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第2話『軍事学校の優等生』

《シエラ、そっちに10人行ったぞ!》

「了解。俺一人で足止めする」


無線を受け取った俺は、敵の使った探知魔術を逆探知し、位置を特定する。

そして隠密魔術を使用して出来うる限り接近し、視界に敵を捉えた。


金色の銃弾は(ミェイ・ノヒトスト)敵を穿つ(ユァン・シダ)


そして、銃の狙いを定めながら敵に聞かれないよう極極小さな声で魔術の詠唱を唱え始める。


そこに(テュルイ)慈悲は(ケルスタ)存在しない(・ジオバーグ)


詠唱が終了すると共に、銃身が金色に輝き出す。

流石にこの状態で魔力を隠す事は出来ず、敵さんもやっと俺の存在に気づいた。

だが、もう全てが遅い。


俺は一切の躊躇なく、引き金を引いた。


同時に、金色の弾丸が10発発射される。

敵は向かってくる弾丸を必死に回避しようとするが、魔術で強化された銃にさらに魔術をかけた弾丸を避けられるはずもなく、10発の弾丸は全て別の人物に命中し、敵の小隊は全滅した。


《シエラくん、上!ごめんなさい気づかなかった!》


次はどう動こうかと考えていると、突然無線から慌てた声が聞こえた。

即座に上空を見ると、背に羽を生やした15人の集団が全員、俺へ銃口を向けていた。


「まっっっず⋯⋯!」


数瞬後、一斉に銃声が鳴る。

あと一瞬でも動くのが遅れていたら、蜂の巣になっていただろう。

身体強化さまさまだ。

しかし、さっき避けられたからと言って次も避けられる保証は無い。

俺は煙幕弾を自身の足元に投げ、魔力を消す。

こうなってしまえば、探知は魔術と目視だけに頼っているこの世界の人間からは簡単に逃げられる。


なので俺は、()()()()()()()


煙幕内から発射された俺の銃弾は、一人のこめかみに的中し、落とした。

即座に次弾を装填し、速射する。また当たった。

流石に今度は打ち返してきたが、まだまだ煙幕は健在だ。

全て的外れの場所に着弾する。

その隙を見逃すはずもなく、俺はすでに弾を装填した銃口を未だ空中にいる奴らへと向けた。


爆ぜろ(ヘムイ)


今回放つのは、短縮詠唱による速射だ。

銃弾は着弾すると同時に爆破を誘発し、仕込んだ魔術によって敵の航空小隊は爆炎に包まれた。


―――


「いよぅナンバーワン!聞いたぜ、今日の実習も被弾ゼロで4つの小隊と1つの中隊を壊滅させたんだってな?」

「⋯⋯リヒト、もう少し静かに食事ができないのか?その舌を引きちぎるぞ」

「怖っ!?し、静かにしま〜っす」


午前の実習授業が終わり、昼休みに俺は学食を利用して昼食を食べていた。

そこに友人のリヒト・ハーヴェンがだる絡みをしてきて、少し腹が立ったので軽く脅してやると、リヒトは大人しく自分の食事に手をつけ始めたので俺も食事を再開する。


「⋯⋯シエラ・シュアテラ。いるか!?」


10数分後、昼食を食べ終わって食器とトレーを返却していた時、食堂内にそんな声が響いた。

見ると、食堂の入口で実習の教官が何かを探すかのように食堂内を見回している。


「お前⋯⋯何したんだよ?」

「何もしてねぇよ」


リヒトが戦慄した顔でそう聞いてくるが、教官に呼び出されるような事をした覚えは無い。

ただ無視する訳にもいかず、俺は早足で教官の元へ行き、声をかけた。


「どうかしましたか?教官」

「校長がお呼びだ。着いてこい」


教官はそう一言だけ言うと、さっさと食堂を後にして歩き去ってしまう。

正直教室へ帰ってしまいたいが、着いてこいと言われた以上そうもいかない。

俺はため息を1つ吐き、大人しく教官の後ろを着いて行くことにした

途中、「骨は拾ってやるからな〜」というリヒトの声が聞こえたので、今度ぶん殴ってやろうと思う。


―――


「⋯⋯ここだ、入れ。校長、シエラ・シュアテラをお呼びしました」


教官に促されて入ったその部屋に対する第一印象は、言うなれば()()()()()だろう。

右側の壁一面に設置されている本棚には所狭しと魔術書が敷き詰められ、左側の壁には(ほうき)を初めとした魔女(ぜん)とした魔術具が散乱している。

分かったことは、この部屋の持ち主が魔術師である事と、整理整頓が苦手だということだ。

そして、そんなこの部屋の持ち主様は俺の正面にある高級執務机を挟んで無駄に仰々しい態度で座っていた。


(碇ゲ〇ドウみたいな座り方だな)


「⋯⋯君は今、何か失礼な事を考えているね?」

「っ!?そ、そそそそんな事は⋯⋯に"ゃ、ないですよ?」


用件が話されるまで暇だったので前世のアニメキャラの座り方と校長の座り方を見比べていると、校長からジトッとした目で指摘されてしまった。

顔に出ていたのだろうか⋯⋯気を引き締めなければ。

俺は表情を引き締め、元々伸ばしていた背筋を更にピンと張る。

それでも、校長はしばらく変わらない表情で見つめてきたが、やがて大きなため息を吐いた。


「はぁぁあぁ⋯⋯まぁいいや、今のは聞かなかったことにするとして、本題に入ろうか」


そう言うと、校長は全てを見透かすかのような視線を俺へと向けた。

あまりの眼光に、思わず背中に嫌な汗が(したた)る。


「シエラ・シュアテラ。我がクファトゼイン帝国における最大の軍事学校である我が校に首席で合格し、入学してからも実技、筆記のどちらも今の今まで1位の座を譲ったことの無い君に興味を持ち、会いたいと言ってきた人物がいるんだ。君には今から、その人に会ってもらう。残念ながら拒否権は無い」


校長はそこまで言うと、声の音量を上げて、扉の方へ「入りたまえ」と言った。

そして「失礼します」という言葉が聞こえ、すぐに扉が開く。

そして、俺は入ってきた人物を見て驚愕した。


「っ!あ、貴方は⋯⋯」

「やぁ、初めまして。僕はトリッシュ・ラグレーだ。会えて嬉しいよ、シエラ・シュアテラ君」


入ってきたのは、29年前に魔術革新を引き起こし、世界の魔術のレベルを3段階は引き上げたと言われている天才にして、俺と同じ転生者である可能性の高い人物、トリッシュ・ラグレーその人だった。

次回の投稿は明日を予定しています。


なお、この情報は変更される場合がございます。

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