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1.お礼なんていいんですよ。

 


「碓氷ー、これ運んどいてー。」

「う…。ハイ。」


 うぇー。

 やたら多いプリント。何だこれと思ったら現国で使ったプリントだった。

 一人一枚じゃなくて、プリント集なモンだからす、すごいヘビー。

 にょろりんじゃなくて、重いっていう英単語ね。ホラ、あたし頭良し子さんだから。


「碓氷さん、代わろうか?」


 …誰コノヒト。


「田中一真。一応、君の隣の席何だけど。」


 何だと!?コイツはエスパーなのか!?

 心を読み取る宇宙人なのか!?

 あたしを赤裸々に覗き込んでイルノカ!?


「いや…別にエスパーじゃないよ。」


 こ、こいつやりよる!

 はッ!待つのよあたし!

 もしかしてあたしのこと連れ去るつもりなんじゃない?

 あたしを未確認飛行物体に乗せて人体実験するのかも!


『や、やめてぇ!』

『ふははははは、良いではないか、良いではないか』

『あーれぇー』


 みたいな!

「…大丈夫?」

 突然謝られてキョトンとする私に困った顔をしている誰か。

 …田中一真、だっけ。

 やっぱりその綺麗な顔は獲物を引き寄せるタメにあるのかな。


 しかし、影が薄い。

 全体的に色素薄めなのもあるけど、


 なんか、影が薄い。


「田中くーん!こんなヤツ、構ってもムダよぅ!」

 どげしっ

 あたしを押しのけて田中の前に立った女。

「みっこ、あたしに失礼。」

 不本意ながらも小学生の頃からの親友だったりする。

 あだ名はみっこ。

 本名にひと文字もかすっていないあだ名はかなり似合っている。


 …ワケが分からないかもしれない。

 でも、こいつを見ればわかる。


『みっこ』顏っていうのだろうか。

 本当に顏で『私はみっこです。』って言ってるのだ。


「アンタねぇ!失礼なのはアンタの方でしょう?ホラ、さっさとプリント運んできなさい!」

 ケツをスパーン!と叩くみっこ。

 くそ、かなり痛い。

 …まさか、これも愛情表現の一つ?

 みっこ、どエスなのか!?

 ピンヒールで人を蹴りつけて、仮面に鞭を標準装備しているあのJOOUSAMAだったのか!?


「どうでもいいけど、早くプリント運んできなさいよ。チャイムなるわよ」

「うぃー」

 重い尻をどっこいせとあげるとプリント集をつかんだ。

「ではでは、行ってまいるぞよ。」

「はいはいぞよ。」

 テキトーに流してくるみっこに悲しげな顔をしてみせた。


「…うぇっ」

 リアルに気持ち悪がったヨネ⁉

 ちょっと今は“冗談よ、オホホホ”みたいな顔してたけど、あたし知ってるからね!?

 しっかり見たからね!?


「気のせいよ。」


 そんなわけないじゃん!

 あたしがいくらバカだからって流石にだまされないって!


「気のせいよ。一応あんたの友達なんだから。」

「…いやいや!でも言ったって!」

「ついに、空耳まで聞こえるようになってしまったのね…。大丈夫?」

「…空耳じゃないし!」

「じゃあ聞こえなかったハズよ。あんたが幻を聞いていないならね。…聞こえなかったでしょう?」

「…聞こえ、なかったかも?」

「そーよそーよ。聞いてないでしょう?」




「…うん。」


「いやいや、おかしいよね?」

 あわてた様子で割り込んでくる田口くん。

 何がおかしいんだろう。

「何が?」


「…え、だって……何にもない。」

 みっこの方を見た山田くんはすんなりと言葉をひっこめた。

 …大丈夫かな、コノヒト。

 頭おかしくなちゃったのかな。

 やっぱりみっこなんかと一緒にいたからじゃ…

 もしかしてみっこ、病気なの!?

 そうだよ、きっとみっこは近づいた者を無差別におかしくしてしまう病気なんだよ。それはまだ確認されていない新種の病気で、ドクターを悩ませているんだ。

 世界一の名医、usuiをもってしても治せない病気…OSOROSII!

 きっとそれから二人の絆を試されるような試練が待っているんだ。そして一つずつ乗り越えていくんだけど…

「ブルータス、お前もか――――!!」

くわっと目を見開いて叫んだあたしにクラス中の視線が集まる…ことはない。

(また碓氷かよー)

(あいつもよくやるなー)

そんな声が聞こえてきそうな雰囲気。まあ、皆イイ人だから怒りや、嘲るような感じではない。

…ちょっと、呆れてるかもしれないけど。


ふぃ~んふお~んふぁ~んふぉ~ん。


一般的なチャイムよりどこか間抜けな音。


「あ。」

みっこは呆れた顔でプリント集の束を持ったあたしを見た。

「…私は言ったわよ。」

しーらね。そういいながらさっさと席に戻って行った。



次、数学だ。

みっこお気に入りの新人教師、ケンちゃんの授業。

あたしはイマイチどこがいいのか分かんないけどケンちゃんは色んな生徒から人気がある。顔が爽やかでスタイルもいい、教え方もけっこー上手い。…高校生からしたら理想的だろうな。なんてったってノリだって良いんだから。






「うーすーいーーっ⁉なんでお前はプリント持って行っておらんのだ!」

「いやー、すんません。」

頭をかきかき謝る。

いや、まぁあたしが悪いんだし。

「それにお前またテストの点数ひどかったらしいな?田中先生が悩んでたぞー。…お前、他は点数良いんだから。」

「…すんまそん。」

田中先生って誰だろう。

そんな名前の先生この学校にいたっけ?


ところかわって職員室。休み時間中にもっていかなかったのがばれて放課後お説教コース。

…長いなぁ。

ぼんやりしていたらそれが先生にもばれたらしい。「碓氷!だからおま「失礼します。」

誰かは分からんが助かった。

そっちを先生が向いた瞬間そーっと職員室を出ようして

「碓氷、帰るなよー。」

「もちろんじゃないですか!」


ば.れ.た☆


「ちょっと分からない所があって…今良いですか?」

「田中が?…大丈夫だ。どこだ?言ってみろ。」


あんた、あたしの時と態度ちがくない?




「田中。お前碓氷の勉強見てやれないか?」

なんですと⁉

「いや、先生!それは田中君がかわいそうだと思います!」

「…それもそうか。悪いな、田中。今のは忘れてくれ。」

ホッ。

あたしにそんなベタな展開は似合わんのだよ!

「別に僕なら大丈夫ですよ?」

…え。

「誰かに教えるのってすごく勉強になりますから。」

いや、いいいいいいいいって!

遠慮するって!


本当に勉強キライなんだって!


「…田中が迷惑しないなら、頼めるか?」

「はい。」


Oh,my god!




その代わりに解放されたあたしと田中君。

ぐったりしているあたしにいつにするか聞いてくる田中君は鬼だと思う。

「じゃあ、次の火曜日でいい?」

「……大丈夫です。」



…まあ、あたしを職員室から解放してくれたし。

勉強教えてくれるし。

「田中君、ありがとう。…本当にいろいろと。」






「お礼なんていいんですよ。」

(こっちだって下心があるんだから。)

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