第1話『三回の技術革新と胸中の不安』
俺は、転生者だ。
前世では身体が弱いせいで20歳を目前にして病死してしまい、気づいた時にはシエラ・シュアテラとしてこの前世とは別の世界で生を得ていた。
おれがシエラ・シュアテラとして最初に始めたことは、この世界の情報をかきあつめることだ。
そしてその甲斐あってか、
「⋯⋯これ、絶対俺以外にも転生者がいるだろ」
この世界に生を受けて5年、俺は早くも驚きの事実に気づくこととなった。
―――
この世界の技術力は、前世で言えば『近代』程度だ。
しかしそれでも、ほんの65年くらい前まではまだ中世ヨーロッパくらいの技術力だったのだ。
だが、一人の青年によって『産業革命』が引き起こされ、それからこの世界の技術力は急速的に飛躍した。
そして45年前、とある少女が工業と魔術を融合させた技術である『魔工術』を確立させた。
これにより、世界の技術力は更に加速度的に上昇していくこととなり、この2人の天才によってこの世界の技術力はたったの65年で前世の世界の250年分、進んだ。
更に19年前⋯⋯1人の天才が、ダメ押しをするかのようにこれまで300年、元々ほとんど完成していて大きなな上昇の無かった魔術技術に革新を起こした。
『魔術革命』と呼ばれるこの魔術革新によって、元々貴族のような一部の人間しか使うことの出来なかった高等魔術を、一般市民でも扱えるようにした。
⋯⋯あまりにも、異常だ。
この3人が、偶然同じような時期にポップしただけだと言うには、さすがに説明がつかない。
前世の俺なら、転生など荒唐無稽な眉唾物だと一蹴しただろう。
しかし、実際に俺はその転生を体験した。
今なら、同じように転生した人がいても、なんら不思議では無い。
しかし⋯⋯。
「⋯⋯どうするんだよ、これ」
この3人がそれぞれ確立させた技術は、確実に人々の人生を豊かにさせ、幸福を呼んだ。
ただ⋯⋯技術が進めばその分、軍事分野にも革命的な変化をもたらす。
今までの技術革新を呼んだ3人、そして俺は全員、クファトゼイン帝国、という国に生まれた。
当然、クファトゼイン帝国は技術革新の恩恵を世界で1番早くに受ける事が出来る。
クファトゼイン帝国はこの利を逃すこと無く、『産業革命』が起こった2年後から周辺諸国に戦争を吹っかけまくり、そしてその全ての戦争に勝利し、たったの60年で小国から世界中に飛び地を持つ超大国にまで成り上がったのだ。
⋯⋯しかし。
「これ、ちょっと大丈夫か?」
本来、生まれた国が豊かな事は喜ぶべきことだろう。
だが、俺は素直に喜べないでいる。
クファトゼイン帝国は数々の戦争に勝利して超大国の地位をもぎ取った軍事国家だ。
当然、周囲諸国を初めとした沢山の国家に疎まれたり、なんならクファトゼイン帝国を憎んでいる国も多い。
それは、全世界が敵と言っても決して過言ではないくらいに。
今やクファトゼイン帝国が戦争を始めれば、その相手がどんなに鎖国的な国家だったとしても全世界が宣戦を布告してくるだろう。
いくらクファトゼイン帝国が超大国と言えども、全世界が敵となれば勝つことは厳しい。
そのためかここ10年、クファトゼイン帝国は戦争をしていない。
このまま他の国家との仲を段々と良くしていってくれれば安心なのだが⋯⋯14年後、俺の胸中の不安は最悪の形で現実になるのだった。




