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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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雪山の小さな冒険者たち ― 第5話「帰還と余韻」

雪をかき分け、村への帰路を進む。

父を背負い、兄妹を先導するのはアリアだった。

「吸え、吐け。――いち、に」

子どもたちはその声に従い、必死に歩調を合わせる。


やがて、遠くに灯火が揺れた。

村の松明だ。

吹雪の中を突き進んだ先に、温かい光が戻ってきたのだ。


「父さんだ! 帰ってきた!」

「無事だ!」


村人たちの歓声が広場に響き渡る。

人々が駆け寄り、父を抱き起こし、子どもたちを抱きしめる。

涙と笑いが混じり、雪の冷たさを溶かしていった。



その夜、村では小さな宴が開かれた。

焚き火の周りに集まり、温かいスープと酒が振る舞われる。

「騎士殿、貴女のおかげで家族は救われました」

「どうか、この盃を」


アリアは一口だけ盃を受け、口を湿らせる。

それから、静かに置いて言った。

「命は、ほどほどを守れば繋がる。……鐘を鳴らさずともな」


人々はその言葉の意味を測りかねたが、ただ深く頷いた。



翌朝。

空は晴れ、雪山は白く輝いていた。

旅支度を整えたアリアに、兄妹が駆け寄る。


「騎士さま! ありがとう!」

妹は凍った川で拾った小石を差し出した。

「お守りにして!」


アリアは受け取り、微笑むことはせず、ただ真顔で頭を下げた。

「……預かろう」


そして背を向ける。

雪を踏む音が遠ざかり、村の人々はその後ろ姿をいつまでも見送った。


白銀の道は、再び彼女を独り旅へ誘っていく。


(了)


後書き


今回の「雪山の小さな冒険者たち」は、映画『アラスカ/小さな冒険者たち』を下敷きにしたオマージュ編でした。

アリアが直接の敵と戦うのではなく、自然そのものと向き合う ことで彼女の「非致死・ほどほど」の在り方を描いています。


子熊を助けるという選択が、最後に親熊との対峙で命を救う伏線になる――

それはアリアの信条「鐘を鳴らさずとも命は繋がる」にぴたりと重なります。


また、兄妹と父の再会シーンでは「家族を想う気持ち」と「冷静に支える第三者」の対比が強調され、アリアが 旅人であり守護者である という立ち位置を再確認するエピソードになったかと思います。


彼女は村人たちから感謝されながらも、笑顔で酔い潰れることはなく、ただ真顔で旅立つ。

その硬さこそが、彼女の物語を支える一本の芯。


次回はまた趣の異なる土地と人々との出会いを描き、アリアの独り旅を続けていきます。


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