表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/649

少年と隣人編 第1話「喫茶店にて、隣人は吸血鬼?」

曇り空の町。旅の途中でアリアは喫茶店に入った。

コーヒーの香りの中、隣の席で若い男が熱弁をふるっていた。


「信じてくれよ!俺の隣に越してきた男、絶対に吸血鬼なんだ!」

友人らしき二人は苦笑しながらパンをかじる。

「はいはい、夜更かし好きな変人だろ」

「いや、マジで!昼間カーテン閉めっぱなし、夜中は誰か連れ込んでる!」


アリアは真顔でカップを置いた。

「……ただの夜型人間ではないのか?」

「違う!俺はこの目で見たんだ!牙みたいなやつも!」

「……お前、隣人を追い回してないか?」

「違う!これは真実を暴くための正義の行為だ!」


(――どう見てもストーカーだ)

アリアは外套の襟を正し、深い息を吐いた。

「まあいい。人が怪我する前に、一度調べてみるのは筋だろう」


友人二人は呆れ顔。だが若者は大喜びで、アリアを“協力者”とみなした。

喫茶店の主人はぼそりと呟いた。

「騎士様まで巻き込むとはな……」



第2話「真夜中の調査」


夜。

アリアは若者に連れられて、例の隣人宅へ。

カーテンの隙間から灯り。

窓辺には瓶が並び、中に赤い液体が満ちていた。


「見ろ!血だ!」

若者が声を潜めて叫ぶ。

アリアは眉を寄せ、扉を叩いた。

やがて現れたのは、青白い顔の中年男――隣人。


「な、何かご用ですか?」

「こちら、血の瓶は?」アリアは率直に問う。

男は目を瞬かせ、やがて恥ずかしそうに答えた。

「わ、私は錬金術師でして。血液保存の研究を……。病に効くとされる古代処方を試しているのです」

部屋の隅には薬草と器具、学術書の山。


若者は口を開けて固まった。

「……ワインじゃなくて、薬……?」

「もちろん、飲んだりはしません」

「……」


アリアは腕を組み、静かに頷いた。

「疑念は晴れた。――やや怪しい趣味だが、無害だ」

若者は不満げに「でも絶対怪しい……!」と呟くが、酒場で待っていた人々は大笑いした。


「おいおい、ただの学者じゃないか!」

「まったく、大げさに騒ぎやがって!」

誰かが樽を叩き、酒が注がれる。


アリアも真顔のまま一口だけ盃を受けた。

(……これで一件落着だ)



第3話「ハッピーエンドのあとで」


翌日。

町はすっかり平和を取り戻し、昨夜の酒盛りの話で笑い合っていた。

若者も友人たちに冷やかされ、「いや〜俺も早とちりだったかもな!」と頭をかいた。


アリアは外套を整え、旅立ちの支度をした。

「――ほどほどを守れば、町も安泰だ」

喫茶店の主人が笑顔でコーヒーを差し出し、みなで乾杯。

空気は和やか、大団円。



その夜。

町外れの林道を、一台の馬車が通りかかった。

月明かりの下、影がふいに飛びかかる。

御者が叫び声を上げた瞬間、赤い瞳が闇に浮かび、白い牙が光った。


――隣人の男だった。

彼は血の瓶を傾け、月に乾杯するように嗤った。


「……やれやれ。もう一晩、もたせてもらおう」


暗闇に馬の悲鳴。

そして遠くで、あの若者の声が響いた。

「だから言っただろーーーっ!!!」


幕。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ