表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

748/811

ダンジョン30階層(前編) 「殺意は、形を取る」


 転移陣を抜けた瞬間――

 空気が、噛みついてきた。


 肌が、粟立つ。


 霧でも重圧でもない。

 これはもっと単純で、露骨なもの。


 殺意。


 リカルゾが反射的に拳を構えた。


 「……ッ!

  やべぇぞ、ここ……!」


 グレイは即座に剣を抜き、低く構える。


 「全員、散るな。

  ……来る」


 フェルナは、短く息を吸った。


 「30階層。

  ここからは“意思を読む”のをやめて、

  意志を折りに来る」



◆30階層の景色


 広間は、闘技場のようだった。


 円形の床。

 観客席のように段差のある壁。


 だが――誰もいない。


 中央には、一本の石柱。


 そこに刻まれている文字は、短い。


 ――生き残れ


 ミャラが喉を鳴らす。


 「……やさしく、ないね……」


 シルは目を細めた。


 「今までの階層が、むしろ異常だったのよ」



◆敵の出現:殺意の獣


 ドン……


 床が、鳴った。


 次の瞬間――

 石柱の影から、それが現れた。


 獣。


 だが、肉体が不完全だ。


 骨が露出し、

 筋肉の隙間を、黒い霧が満たしている。


 頭部は狼に近い。

 だが目は、赤くない。


 虚ろだ。


 ヨハネスが、かすれた声を漏らす。


 「……ヒソヒソ……

  あれ……生き物じゃない……

  “衝動”……」


 フェルナが即断する。


 「実体あり。

  でも感情がない。

  殺すことだけに最適化された存在よ」



◆第一接触


 獣は、吠えなかった。


 ただ――

 消えた。


 「ッ!?」


 次の瞬間、

 リカルゾの側面に、衝撃。


 「ぐぁっ!!」


 間に合ったのは、ダロッゾだった。


 身体を捻り、

 リカルゾを突き飛ばす。


 その位置に、

 獣の爪が深く食い込んだ。


 床が、割れる。


 グレイが斬りかかる。


 「遅い!!」


 剣は、確かに当たった。


 だが――

 手応えが、薄い。


 獣は、もういない。



◆フェルナの警告


 フェルナは叫ぶ。


 「間合いを信用しないで!

  あれ、距離の概念が違う!」


 シルが即座に結界を展開する。


 「空間転移じゃない……

  “意識の死角”を使ってる!」


 ミャラが、息を呑む。


 「……見てないと……来る……?」


 ヨハネスが、はっきりと言った。


 「……ヒソヒソ……

  “狙われてる”って……

  感じた瞬間……もう……遅い……」



◆本能の恐怖


 獣は、狙いを変える。


 今度は――

 ミャラ。


 シルが即座に割って入る。


 「させない!!」


 だが獣は、

 シルを無視した。


 空間を滑り、

 “一番弱いと認識した存在”へ直進する。


 フェルナが、杖を振り切る。


 「――星舒の光!!」


 光が弾け、

 獣の輪郭が、わずかに揺らぐ。


 それだけ。


 完全には、止まらない。


 グレイが歯を食いしばる。


 「……クソ。

  今までのやり方じゃ、足りねぇ……!」



◆30階層の宣告


 その時。


 闘技場全体に、

 低い振動音が響いた。


 石壁に、文字が浮かび上がる。


 ――防げ

   逃げるな

   殺せ


 フェルナは、即座に否定する。


 「違う。

  “殺せ”は誘導よ」


 シルが叫ぶ。


 「でも、防がなきゃ――!」


 ダロッゾが、前へ出る。


 「……俺が、受ける」


 リカルゾが即座に並ぶ。


 「一人で背負うな!

  今回は、正面から行くぞ!!」



◆前編、終わり


 獣は、再び消えた。


 だが今度は――

 全員が、来る位置を“予感”している。


 フェルナは、短く告げる。


 「いい?

  30階層はね――」


 杖を握り直す。


 「恐怖を超える場所じゃない。

  恐怖の中で、手を離さない場所よ」


 獣の殺意が、

 再び空間を裂いた。


◆後書き(短)


30階層前編は

「純粋な殺意」「理不尽な強敵」「役割の再定義」がテーマです。


・敵は理解させない

・隙は与えない

・“考える前に死ぬ”を押し付けてくる


次回、30階層中編。

ここで初めて、

彼らは本気の連携戦闘を強いられます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ