第8話 聴こえてます
朝の鐘が鳴る。
教会の裏庭。
祈りの時間。
そこにいるのは一人だけだった。
リリン。
三人で祈っていた場所は、少し広く感じる。
でもリリンは気にしない。
神様の声は、今日も聞こえている。
リリンは目を閉じた。
『……りなさい』
声が届く。
いつもの声だ。
少しだけ小さいけれど。
リリンはうなずく。
「祈りなさい、ですね」
静かに手を合わせる。
祈る。
神様のお告げだ。
間違えるはずがない。
祈りを終えて、リリンは立ち上がる。
教会の庭には朝の光が差し込んでいた。
静かな町。
いつもと変わらない。
リリンは空を見上げる。
「神様」
『……なさい』
声が聞こえる。
少しだけ途切れていた。
リリンは少し考える。
「……祈りなさい?」
それから笑った。
「そうですよね」
神様の声は、時々小さい。
でも意味は分かる。
リリンはそれで困らない。
むしろ。
分かってしまうのだ。
⸻
昼。
町の通り。
リリンは歩きながら空を見上げた。
「神様」
声をかける。
『……きなさい』
リリンは立ち止まる。
少し考える。
「行きなさい、ですね」
小さくうなずく。
どこへ行けばいいのかは分からない。
でも。
神様が言ったのなら。
きっと意味がある。
リリンはそのまま歩き続けた。
⸻
夕方。
教会の庭。
リリンは一人で祈っていた。
『……りなさい』
声がまた聞こえる。
少しだけ遠い。
でも。
リリンは迷わない。
「祈りなさい、ですね」
自然に言う。
神様のお告げは、いつも優しい。
少しだけ聞こえにくくても。
意味は分かる。
だって。
神様のお告げなのだから。
⸻
夜。
教会の小さな部屋。
リリンは窓の外を見ていた。
星がきれいだった。
「神様」
小さく呼ぶ。
『……』
声はほとんど聞こえない。
でも。
リリンは微笑む。
「分かっていますよ」
神様のお告げは、ちゃんと届いている。
少しだけ薄いだけだ。
だから。
ちゃんと聞けばいい。
少しだけ考えればいい。
リリンはベッドに入った。
目を閉じる。
そして小さくつぶやく。
「神様」
「今日も少し、うるさいですね」




