよりもむしろ中世のお城みたいな雰囲気だ。


 「昨日は大変だったみたいね、ウチにも大体の情報は入ってきてるけど驚きね」

 「私もまさか冒険者ギルドが襲撃されるとは思って無かったわよ・・・命を顧みない連中だったわ」

 「ふうむ、ひとつ気になる事があるんだけどいいかしら?」

 「はい何でしょうか大佐」

 「気になる事・・・ですか」


 シャフリラ大佐は私たちに向き直った。


 「大暴れしてテロリスト連中を全滅させたのは高校制服に猫耳を付けた少女だという変な報告があるんだけど心当たりない?」

 「ひっ・・・」


 みるみるうちに亜耶が耳まで赤面して下を俯いた。

 あっ可愛い。


 「それ・・・・・・・・・・・私です」


 亜耶が俯いたまま小さく右手を上げるとぽつりと呟くように言った。


 「・・・・・・どういう状況かはともかく聞かなかった事にした方が良さそうね涼月少佐」

 「・・・はい・・・・・うう、消えたい」


 両手で顔を覆いながら亜耶が落ち込む。


 「で、そのテロリスト連中について何か手がかりが無いかと思いまして今日は伺ったのですが」

 「心当たりならあるわよ少佐・・・その連中は「世界は純血種の為に」と言ってなかったかしら?」

 「!」

 「確かにそう言ってました、私を尾行して襲った人達も、そして冒険者ギルドを襲撃した人達も・・・・・あれは何なんです?単なる差別主義者とも思えませんが」

 「厄介な連中に目を付けられたみたいね」


 その時、調査部のオフィスのドアが開き、帝国軍の上級士官の制服に身を包んだ女性が入ってきた。

 その外見は20代後半から30代前半で茶髪、大人というか大企業の真面目なキャリアウーマンという印象だ。


挿絵(By みてみん)


 「ノックしても返事が無いから勝手に入らせてもらったわよ大佐」

 「失礼しました准将」

 

 准将と聞いてあたしと亜耶は立って敬礼をする。今の私たちは一応帝国軍の近衛騎士としての少佐の肩書がまだあるから敬礼の義務がある。


 「貴女達は?」

 「帝国軍近衛騎士、若桜昶少佐です」

 「同じく涼月亜耶少佐です」


 ああ、と准将は頷くとあたし達に向き直った。


 「帝国軍魔法技術試験隊のコルディア・コーネウス准将よ、クーデター騒ぎの一件での活躍は聞いているわ、よろしくね二人共」

 「「はいっ!」」

 「ところで差し支え無ければ何の話をしていたのか教えて貰えないかしら、レベル50の魔法兵がどうして魔法省調査部に来ているのか興味があるの」

 「話してもよろしいでしょうか?」

 「許可します少佐」


 亜耶は昨日尾行されて襲われた事を、あたしは昨日の冒険者ギルドでの一件をシャフリラと共にコーネウス准将に話した。


 「なるほどね、その連中の話は帝国軍でも問題視されているわ」

 「何か情報はありませんか准将」


 シャフリラが聞くとコーネウス准将はしばらく考えていたが私たちに向き直ると話し始めた。


 「現状で判明しているのは彼らは「ディメンション・カウンター」を名乗る極端な純血種主義者、わかりやすく言えば「この世界で産まれた人間」のみの至上主義を掲げているテロ集団なのよ、だから当然エルフ・ダークエルフ・ドワーフもそれには含まれない・・・そしてそのスローガンは「世界は純血種の為に」よ」

 「「!!」」

 「だから貴方達二人のような転生者だったり高い戦闘能力を持つカテゴリーⅡは排除対象、もしくは捕らえてマインドコントロールしてテロの手駒に利用する対象、というのが現状ではっきりしているわ・・・・特に涼月少佐」

 「はい」

 「貴女みたいに突出した能力のあるカテゴリーⅡは警戒した方がいいわよ、手段を選ばない危険な連中なの」

 「帝国軍は連中相手にどう対応するつもりなんです?」


 あたしの質問にコーネウス准将は表情を曇らせた。

 

 「正直な事を言うと現状での動きは鈍いわね、帝国軍にも純血種至上主義者が紛れ込んでいるのよ・・・帝国軍ならば転生者の多い海兵隊や傭兵部隊の方が柔軟な対応をするかもしれないわね」

 「そうですか・・・あたしも准将に質問があるのですがいいでしょうか?」

 「あら、何かしら?」

 「先程准将は魔法技術試験隊所属と仰っておりましたがどのような事をされておられるのですか?」

 「私が今やっているのは大規模な魔法の制御技術、複数の魔術師や魔法兵を直接制御して戦闘に反映できるようにする研究よ」

 「なるほど、集団戦闘や魔導機兵での編隊空戦で応用できそうですね」

 「まだテスト段階で部隊配備できる状況でも無ければ公表できる段階でもないから他言無用に願うわよ少佐」

 「「了解しました!」」

 「それと涼月少佐」

 「はい」

 「そのうち少佐に攻撃魔法の制御の研究で協力をお願いするかもしれないからその時は宜しくね」

 「了解しました」


 その後もコーネウス准将も交えて色々と今回の一件について話したが結局特に大きな成果もなく私達は魔法省調査部を後にした。



 冒険者ギルドの前でリデアさんを降ろすとあたしと亜耶の乗ったピックアップトラックは今住んでいる冒険者向けの5階建てのアパルトメントの駐車場に入った。

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よろしくお願い致しますヽ(´▽`)/!

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