先輩に図書館で知的アピールしようと思ったら全然違う人だった
図書館って、快適ですよね・・・
ずっと気になっていた。
友人に誘われて、サッカー部の試合を観に行ったあの時から。
『ごめんね、わざわざ観に来てくれたのに負けちゃって。次は絶対勝つから』
申し訳なさそうにそう言った先輩を見て、私は胸が高鳴った。
それから私は試合の度に先輩達を応援しに行き、その度に想いは強くなっていった。
そして、私は先輩に恋をした。
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今日私は近くにある図書館に来ていた。
何故かというと、先輩がしょっちゅうここに来ているから、『あ、先輩も本好きなんですか?私も本好きなんです』アピールをするためである。
先輩はどこにいるのだろうか。
私は周囲を見渡しながら先輩を探した。
そして、見つけた。
あの背中は絶対に先輩なはずだ。
思わず顔が赤くなり、心臓もドキドキし始める。
よし、早速本を読むふりをしよう。そう思って私は適当に面白そうな本を探し始めた。
もしかしたら、もしかしたらだけどあの有名な『同じ本を同時に取ろうとして手が触れ合い、そこから恋が始まる』的なことが起きるかもしれない。
・・・あ、これ、昔読んでた本だ。
懐かしいな。
なんてことを考えながら本選びに少し集中してしまった私は、彼の接近に全く気が付かなかった。
とりあえず選んだ本を取ろうとした時、いつの間にか隣に来ていた男性と手が触れ合った。
どうやら同じ本を取ろうとしたらしい。
これは、まさか─────
「あ、ごめん」
誰だよ。
全然先輩じゃなかったよ。かなり期待したのに見たことない人だったよ。
「あ、どうぞ」
そう言って手を引いた男。これが先輩だったら・・・あ。
私が視界の端で捉えたのは、向こうの方で本を選んでいる男性。
あれは絶対に・・・先輩だ!!
私は男性が諦めた本を手に取り、先輩の元に向かおうとした。
しかし。
ふくらはぎ攣った。ちょっと高いところに本があったから背伸びしていたからかふくらはぎ攣った。
私は激痛に顔を歪め、思わずしゃがみ込む。そんな私を心配してか、さっきの男性が声をかけてきた。
大丈夫大丈夫・・・、痛くない痛くない・・・。
こんなもの、先輩と話すためなら我慢出来る!
そう思って私は顔を上げた。あそこでこちらに背を向けて座る先輩のところまで、絶対たどり着いてみせる・・・!
向こうにいたのは先輩じゃありませんでした。