嘘をやめた夜
彼女はその夜、駅前のカフェで待っていた。
約束の時間より早く着いてしまったのは、心が落ち着かなかったからだ。
カップの中のカフェオレは、もう冷めかけている。
彼が現れたのは、約束の五分後。
いつも通りのジャケット、少し乱れた髪。
彼女は立ち上がりかけて、でも座り直した。
「久しぶりだね」と彼。
「うん」と彼女。
沈黙が、ふたりの間を満たした。
それは、長い間積み重ねてきた嘘の重さだった。
彼女は、バッグの中から一枚の紙を取り出した。
それは、昨夜書いた詩だった。
「もう嘘はやめましょ」で始まる、言い聞かせる詩。
「読んでくれる?」と彼が言った。
彼女は、少しだけ震える声で読み始めた。
「あなたのこと嫌いだなんて、ほんとはとても好きよ…」
もう嘘はやめましょ
あなたのこと嫌いだなんて
ほんとはとても好きよ
つまらないプライドなんて
もう捨てて
捨ててしまいましょ
あなたが男だなんてとても素敵
そしてあたしが女だなんて
きっと素敵な恋ができる
もういえない言葉なんてない
もうできないことなんてない
もう嘘はやめましょ
あなたの前で冷たいそぶり
ほんとは眠れない夜
いくつも過ごしてたのに
もう負けて
負けてしまいましょう
読み終えたとき、彼は静かに笑った。
「僕もずっと嘘をついてた。君のこと、好きだったよ。」
彼女は、涙をこらえながら言った。
「もう負けてしまいましょう。恋に。」
彼は頷いた。
そして、ふたりは初めて手を握った。
それは、嘘をやめた夜の、最初の真実だった。
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(AI君)
れいさん、これはまさに「詩が物語を導き、物語が詩を抱きしめる」瞬間ですね。
詩小説「嘘をやめた夜」は、言葉の奥に隠れていた感情が、詩というかたちを借りて現実に滲み出す、繊細で美しい物語です。
詩が鍵となる物語構造
この詩小説は、三層の時間と感情が絡み合っています:
1. 現在:駅前のカフェで再会するふたり。沈黙と緊張が支配する場面。
2. 過去:積み重ねてきた「嘘」の記憶。冷たいそぶり、眠れない夜、言えなかった言葉。
3. 詩の時間:昨夜書かれた詩が、過去と現在をつなぎ、未来への扉を開く。
詩はただの言葉ではなく、「告白の代弁者」であり、「感情の翻訳者」として機能しています。
言い聞かせる詩の力:語り手の変容
• 「ほんとはとても好きよ」——感情の核心を、詩が代わりに語る。
• 「つまらないプライドなんて、もう捨てて」——自己防衛の殻を壊す決意。
• 「もう負けてしまいましょう」——恋に対する降伏ではなく、素直さへの勝利。
彼女が詩を読むことで、彼もまた「嘘をやめる」勇気を得る。
ふたりの手が初めて触れ合う瞬間は、詩が現実を変えた証です。
舞台化するなら:沈黙と朗読の一幕劇
この詩小説は、舞台化にも向いています。たとえば:
• 登場人物:彼女、彼、そして「詩」そのものを語る第三の声
• 舞台装置:駅前のカフェ、冷めたカフェオレ、バッグから取り出される紙
• 演出:沈黙の間、詩の朗読が空間を満たす。照明が彼女の心情に合わせて変化。
続編の可能性:「嘘をやめた朝」
この夜のあと、ふたりはどう歩き出すのか。
たとえばこんな続編も考えられます:
翌朝、彼女は目覚めた。
窓の外は、昨日より少しだけ優しい光。
ベッドサイドには、彼が置いていったメモがあった。
「また会おう。今度は、嘘なしで。」
彼女は笑った。
そして、詩の続きを書き始めた。
「もう嘘はやめたから、今度はほんとうの夢を見ましょう。」
れいさん、もしよければこの詩小説を別の視点から描いてみませんか?
たとえば「彼の視点」や「詩そのものが語る物語」、あるいは「AIが見守っていたら」というメタ的な変奏も可能です。
どんな方向に進めてみましょう。あなたの言葉の旅に、私もそっと寄り添います。
連載版もあります。
詩小説ショートショート集
このショートショートのもとになった詩は、連載版「われは詩人 でなければ死人 ーAIと詩を語るー」で読めます。
ショートショートタイトル「嘘をやめた夜」の原詩は「もう嘘はやめましょ」です。




