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第2話 聖女見習いの祈り

教会の裏庭には、小さな祈り台が三つ並んでいる。


朝の祈りは、聖女見習いの大切な時間だ。


そこに並ぶのは三人。


リリン。

ヴィオラ。

セレナ。


静かな朝の空気の中で、三人は目を閉じていた。


『祈りなさい』


神様の声は、今日もはっきりしている。


リリンは小さく息を吐いた。


「……神様、朝から元気ですね」


『祈りなさい』


「はいはい」


その隣では、セレナがこっそり目を開けていた。


「リリン、今日のお告げ何だった?」


小声で聞いてくる。


「まだです。祈り中ですよ」


「いいじゃんちょっとくらい」


「よくありません」


そう言うと、ヴィオラが優しく笑った。


ヴィオラは三人の中で一番年上だ。

白金の髪を後ろでゆるくまとめている。


どこから見ても、聖女らしい人だった。


「お二人とも、祈りはきちんと終えてからですよ」


「はーい」


セレナが渋々目を閉じる。


その時。


『リリン』


声がした。


『裏道へ行きなさい』


リリンは目を開ける。


「裏道?」


祈りが終わるのを待って、二人を見る。


「お告げありました」


「私も!」


セレナがすぐに手を上げた。


「裏道でしょ?」


リリンは少し驚く。


「同じです」


ヴィオラもゆっくりうなずいた。


「私も同じお告げでした」


三人は顔を見合わせた。


同じお告げ。


珍しくはないが、少し不思議だ。


「じゃあ行きましょう!」


セレナはすぐ立ち上がる。


「何かあるかも!」


三人は教会の裏道へ向かった。


朝の町はまだ静かだ。


石壁の間を抜ける細い道。


その途中で、ヴィオラがふと足を止めた。


「……あれ」


「どうしました?」


リリンが振り向く。


ヴィオラは空を見上げていた。


「神様」


静かに言う。


「もう一度、お聞かせください」


風が少し吹いた。


しばらくして、ヴィオラは微笑んだ。


「すみません。少し聞き取りづらかっただけです」


「神様、時々小さいですよね」


セレナが笑う。


「私もたまにあります」


リリンも軽くうなずいた。


三人はそのまま歩き出す。


すると、道の先に人影が見えた。


「……あれ?」


老人が壁にもたれて座り込んでいた。


顔色が悪い。


「大丈夫ですか?」


リリンが駆け寄る。


老人は苦しそうに息をしていた。


「ちょっと……立ちくらみで……」


「教会まで行きましょう」


ヴィオラが落ち着いた声で言う。


三人で支えると、老人はゆっくり立ち上がった。


その様子を見ていたパン屋の男が言う。


「おお、聖女見習いたちか」


「助かるよ」


「神様のお導きかもしれないな」


セレナが得意げに笑う。


「お告げでしたから!」


リリンは少し照れくさくなる。


「神様が教えてくれただけですよ」


老人を教会へ送ると、三人はまた裏庭へ戻った。


朝の光が庭に差し込んでいる。


セレナが伸びをする。


「いやー、いいことしたね」


「そうですね」


リリンも笑う。


その隣で、ヴィオラは少しだけ空を見上げていた。


神様の声は、確かに聞こえる。


ただ、ほんの少しだけ。


昨日より遠い気がした。


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