表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第7話 お告げ

その日の昼。


町の外れで、騒ぎが起きていた。


知らない男が村に入ってきたのだ。


服は破れ、血がにじんでいる。


兵士だった。


村人が小声で言う。


「敵国の兵だ」


「戦争の……」


男は歩く力もないらしく、ふらつきながら倒れた。


それを見た宿屋の主人が駆け寄る。


「おい、大丈夫か」


男は何か言おうとしたが、声にならない。


主人は周りを見た。


そして小さく言う。


「……中に入れろ」


宿屋の裏口が開く。


男は中へ運ばれていった。


それを見ていた村人たちは、何も言わなかった。



夕方。


村に馬の音が響く。


憲兵だった。


三人。


鎧の音を鳴らしながら村へ入ってくる。


「敵兵がこの辺りに逃げ込んだ」


「見た者はいるか」


村人たちは顔を見合わせる。


誰も答えない。


その時。


憲兵の一人がリリンたちを見つけた。


「お前たち」


教会の前にいた二人。


リリンとセレナ。


「聖女見習いだな」


リリンはうなずく。


「はい」


「神託が聞けると聞いた」


憲兵は言う。


「敵兵を追っている」


「どこにいる」


セレナが小さく息を呑む。


リリンは目を閉じた。


『リリン』


神様の声。


『宿屋の倉庫』


短い言葉だった。


リリンは目を開ける。


「宿屋の倉庫です」


迷いなく言った。


憲兵はすぐに馬を回す。


「行くぞ」


宿屋の扉が蹴り開けられる。


怒鳴り声。


物が倒れる音。


そして。


引きずり出される男。


宿屋の主人と、その家族。


「かくまっていたな」


「違う、俺はただ……!」


憲兵は聞かない。


兵士は縄をかけられ、乱暴に馬へ縛りつけられる。


宿屋の家族も連れていかれる。


村は静まり返っていた。



しばらくして。


セレナが言った。


「……今の」


リリンはうなずく。


「神様のお告げです」


その顔は穏やかだった。


セレナはリリンを見る。


「満足なの?」


リリンは不思議そうに言う。


「はい」


「神様のお告げですから」


セレナの顔が歪む。


「……あれで?」


リリンは首をかしげる。


「どういう意味ですか?」


セレナは空を見上げた。


「神様」


声を張る。


「いるんでしょ?」


風が吹く。


何も返らない。


セレナは続けた。


「神様なんていないんじゃない?」


「自分勝手だよ」


「いるなら何か言えよ!」


声が村に響く。


沈黙。


神の声は聞こえない。


リリンには。


いつも通り聞こえていた。


『祈りなさい』


リリンは静かに言う。


「セレナ」


「祈りましょう」


セレナは笑った。


怒った笑いだった。


「……やっぱり変だよ」



次の朝。


鐘が鳴る。


祈りの時間。


裏庭にいたのは一人だった。


リリン。


セレナは来なかった。


リリンは少しだけ寂しく思う。


でも。


『祈りなさい』


神様の声は、今日もはっきりしている。


だから。


これでいいのだ。


リリンは静かに手を合わせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ