記録…Ⅰ
学生時代。私はいじめられっ子だった。
原因はたぶん…
・皆より足が遅いから。
皆知らないけど…私は生まれつき体が弱くて、体力がない。
・言葉がおかしいから。
幼い頃…お父さんの仕事の関係で海外で生活してて、日本語が…その…
・常に一人でいるから。
人見知りが激しいのもあるし…体質のせいで他の皆に付いて行けなくて…気が付いたら一人でいたんだよね。
…他にも色々あると思うけど、主な理由はたぶんこの三つ。
もう毎日が苦痛…だった。
でも…ある日──
「…なんだお前、来たのかよ」
隣の席の彼が、本を読みながら冷たく言った。
彼は、どうやら日系人らしい。
同性にも異性にもに人気があったけど…私は特に興味がなかった。
…ああー。だからか、よく女子に睨まれてたりしたのは。
──…帰りたい。
そう思いながら、席に着こうとして椅子に手をかけた瞬間──
横から手を掴まれた。
「…来ないほうがよかったんじゃないのか」
その言葉が…痛かった。
「…貴方に言われる筋合いは無い。です」
「いや…俺が言いたいのは──」
突然。全身の力が抜けて、床に倒れこんだ。
──息が苦しい。
「お…おい……なあ!?」
途切れる意識の直前で、唯一見えたのは…あの人だけだった。
次に目が覚めたのは、普段から通ってる病院(個室)のベットだった。
しかも隣には…
「…」
よりによって…あの人。しかも手を握られている。物凄く痛い。
「…な、なんだ…お前、起きたのか…」
「…悪い? です」
「いや、別に…」
彼は一言そう言ってそっぽを向いた。
よーく見ると、多少頬を赤らめている。
「…なんだよ」
私は目線を天井に向け、彼に聞いた。
「何故、貴方がここにいるんだ?…です」
彼はその言葉に思わず止まった。
「そりゃ…その……あ、そう! 第一発見者で…」
「他にも数人居たが、です」
「…」
黙り込んでしまった。私はふと、今朝言われたことを思い出した。
「…何故。今朝、あんなこと言ったんだ?…です」
「…それは…」
今までそらしてた視線を向けると、逆に彼が視線をそらす。
「…どうせ、私なんかと一緒にいることが嫌なんだろ…です」
「──そうじゃない!!」
ぼそりと言ったその一言に、彼は大きな声を出した。
かと思えば今度は、徐々に声が小さくなっている。
「俺が言いたかったのは、その…
お前の様子が普段と違ってたって言うか…なんていうか…」
驚いた。彼がこんな顔を見せるなんて…
そういえば、よくよく考えてみると…
普段、彼が私に向かって悪口を言ったことなんて無かった。
彼と口を聞くときって…今と似たような状況が多かった気が…?
「…貴方って…」
「…なんだよ?」
少し考えてから、彼に言った。
「──不器用、なんだ。…です」
そう言われた瞬間、彼が子供のようにムスッとしたのに気が付き、思わず顔が綻んだ。
「なっ…何だよ!? 今人の顔見て笑っただろ!!」
「違うですっ…クスッ」
「ほらまた!!」
その日から、彼と私は…何かがかわった。そんな気がする。




