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#20 これから

 #20 これから



 亜耶 Side


 「・・ん・・・・」


 目が覚めるとそこに見えていたのは病室の天井だった。

 顔に違和感を感じて手をやると吸入器が付けられていた。呼吸に異常はなさそうなのでそっと取り外す。

 

 「あ・・・・気が付いたああああ!!!!」

 「ちょっと昶・・・痛い痛い痛い!!」

 「・・・・あ・・・・ごめん・・・」


 どうやら身体の傷は治癒魔法でふさがっているようだがまだ身体のあちこちが痛む。ふと昶を見ると今にも泣きそうな顔で私を抱きしめていた手を緩めていた。


 「ところでここは・・・?」

 「パルマポート軍港にある帝国軍病院の個室・・・・それより!亜耶ったら大怪我して 「トール」の通路で倒れてたって聞いた時は心臓止まるかと思ったよ!意識不明の重体で一週間も目を覚まさないしもう・・・・!」


 昶はぽろぽろ涙を流しながら再び私を抱きしめる。


 「お、亜耶姐さんやっとお目覚めですか」


 カールス大尉が様子を見に来たのだろうか、ちょうど部屋に入ってきた。


 「・・・・・・何泣いてるんです昶姐さん」

 「な・・・ななな泣いてなんていないって!!」

 「とか何とか言ってますけどね亜耶姐さん」

 「?」

 「最初に亜耶姐さんが血溜まりの中に倒れて気絶してると聞いた時にはそりゃもう大変だったんですよ?大泣きしてなだめるのが一苦労でもう・・・」

 「ちょ・・・何言ってんのよ、いやだからその」

 「・・・・ぷっ・・・」


 えらく慌てている昶を見て思わず私は吹き出した。こんなに慌てて、いや恥ずかしがっている昶を初めて見た。


 「な、何笑ってるのよ、あああ当たり前でしょう???」

 「・・・心配してくれてありがとう、昶」


 この人が自分を創造してくれて心から良かったと思う。多分私は昶とずっとこの世界で生きていく事になるだろう。


 「そうだ、私が気を失った後どうなったのです?」

 「作戦は無事に終了したよ・・・・ただ「トール」は曳航してパルマポートのドックに入渠したんだけど戦艦としては廃艦になるんだって」

 「・・・「戦艦としては」ってどういう事です?」

 「ダメージが大きすぎて船体の基本フレームを流用して正規空母に大改装するんだって・・・「トール」級戦艦六隻分の予算はそれをベースにした正規空母三隻とその艦載機の予算や乗組員、パイロットの育成にあてるそうよ」

 「ドリスコフは?」

 「アルフォス女王が魔導機兵で艦橋ごと吹き飛ばして死亡、その煽りで艦の制御が上手く効かなくなってあの不時着になったってわけ・・・・・まあ作戦としてはほぼ成功。アルフォス女王陛下も元の立場に収まって現在は帝国軍の反乱分子の身柄の確保にてんてこ舞いってところよ」


 「なるほど・・・で、この後私達はどうするのです昶?」

 「あー・・・・・それなんだけど今の所、幾つかの選択肢があってさ」

 「選択肢?」

 「うん、まずひとつ目はこの「アトロポス」での傭兵としてのスカウト」

 「はい」

 「ふたつ目はアルフォス女王陛下からの話になるんだけど近衛騎士団へのスカウト、みっつ目はこれまで嘱託扱いだった魔法省調査部への正式な就職、そしてよっつ目はかなりの金額の報奨金を貰ってこれまで通りの冒険者稼業・・・・・女王陛下の本音としては周りが落ち着くまで近衛騎士団のメンバーとして近くにいて欲しいみたいよ・・・亜耶はどうしたい?」

 「私は・・・・・・よっつ目かな、色々な事を見られそうだし」

 「・・・・亜耶なら多分そう言うと思ったよ」

 「昶はどうなの?」

 「あたしも同じ、気楽な冒険者の方がいいかな」


 ・・・・・・・目をかけてくれている女王陛下には申し訳ないけどこれでいい、かな。


 

 そして「トール」での戦闘から一ヶ月が経過した。


 結局あれから私達二人は王城で叙勲を受けて正式に「騎士」の称号を女王陛下から授かった。

 とは言っても帝国騎士団に入団したわけではなく騎士の資格が認められた、言わば騎士の免許を取得したと言う事だ。


 宮仕えをする気は私も昶も無いとその旨を女王陛下に伝えてはいたのだが流石に褒美も何も無しでは帝国王室の面目が立たないと言うのもあってこのような事に落ち着いたのだ。

 そして今、私達は冒険者ギルドからとあるモンスターの討伐の依頼を受けてこれから旅立つ所である。


 「亜耶~、そっちは大丈夫?」

 「エンジン及びセンサー、武装等各部の動きに異常無し、すぐにでも出られますよ」


 濃いめのブルーと明るめのブルーの二色に塗装され、その右肩には女神のマーク、左肩には帝国の機体登録Noが描かれた真新しい魔導機兵のコクピット内に今私達2人はいる。


 私はついこの前の叙勲の時、金一封と一緒に褒美として複座の魔導機兵を1機貰い受けていた。帝国軍の最新型の制式採用機「フェンリル」だ。


 私達はこの前までこの機体を「アトロポス」に預けて自分達専用のカスタム改造をしていた。魔法攻撃の管制装置や魔力増幅機の追加等で亜耶の魔力の高さを活用できるようにしてある。


 今日は「アトロポス」に預けていたこの機体の改造と試運転が全て終了してその受領に「アトロポス」に来ている。

 この機体のパーソナルネームは「セレーネ」。銀の馬車に乗って夜空を馳せ行き、月光の矢を放つ月の女神だそうだ。私の名字から連想して昶が名付けた。


 そしてこれに伴って私達の冒険者カテゴリーが機動兵器管理者資格持ちへと変更になった。

 つまり昶の「戦士/射手/騎士/魔導機兵パイロット」、私の「カテゴリーⅡ魔法戦士/騎士/魔導機兵パイロット」の職種にその運用取り扱い資格が更に追加されたという事になる。


 ちなみにこの資格には魔導機兵以外にも空中船舶や魔導航空機、装甲車等の色々な種類があるのだがこの前の一件で私達2人には魔導機兵が相性が良い事が分かったので女王陛下に褒美として魔導機兵をおねだりしたのである。


 実際魔導機兵所有者向けの冒険者ギルドの仕事依頼は結構多く、危険度はそれなりに高い仕事も多いが魔導機兵が維持出来る程度にはギャラは良いらしい。


 内容は傭兵的なものや大規模な隊商の護衛、大型モンスターの討伐、武装組織に対する街や村単位の用心棒とかが多い。


 まあ私達2人なら多少危険でもなんとか上手くやっていけるだろう。

 とは言えこの前みたいに大型戦艦が相手とかは流石に勘弁だが。


 「じゃ、そろそろ行こうか」

 「はい、魔導炉圧力正常、すぐに発艦可能です」

 『「アトロポス」航空管制より「セレーネ」、発艦を許可する・・・なあ、本当にウチの部隊に就職する気はないのか?』


 艦橋にいる坂崎艦長から通信が入った。


 「すみません艦長、あたしは亜耶と色々な所に行って色々な物を見せたいんです」

 『そうか、決心は固いようだな・・・2人とも死ぬなよ』

 「ありがとうございます、艦長」


 スロットルレバーをミリタリーパワー一杯に押し込み更に左横に押してセクターに入れる。こうしないと離艦する時の凄まじい加速Gで腕が後ろに動かされてスロットルレバーが戻されてエンジン出力が絞られてしまうからだ。


 「セレーネ、発艦します」

 『総員、発艦するセレーネに敬礼、帽振れ!』


 艦橋周りのラッタルや飛行甲板の乗組員達が一斉に私達へ帽子を振るのがコクピット内のホログラフに映る。


 「ランドウイング展開よし・・・亜耶、行くよ」

 「はい」


 背中のメインエンジンの魔力粒子の甲高い噴射音がコクピット内に響く。

 飛行甲板のオフィサーに対してセレーネの頭を頷かせてその右腕で敬礼をさせる。離艦のサインだ。

 右手を高く掲げていた飛行甲板のオフィサーがその手を大きく円を描いて前方を指すと同時に腰を低く下げて右手の指2本が飛行甲板に触れた。

カタパルトに射出され弾かれたような猛加速をすると「セレーネ」は飛行甲板から飛び立った。


 私は依頼を受けた目的地へ向けてセレーネのスロットルレバーを押し込んだ。


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よろしくお願い致しますヽ(´▽`)/!

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