表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

7話

「長田、四人連れて裏口に回れ」


「あいよ」


 倉庫の周りに歩哨は立っていなかったが、監視カメラは民間企業にしてはかなり多い。その視界に入らないように移動し、配置に着く。突入の先鋒は工作員に任せて、列の中ほどで構える。


 正面の入り口には警備員の控え室があるため、迂回して監視カメラの死角にある窓から侵入する事にした。


「……警報がありますね、どうしま……」


 先頭にいた工作員がそう報告して来た瞬間、建物中から警報が鳴り響いてきた。


「はあ!? 触ったのか!」


「俺じゃないっすよ!」


 すぐに長田たちがいる裏口の方から銃声が鳴り始める。あの馬鹿達の誰かが、警備システムに引っかかったんだ。


「長田、報告しろ!」


『裏口から侵入したけど、武装した七名に足止め食らってる!』


「何名か応援に向かわせる、合流して逃走経路の確保だ!」


 僕の班から二名を抽出して裏口に回させた。


「狙撃犯、建物から逃げ出す連中がいたら無力化、アジア人なら殺しても構わないが白人がいたらなるべく生かしておけ!」


 倉庫の全周をカバーするように配置した狙撃犯に指示を出し、残った五名を率いて正面入口に向かう。


「あっ!?」


 倉庫の角を曲がろうとしたところで、反対側から曲がって来た警備員と鉢合わせる。警備員の手には拳銃が握られていた。


 咄嗟にM4のストックで拳銃を払い、顔面に突きを食らわせる。倒れた警備員の胸に二発撃ち込み、反動を利用して頭にも一発撃ち込む。銃口の先に取り付けてあるサイレンサーからは、いくらか抑圧された銃声が響いた。


『管理官、先に三名の敵対勢力がいる。どうする?』


「排除しろ」


『了解』


 直後、三人分の断末魔と倒れる音が聞こえてきた。


『胸に撃ち込んだ。プレートを着ている可能性があるので注意しろ』


「ありがとう。正面の警備員室の中は見れるか?」


『ここからは死角になっていて確認出来ない』


 警備員室のすぐ外側に辿り着いた僕達は、一列になり突入の機を窺う。僕はまた列の中頃で待機。


 狙撃させた警備員が確実に無力化されたことを確認した際、全員がインカムを付けていた事を確認している。僕達の存在は露見していると考えた方が良さそうだ。


「手榴弾を投げて突入する」


 先頭の一人が手榴弾を二つ、角度をそれぞれ変えて投げ入れた。複数人の慌てる声と、その直後の爆発音。


「突入、突入!」


 粉塵が立ち込める廊下に突っ込む。廊下は七メートルほど先で左右に別れており、警備員室が左側のすぐ手前にあった。一人が警備員室に突入し、何発か発砲。


 埃のせいで視界は著しく悪いが、それでも人影を見つけた瞬間に撃ち、手榴弾と合わせて合計九名の殺害を確認した。運のいいことに、確認した死体はみんなアジア人だった。


 廊下を突き当たりで左に曲がる。公安から渡されたこの倉庫の見取り図によれば、この先には三階まで吹き抜けの倉庫が広がっているはずだ。

 僕は工作員を一人だけ手元に残し、残りの四人を上階の制圧に向かわせる。倉庫部分に突入するのは上階の安全がある程度確保されてからだ。


 手元に残した工作員は長田と同じ高校生の飯倉と言う男だ。長田と違って実戦経験はそれほどでもないけど、十分に使える人材だと認識している。


『二階、四名制圧。アジア人のみ』


『三階無人、四階三名無力化。フランス人はいない』


『五階六名制圧、指揮官と思われる人物を拘束、どうしますか?』


「五階、そいつを尋問して外国人がいないか聞き出せ。長田、そっちはどうだ?」


 無線から飛び込んでくる報告に指示を出す。長田達は七名と交戦中だから、二十三名がいたことになる。


『四名制圧、軽傷二名! 武装はアサルトライフルだけど……うわ、軽機撃ってきた! 早く支援ちょうだい!』


「飯倉、行くぞ。二階と三階は上から援護!」


 倉庫部分への扉に手をかけた時、狙撃班から連絡が入った。


『脱出しようとしていた四名を狙撃。一応、生きてはいます』


「指揮車両から捕縛に向かわせろ、敵は別にいいが味方は死なせるなよ!」


『了解』


 改めて扉を押し開く。


 倉庫の中は薄暗かった。裏口の方から激しい銃撃戦の音が聞こえる。


 倉庫の中は、乱雑に積み上げられた木箱や荷物が詰まった背の高い棚のせいでひどく視界が悪い。おまけに埃くさくて気分が悪くなる。文明人が居ていい場所じゃない。


「飯倉、後ろを警戒してくれ」


「了解」


 中ほどまで進んだところで、至近距離から銃声。横に積み上げられていたダンボールが崩れ落ちる。


「伏せろ!」


 膝立ちになり、銃声のした方に向けて発砲。一瞬だけ見えた敵の動きは、明らかに今まで遭遇した敵とは違っていた。


 軍事訓練を受けた、それも実戦経験を積んだ者特有の動き方だ。僕自身、あの砂漠の国でその動き方には慣れている。


 上階からの援護射撃が敵を束縛している間に敵を評価する。


 実戦経験があり、挟撃されても冷静に対処できる頭を持っている。考えられるのは警察の軽対応部隊か退役軍人。動き方からして後者だろう。もしかしたら、現役かもしれないけど。まあ、十中八九軍人の方だろう。上階からの援護射撃が効いている内に前進。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ