表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に創作キャラと転生しました。  作者: TOMO103
異世界に創作キャラと転生しました。第1エピソード
2/88

#1 灼熱の海 海戦

もう一つのプロローグ的なお話です。

後から読んでも大丈夫なように構成してありますので

ここはとばして#2へ進んでもストーリー上、大丈夫ですよ~

#1 灼熱の海



 昶が転生する20年前の異世界。

 雲ひとつ無く透き通るような青空。

 火山島があちこちに点在するために普段は乱気流がよく発生するこの空域も珍しく穏やかで凪いだ天候だった。


 ラティス帝国軍航空艦隊の空中軽巡洋艦「エンフォーサー」と空中駆逐艦「天雷」「雷風」の三隻で編成された空中艦隊はラティス帝国の南方海域に存在する灼熱の海とよばれる空域にあった。

 ラティス帝国は西方と東方の民族が混ざりあった国家であるために軍艦の名前はこのように西方と東方の名前が混在している。


 その無数にある火山島とその火口から噴出する火山ガスを主機関に吸い込んでエンストさせないようにするために出来るだけ風上を通るように高度1000mをゆっくりと、そして慎重に航行していた。


 この空域は絶え間なく噴火を繰り返す火山島の多さから灼熱の海と呼ばれていた。その地形特性故に暗礁も多く更に地殻変動も頻繁に起こる事から軍艦のような大型海上船舶の航行は不可能である。

 しかしそのかわりに今では海上船舶に取って代わって主役となった空中船舶や飛行船が火山島の合間を縫うように設定された「回廊」と呼ばれるいくつかの航路を使っていた。


 空中軍艦は軽く飛行特性に適したオリハルコンと軍艦故に必要とされる装甲の為に硬度の最も高い金属であるアダマンタイトの合金で構成され、航行させるための主機関は魔力を魔法炉で圧縮、噴射することでタービンを回し推進力とする魔導機関によって航行する。


 その反面製造・運用コストが非常に高く付くためにこのような空中船舶は軍艦に、ヘリウムで空中に浮かび航行するタイプの製造・運用コストの低い構造の飛行船は民間の貨物船や客船に使用されていた。


 「艦長、天気もいいしこのまま無事に入港できるといいですね」


 操舵手が艦長席に座っていた艦長に声をかけた。

 執行者という意味を持つ名前の軽巡「エンフォーサー」は帝国軍のヴェネラブル級軽巡洋艦の二番艦である。


 このヴェネラブル級軽巡洋艦「エンフォーサー」は艦隊決戦よりも護衛や輸送、哨戒といった様々な任務をこなせるように建造された汎用性の高い軽巡洋艦である。

 そのために今回極秘での輸送任務を命じられたエンフォーサーの船倉には帝国本土に輸送するように命令された帝国軍の重要機密を納めた木箱が鎮座していた。


 「・・・・・無事にこの任務を終わらせて帰還したいものだな」


 この小さな艦隊の司令も兼任している艦長は操舵手の言葉に頷きながらコーヒーを飲み干した。


 「使用航路の指示は暗号通信でしたし、その後は無線封鎖していますから重要機密を運んでいると言っても大丈夫ですよ・・・でも入港後の休暇が楽しみだなあ」

 「君はこの前子供が産まれたのだったな」

 「はい、顔を見るのは今度の寄港が最初になります。妻が港まで子供を連れてきてくれると手紙に書いていました」

 「ほう、そりゃ楽しみだな、私は家に戻ったら遊園地に連れて行けと娘にせっつかれたよ」

 「・・・そう言えば艦長の故郷が最近敵の攻撃にあったのを味方の部隊が退けたそうですね」

 「ああ、娘からの手紙に書いてあったが妻と娘を若い女性の魔法兵が救出してくれたそうだ、これで安心して家に帰れる」

 「お互い久々の家族団欒ができそうですね」


 しかし、和やかな会話は突如として敵襲を表す警報にかき消された。


 「後方、方位210より敵艦接近!・・・・数、重巡洋艦1、軽巡洋艦1、駆逐艦4!」


 伝声管から見張りの声が響いた。

 帝国軍では艦艇の方向を示すのに方向を360度に分けて相対方位を示す。前方正面は方位000、真後ろなら方位180、左真横なら方位270となる。この場合方位210だから真後ろより少し左斜め後方ということになる。


 「なんだと!何故今まで見つからなかった!」

 「敵は火山と噴煙を盾にして接近してきた模様!」

 「総員砲雷撃戦用意!最大戦速で振り切るぞ!」


 操舵手がぎょっとした顔をする。


 「こんな狭い回廊で最大戦速なんて無茶です艦長!」

 「速度を落とせば舵の効きが鈍る!無理は承知の上だ、やってくれ!」

 「わかりました、全力を尽くします!」


 操舵手が緊張した表情で応じる。

 主機関の音が高くなり艦の速度が上がり始めた。


 「三番、四番砲塔は先頭にいる敵重巡を狙え!」

 「三番、四番砲塔、発射用意完了!いつでも撃てます!」

 「よし、撃てぇっ!!初弾観測急斉射で行くぞ!」


 初弾観測急斉射とは初弾が弾着した座標を観測してからそのデータを元に照準を修正し射撃をする方法である。


 エンフォーサーの後部に装備された連装203mmの主砲四門が次々に射撃を開始した。三番、四番砲塔が轟然と火を吹く。発射の振動がビリビリと艦橋にも伝わった。


 「左舷前方、方位340に新たな噴煙!」

 「噴煙を回り込んで丁字戦闘に持ち込んだら全主砲で砲撃しつつ全艦魚雷をばらまいて最大戦速のまま離脱する!まともに相手できる数ではない!」


 その時、先頭の敵重巡の中心に火柱が上がった。


 「弾着!!初弾命中!敵重巡の艦橋に命中した模様!」


 観測手の声にわっと歓声が上がった。


 「よし、そのまま砲撃を続けろ!」


 「天雷」「雷風」の二隻の駆逐艦も主砲である12.7cm砲が射程内に入り次々と発砲を始めた。


 「本艦の第二射、更に敵重巡後部に命中!敵重巡の高度が低下していきます!」


 艦長が艦橋横のラッタルから双眼鏡で後方を見ると敵重巡が炎上し煙を吹き上げながら敵艦隊から脱落して降下するのが見えた。

 艦橋への直撃で主機関の制御系を損傷したのか右舷方向にある火山に向かって速度が下がらないまま真っ直ぐに、そして急速に降下していく。


 敵重巡は懸命に姿勢を立て直そうとして艦首を上に向ける。その時に側面からぱっと火が上がりそのまま大爆発を起こすと船体は二つに折れ曲がり制御を失った敵重巡は火山島の裾野のジャングルに激突し火の玉となった。


 この光景にエンフォーサーの士気は更に上がった。

 だが、その幸運は長くは続かなかった。


 「右舷前方、方位020の噴煙の影から敵戦艦1隻出現!他駆逐艦4隻を確認!待ち伏せです!!!」

 「馬鹿な!航路の命令はすべて暗号で受けているしずっと無線封鎖していたのだぞ!」


 副長が青ざめた顔で叫んだ。


 「全艦煙幕を張れ!敵に光学照準をさせるな!魔法炉の出力を臨界まで上げろ!シールド出力最大!」


 艦長は指揮下の駆逐艦に指示を出す。


 「敵戦艦の発砲を確認!」

 「回避運動!」


 副長が命令するが帰ってきたのは操舵手の悲痛な叫びだった。


 「無理です!回避運動出来るだけの幅がこの回廊にはありません!」

 「何だと!!・・・・・「天雷」!何をやっている!!」


 パニックに陥った味方駆逐艦「天雷」が敵戦艦の砲撃から逃れようと左からエンフォーサーの進路を塞ぐ形で変針したのだ。


 「機関逆進!!取舵いっぱい、急速降下!!」

 「駄目です間に合いません!!」

 「全員耐衝撃姿勢を取れ!衝突するぞ!!」


 次の瞬間、エンフォーサーは天雷の右舷中央に衝突した。

 エンフォーサーにとって不幸だったのは急速降下を開始していたために一番、二番の主砲が天雷の舷側への衝突で削ぎ落とされると同時に砲塔へ魔力を供給するエネルギーチューブが切断されて爆発を起こしたことである。

 そのままエンフォーサーは艦橋もろとも天雷に衝突した。


 「う・・・・」


 艦長が気付くと自分以外に艦橋で生き残っている者はいなかった。

 不意にすさまじい爆風が襲ってきた。

 天雷が今の衝突によるエンフォーサーのエネルギーチューブの爆発で機関室の下部が大きく損傷し、自らの魔法炉が誘爆して一瞬で爆沈したのだ。


 「天雷が・・・・!うおおっ!」


 更にもう一度起こった爆発で艦長は床に叩きつけられた。

 今度はエンフォーサーが後部に被弾、爆発を起こして大きく揺れた。


 「総員退艦せよ、繰り返す、総員退艦せよ」


 艦長はかろうじて機能が生きているマイクを掴むと繰り返した。


 ふと右舷上方を見るともう一隻の味方の駆逐艦「雷風」は前後の主砲の射撃を前後それぞれの敵部隊に対して続けながら敵戦艦への牽制に空中魚雷を発射、煙幕を張りつつ前後の敵艦隊のこれ以上の挟撃を避けるべく最大戦速を維持しているために主機関のノズルから青い魔力の炎を航跡をひきながら火山島の島影に入るべく急速回頭を始めていた。


 「・・・いい判断だ」


 艦長は雷風の熟練した操船を見てつぶやくと船倉へと降りていった。

 今回の任務で任された品物をエンフォーサーが爆沈する前に敵の手に渡らないように外へ出そうと考えたのだ。


 艦内は酷い有様になっていた。いたるところに爆発で穴が空き、その衝撃でねじ曲がった竜骨が艦内に飛び出し、爆発に巻き込まれた乗組員の亡骸がいくつも転がっていた。

 艦長は船体中央部にある船倉にたどり着くとかろうじて形をとどめていた木箱の蓋を開けた。


 「・・・・・・・・・どういう事だ!!!」


 艦長はその光景に眼を見開いた。

 木箱に入っていたのは軍の重要機密などではなかった。中に詰められていたのはただの石ころだった。


 ・・・・・・そう言えば。

 艦長は出港する前に自分達とは別の輸送船団がほぼ同じタイミングに出港する事。そしてエンフォーサーの通信手が帝国軍は最近開発された新しい暗号を使い始めていてその新しい暗号で輸送船団は連絡をとっているようだと話していた事を思い出した。


 「・・・・俺達はあの部隊の捨て石、いや囮にされたのか・・・・・・・・」


 そうつぶやいた直後にエンフォーサーは主砲弾薬庫に敵戦艦の直撃弾を受けて大爆発をおこした。


 そして、20年の時が経過する。

面白かったら、下の評価をクリックしてポイントを入れてください。

よろしくお願い致しますヽ(´▽`)/!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ