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第4話 祈りの続かない朝

朝の鐘が鳴る。


教会の裏庭に三人が集まる。


三人は並んで祈る。


リリンは目を閉じる。


『祈りなさい』


神様の声は今日もはっきりしている。


優しくて、安心する声だ。


隣を見る。


セレナも祈っている。


その向こう。


ヴィオラも静かに手を合わせていた。


祈りが終わる。


セレナが大きく伸びをした。


「はー、いい天気!」


「朝から元気ですね」


リリンが笑う。


ヴィオラも穏やかに微笑んだ。


「今日は市場が賑やかそうですね」


「パン屋の新しいパン、もう出てるかな!」


「セレナは本当に食べ物の話ばかりですね」


「だっておいしいじゃん!」


三人は軽く笑い合う。


いつもの朝。


町は平和で、空は青い。


神様のお告げも、今日は特になかった。


昼も。


夕方も。


穏やかな一日だった。


そして夜。


教会の中庭。


月の光が石畳を照らしている。


帰ろうとしたリリンとセレナを、ヴィオラが呼び止めた。


「少し、お話があります」


その声はいつもと同じ。


優しい声だった。


リリンは首をかしげる。


「どうしたんですか?」


ヴィオラは少しだけ空を見上げた。


それから静かに言った。


「神様の声が」


「もう、聞こえないのです」


セレナがすぐ言う。


「え?」


ヴィオラは穏やかに続けた。


「お告げが、何も」


「昨日も、今日も」


「私には聞こえませんでした」


リリンは思わず一歩近づく。


「ヴィオラ……」


セレナが慌てて言う。


「また聞こえるって!」


「そういう日もあるよ!」


「ほら、昨日だって少し遅かったし!」


ヴィオラは小さく笑った。


「いいえ」


そして静かに言う。


「私は外れたみたいです」


リリンもセレナも、言葉が出ない。


ヴィオラは二人を見た。


優しい目だった。


「リリン」


「セレナ」


「これからも祈り続けてくださいね」


それだけ言って、ヴィオラは歩き出す。


月明かりの中。


白金の髪が揺れた。


二人はその背中を見送る。



次の朝。


鐘が鳴る。


祈りの時間。


裏庭に集まったのは二人だった。


リリンとセレナ。


ヴィオラはいない。


二人は顔を見合わせる。


セレナが小さく言った。


「……来ないね」


リリンはうなずく。


少し寂しい。


でも。


『祈りなさい』


神様の声は、今日もはっきりしている。


リリンは目を閉じた。


神様は間違えない。


だからきっと。


これでいいのだ。


「……祈りましょう」


リリンは静かに手を合わせた。


朝の光の中で、二人の祈りが始まる。


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