プロローグ『同郷の宴』
カツ⋯⋯カツ⋯⋯と、己の軍靴が長い廊下にその足音を鳴らす。
しかしその足音も遂には止まり、俺は1つの扉の前へと辿り着いた。
2回のノックの後、自身の名前、階級、所属部隊を伝えると、「どうぞ〜」という気の抜けた、間延びした返答が帰ってきたため、「失礼します」と言って扉を開け、中に入る。
そして、室内の様子を見てわずかに動揺してしまった。
「これは⋯⋯すでに皆さんお揃いでしたか。お待たせしてしまい、大変申し訳ありません」
まだ集合予定時間15分前だというのに、今日ここに呼ばれている俺以外の全員がすでに到着していた。
中にいた3人は、全員俺より歳も階級も遥か上だ。
いくら見知った仲であろうとも、礼儀を欠く行為は避けるべきだろう。
「ここは公共の場ではない完全プライベートな空間で無礼講の場だよ。無理強いはしないけど堅苦しい言い方は辞めないか?せっかくこうして、元同郷の出の3人が揃ったんだから。ここの全員の間で敬語は無しにしよう」
「⋯⋯分かった。怒って更迭とかしないでくれよ?」
「ハッハッハ、そんな事する訳ないじゃマイカ」
不安だなぁと思いながらも、無礼講という言葉に甘えさせてもらい、微妙に躊躇いながら空いていた席に着席する。
「それじゃあ、またこうして誰も死なずにこの4人で集まることが出来たことを祝し、酒宴を開催しようか」
俺の正面に座っていた男がそう言って1つ手を叩くと、テーブルクロスの他には何1つ無かった机の上に、遥か遠方の国家が原産である焼酎に始まり、世界中の様々な酒、そしてこれまた世界中の様々な料理が一瞬にして出現した。
「それじゃ、この中で最高年齢であるリルゲア・ヒャイマー陸軍元帥。開演の挨拶をお願いします?」
正面に座る男が、俺から見て右側に座っている男へ妙に芝居がかった動きで開演の挨拶を促す。
そして促された男は「うむ」と一言だけ声を上げると、手元にあったワインの入ったグラスをもって席を立ち、続くように俺達も同じようにして席を立つ。
「まずは全員、俺の招集に応じてくれて本当にありがとう。こうしてまた、この4人全員で集まる事が出来て、俺は感無量だ。
これから先、まだまだ辛い時代が続くだろう。
だが俺たち4人がいる限り、未来は明るいと俺は信じている。
さぁ!今日は暗い未来のことなど忘れて、短い時間だが思う存分、過去について語り合おうではないか!
同じ元日本人同士、楽しもう!!」




