#22 冒険者ギルド襲撃 その1
#22 冒険者ギルド襲撃
昶Side
「みんな、いい?もう一度説明する!・・・・・リボルバーの長所は構造の単純さゆえの動作の確実性、逆に短所はオートマチック程の装弾数は望めない事!では逆にオートマチックの長所と短所は何か?はい、そこの君!」
初心者冒険者の元気が余っていそうな少年がはきはきと答える。
「はいっ、長所は装弾数の多さで短所はリボルバーに比べて信頼性が低いのとその構造によるメンテナンスの大変さです!」
「うん、その通りよくできました!」
講習室に集まっているこれから冒険者になろうという男女、そして様々な種族の人達があたしに視線を集中させていた。
「今日はここまで!明日はライフルと自動小銃についての説明、講習をするからね・・・・・今週中にどのタイプの銃をメインウェポンにするか考えておくように!」
「わかりました教官!」
「よろしい、今日はここまで!また明日ね」
「はいっ!」
元気のいい初心者冒険者達の声が響いた。
「盛況みたいね、昶さん」
講習が終わりこのラティス冒険者ギルドを統括するギルド長のリデアとあたしは2階の喫茶スペースでビーフシチューセットの夕食を摂りながら雑談に興じていた。
実はここのビーフシチューセットが絶品なのだ。
リデアの話だとここの田村さんというコック長もあたしと同じ転生者で元日本人らしい。
なんでも転生前の日本ではJRの寝台特急の食堂車でコック長をしていてビーフシチューは得意料理だったのだそうだ。
そのおかげでこの喫茶スペースで一番の人気メニューとなっている。
ここの田村コック長のように転生者は多く、特に珍しい存在ではなくそのために日本のようにここから見た異世界の文化は多い。
・・・とは言え亜耶のように物語の世界から来た者や伝説、神話から来た転生者カテゴリーⅡとなると流石に珍しいらしい。
そしてカテゴリーⅡはその強大な力、魔力を持つためにそれを危険視する人達も多いという。実際、亜耶の場合この世界に来た時にレベル50でカンストしていたが今の彼女はそれ以上になっている筈だし他のカテゴリーⅡの者たちも同等の実力を持つ者は珍しくないそうだ。
そしてカテゴリーⅡを含む転生者はその戦闘能力の高さからあたしや亜耶みたいに軍人や冒険者になる者が多い。
とにかく日本でも料理ならイタリアンやフレンチ、中華料理。娯楽ならハリウッド映画や洋楽が根付いているのと同じようにこの異世界でも日本から入ってきた文化やあたし達の知らない更に他の異世界からの転生者によってもたらされた文化は多い。
それもあって生前のあたしが触れていた地球世界の料理や娯楽にはあまり不自由する事は無い。
「最初は初心者冒険者の講習にどれだけ集まるか不安だったけど上手くいきそうね。生徒たちの反応はどう?」
「うん、思ったよりみんな素直に話聞いてくれて助かってます」
「流石にメイド服姿で女王陛下を救出する瞬間を全国に中継されただけの事はあるわね」
「うう・・・それは・・・」
あの時を思い出すのが恥ずかしい。
「大丈夫よ、昶も亜耶ちゃんも可愛かったから」
「うう~・・・」
思わず頭を抱えたくなった。やはりあれは正直恥ずかしいし黒歴史だ。あたしは亜耶みたいに美人じゃないしなあ・・・・・・亜耶はあたしが理想の美少女として描いたから当然といえば当然なんだけど。
元々亜耶はあたしが趣味で描いていた同人誌のヒロインだった。
そしてその主役キャラだった故に結構気が強い。
彼女は普段は物静かでどちらかと言うと無口な方だが本気で怒ると彼女は怖い。
なんていうか多分誰にも手がつけられなくなるだろう。
幸いこの世界に来てから亜耶が本気で怒ったのは見た事はないし、そこまで彼女が怒るのは余程の事だし、実際にはまずあり得ないと思うが。
「はああああ・・・・・・至福」
あたしはパンをビーフシチューに付けると口に運んだ。やはりめっちゃ美味しい。まだ大きめの牛肉が一切れ残っているがこれは最後の楽しみにしておくんだ。
喫茶スペースの隣のギルドの各受付スペースや仕事の依頼が貼ってある掲示板はいろいろな種族やクラスの冒険者たちで賑わっていた。
それを横目に見ながらあたしとリデアさんは食事を続けていた。
「・・・リデア、どうしたの?」
リデアさんの尖ったエルフ耳がピクリと動いた。
「何かしら、結構な人数が近づいてる」
突然ガシャーンという大きな音と大人数が駆け込んでくる音がした。
「ちょっと何事?!」
「おい、目標はどこだ!?」
「見つからん!・・・・・だが資料で見た排除対象は他にもいるぞ!」
あたしはパンとシチュー皿を持ってテーブルを倒すとその影に身を隠した。
横を向くとリデアも同じようにテーブルを倒すといつも持ち歩いている小型のボウガンを撃つ用意をしていた。
人数にして20人はいるだろうか。
その内訳は剣と銃を持った者、自動小銃と短機関銃を持った者、魔法兵で構成されているようだ。
「おい、なんだお前たちは!」
「そいつも排除対象だ!!『世界は純血種の為に』!!みんな撃てぇっ!」
「なっ?!・・・・・・ぎゃああああっ!!」
その武装集団は集中攻撃で「排除対象」と言われた冒険者の男性をあっという間にハチの巣にした。
「おい、マジかよこんな所で!」
「この野郎!」
「フォースフィールドを!」
ギルド内は一瞬にしてパニックに陥った。
見渡すと今日はベテランの冒険者が少ない。
まだ10代の初心者からせいぜい中級者に手がギリギリ届くか、という程度の経験の浅い者が多いように見受けられた。
「一箇所にまとまるな!みんな散開!魔術師は防御魔法を、戦士や傭兵、魔法兵は近接戦闘を!僧侶と精霊使いは負傷者の救助を!・・・・・リデア、さすがに見過ごせないから参戦するわよ」
「お願いするわ」
あたしの声に慌てて散開して戦闘に対応しようと動く冒険者達。この対応の遅さ、みんなまだ経験が少ないな。
あたしは残っていた牛肉の最後の一切れを口に運ぶと愛用のオートマチック拳銃を抜いてセーフティを外してスライドさせる。
「何をしている!銃を持っている者はさっさとセーフティを外して撃鉄を起こせ!!オートマチック拳銃はスライドさせて弾丸を装填!目の前のテーブルやカウンターを遮蔽物にして身を隠せ!死にたいのか!!」
「はっ、はい!!・・・みんな、早く!!」
あたしの怒鳴り声にさっき教えていた生徒たちや冒険者達が慌てて物陰に身を隠した。
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