#23 冒険者ギルド襲撃 その2
#23 冒険者ギルド襲撃 その2
昶Side
「おい、あっちにいる奴から先に片付けるぞ!!・・・まずあのうるさい女からだ!」
「・・・・・・やれやれ、貧乏クジは嫌なんだけど!」
あたしは残っていた最後のパンの一切れをこれまた残っていたビーフシチューに漬けて口に運んだ。
「呆れた、この状況で完食する気?」
「あたしは食べ物は大切にする主義なので・・・援護お願い!」
「はいはい」
呆れつつもリデアがクロスボウを構えるのを確認するとあたしは倒したテーブルの影から飛び出した。
「おい!あいつだ!!見つけたぞ若桜昶!!」
「・・・・へ?あたし?」
「射撃を集中させろ!!仕留めるんだ!!」
「ちょっと!!!なんであたし??」
「「世界は純血種の為に!!」撃て撃てえっ!!」
「ああもうウザい!!何なのよあんた達!!」
あたしはカウンターへと走りながら銃を撃ち牽制する。走りながら銃を撃った所で命中は期待できない。だから連中の足元に連続して撃ち込む。
「くっ、クソッ!!」
「馬ぁ鹿!!そう簡単に射殺されてたまるかっての!」
あたしはなんとか厨房のカウンターの内側に飛び込んだ。
「畜生、グレネードで吹っ飛ばせ!!」
「撃たせないわよ!」
「・・・・なっ!」
リデアが撃ったクロスボウの矢があたしに向けられていたグレネードランチャーの銃口にスポッと入った。
「うわあああっ!」
銃口を矢で塞がれた男のグレネードランチャーが暴発してその周囲の敵が数人吹き飛んだ。
男達が怯んだ隙にリデアも同じようにカウンターに飛び込んできた。
そしてあたしに一言。
「昶・・・・・・貴女一体何をやらかしたの?あれだけ狙われるって尋常じゃないわよ?」
「どーいう目であたしを見てるんですか」
「だって昶、貴女昨日は絡んできたオッサン冒険者を半殺しにしてその前は路地裏で襲ってきた盗賊を再起不能にしてこの前にも不良軍人をボコボコにしたでしょ」
それを聞いた生徒たちが思わずジト目であたしを見つつ後ずさりする。
「・・・泣かすぞあんたら・・・それに向こうからケンカ売ってきた以上正当防衛だから」
「冗談はともかくとして、最近転生者の行方不明者が頻発しているらしいって話を聞くけどそれ絡みかしらね」
「そんなことが?」
あたしは銃を撃ちながらリデアに聞いた。
「まだ噂よ、たまたま行方不明者が転生者だけだったのかもしれないしね」
「ふうん・・・」
「何をしている!あっちは数が少ないんだ、早く片付けろ!」
「喰らえーっ!」
敵の一人が手榴弾を取り出した。
「使わせるか!」
あたしはその敵に発砲した。その弾丸は敵にヘッドショットで命中し既にピンが抜かれた手榴弾がその手から落ちる。
「うわ、うわあああっ!!」
「ばっ、馬鹿野郎!!」
「ひいいいっ!」
逃げようと泡食った男達の目前で手榴弾が炸裂し数人が巻き込まれて吹っ飛ぶ。
「すげえ・・・・・俺も練習すればできるのかな」
生徒の一人が思わず呟く。
「そのためにはしっかり基礎練習をしなきゃだめよ」
「はっ、はいっ」
「それにしてもグレネードランチャー装着の自動小銃に手榴弾とはまるで戦争ね・・・この人数差はちょっとまずいかしらね」
リデアが呟く。この状況でまともに戦力となるのはあたしとリデアくらいしかここにはいない。
ここが冒険者ギルドとは言っても例えば受付業務のカウンターで仕事をしているのは基本的にデスクワーク専門の人達だし熟練した冒険者は運悪く今日は来ていない。
今あたしとリデア以外でここに居るのはあたしの講習を受けに来た初心者冒険者達とカウンターの人達に事務員さん、あとは喫茶スペースのコック長の田村さんと顔見知りのウェイトレス一人だけだ。
このままじゃ確実に数で押される。
ギルドの外、それも入り口のすぐ近くに車の止まる音がした。
「増援が来たぞ!!」
「よし、これで片付けられるぞ!魔法兵はビットでもファイヤーダーツでもなんでもいい、どんどん撃ち込んで数で押すんだ!これ以上反撃させるな!」
「フォースフィールド!」
リデアが防御魔法を展開し、魔弾が弾かれる。
「先生、俺達が援護しますから裏から!」
「馬鹿、逆でしょあたしが牽制するから貴方達は逃げなさい」
「貴方達、早く!」
更にリデアが連続してクロスボウを発射して撹乱する。それに連携してあたしは彼らがこっちに近づかないように銃をフルオートに切り替えて弾をばらまく。
弾倉が空になり新しいものに入れ替える。
これが最後の弾丸だ。リデアも同じくもうほとんど矢が残っていない。
「ここまでか・・・!」
あたしは悔しさに歯噛みした。亜耶をこの世界で一人ぼっちにしたくはないんだけどなあ・・・・。
入り口が開いて銃を構えた男が入ってくる。いよいよ万事休すか。
「やっと増援が来たか、おい外には何人来たんだ?」
増援の男が銃を持って入って来るがどういうわけが足元がおぼつかない。
「そ、外のは・・・・・・」
「どうした、はっきり言わんか!」
銃を持った男は血をがぼっと吐くとゆっくり倒れた。
「おっ、おいどうした、何があった!・・・・・ぐあ・・・」
今度は声をかけた男が振り向くのと同時に背後から剣に身体を貫かれて倒れた。その倒れた敵の後ろにたたずむのは魔力で生成された剣を構えた銀髪に金色の瞳の少女。
「外の貴方達のお仲間は既に私が片付けました・・・・・・・昶、無事ですか?」
「亜耶!なんとか無事よ」
「わかりました・・・・さて」
まだ18才位に見える外見にそぐわぬ落ち着いた、そして聴き慣れた声。
「貴方達は私の事も探していたのではありませんか?」
亜耶は剣を一振りして構え直す。
「最も私を尾行して襲った人達はとっくに全滅していますが」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・なんですか人の事をジロジロと見て」
「・・・・・・何故高校制服に猫耳カチューシャ?」
「う・・・・・・大きなお世話です!」
「うん・・・あたしもその猫耳カチューシャは取ってから来てもいいんじゃかなーって思う」
「昶まで?!?!」
「・・・・・妙な格好だが都合がいい、ここで捕えさせてもらうぞ涼月亜耶!!「世界は純血種の為に」!!」
「それ、聞き飽きました」
「この異世界人があっ!!」
「黙りなさいテロリスト!!動きが遅い!!」
亜耶は男の身体をソードモードにしたアサルトロッドで薙ぎ払い両断すると次の敵に襲いかかる。あれ、アサルトロッドを持ってるって事は一旦ウチに寄って来たのか。
・・・・・しかし今の亜耶は相当機嫌が悪いな。
「気をつけろ!その猫耳制服コスプレ女はレベル50のカテゴリーⅡだ!魔法兵!何をしている!」
「誰が猫耳制服コスプレ女ですか」
一瞬で敵はパニックに陥った。敵の魔法兵が次々に放った魔弾が亜耶に殺到する。
亜耶はその全てをソードモードのアサルトロッドで弾き落とす。フォースフィールドすら使っていない。
「ば、化物・・・・・」
「・・・・・・失礼な」
綺麗な形をした亜耶の眉がぴくりと動いた。あ、ムッとしてる。その時、亜耶の背後にいる数人の敵がダガーを構えて投射しようとした。
「させないよ!」
「がっ!」
あたしはダガーを構えた敵に向けて連続して撃つ。敵は頭に弾丸を喰らって3人ほどが倒れる。
亜耶はあたしの方を向いて目配せすると敵の真ん中に飛び込んだ。
「はあっ!!」
「うわあああっ!!」
「クソっ、異世界人風情が!」
「隙だらけだと言ったでしょう!!」
「ぎゃああああっ!!」
あっという間に亜耶は全ての敵を斬り倒して制圧してしまった。魔法すら使っていない。
「大丈夫ですか昶、リデアさん」
「あたし達は大丈夫・・・って制服のままでどうしたのよ、しかもボロボロじゃない!」
「ちょっとゴタゴタがありまして・・・」
亜耶はツインテールをほどいて猫耳カチューシャを取ると普段通りのロングヘアに戻した。
うん、ツインテールもいいけどロングの方がこの娘には似合うな。
「すげえ・・・・・あれがレベル50のカテゴリーⅡの実力かよ」
「格好いい・・・」
「貴方達も怪我はありませんか?」
亜耶が生徒たちに近づくと男子は亜耶の整った顔立ちを見て赤面し、女子は憧れの眼差しで亜耶に話しかけていた。
「それにしても結構な被害が出たみたいですね」
「ええ、犠牲者も出たわ、この後の対応が大変になるわね・・・それに他の地区の冒険者ギルドにも注意喚起しなきゃならないし、まあそのあたりは部下に任せて私は明日の朝イチで魔法省へ報告に行かなきゃね」
「あの、私もご一緒したいのですがよろしいですか?」
「それは構わないけど、今のギルドの一件は私が全部見ているから無駄足かもしれないわよ?」
「いえ、ここに来る前に、私一人の時にやはり襲われたので」
「それってさっき亜耶が言ってた「尾行して襲った人達」?」
「はい」
「もしかして亜耶を襲う時に変なセリフ言ってなかった?」
「ええ、「世界は純血種の為に」と言ってました」
あたしはリデアと顔を見合わせた。
「・・・・昶もですか」
「これは偶然じゃないわね」
あたしと亜耶は無言で頷いた。
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