表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

743/811

ダンジョン28階層(中編) 「選ばれる声、残される沈黙」



 足音は、確実にこちらへ近づいていた。


 重いわけではない。

 だが軽くもない。


 ためらいを含んだ歩調――

 それが、28階層の空気をさらに張り詰めさせていた。


 フェルナは全員が揃ったのを確認し、短く告げる。


 「ここからは、全員で進めるとは限らない」


 ミャラが息を呑んだ。


 「……え?」


 グレイは眉をひそめる。


 「さっきの分断で終わりじゃねぇのか」


 ヨハネスは、いつもよりはっきりと首を横に振った。


 「……ヒソヒソ……違う……

  今度は……“選ぶ”……」



◆第二区画:三本の道


 広間の奥へ進むと、

 そこには三本の回廊が並んでいた。


 どれも同じ幅、同じ高さ。

 だが――空気が違う。


 左の回廊は、息苦しいほど静か。

 中央は、微かに魔力が渦を巻く。

 右は、足音がやけに反響する。


 フェルナは即座に理解した。


 「人数制限ね」


 シルが目を細める。


 「それぞれ……通れる“資質”が違う?」


 床には、薄く刻まれた文字があった。


 ――進む者は、己を知れ


 リカルゾが鼻で笑う。


 「また難しいこと言いやがって……」


 だがダロッゾは、低く言った。


 「……これは、罠じゃない。

  拒否でもない。

  分岐だ」



◆声なき問い


 回廊の前に立つと、

 頭の奥に――声にならない感覚が触れてくる。


 問いではない。

 命令でもない。


 ただ、

 「お前は、どこに立つ存在か」

 そう、確かめられている。


 ミャラは胸を押さえた。


 「……ミャラ……

  ちょっと、怖い」


 シルは屈んで、目線を合わせる。


 「怖いのは当然よ。

  でもね――逃げたい、じゃないでしょ?」


 ミャラは、こくりと頷いた。


 「うん……逃げたくは、ない」



◆選択


 最初に動いたのは、ダロッゾだった。


 無言で――

 左の回廊へ向かう。


 「……ダロッゾ?」


 フェルナは止めなかった。


 「静かな道……力を抑える者の道ね」


 ヨハネスは一瞬迷い、

 ダロッゾの背中を追った。


 「……ヒソヒソ……

  音が……少ない……」


 左の回廊は、二人を受け入れると、

 霧の膜が下りて閉ざされた。



 次に、グレイが前へ出る。


 中央の回廊を見つめ、剣に触れた。


 「……ここだな」


 リカルゾが肩を鳴らす。


 「お、俺も行くぜ!

  考えるより殴るタイプだしな!」


 フェルナは小さく笑った。


 「魔力と意思の道。

  前に出る者のための回廊ね」


 二人が足を踏み入れると、

 中央の道が淡く光り、閉じる。



 残ったのは――

 フェルナ、シル、ミャラ。


 右の回廊。


 音が反響し、

 歩く前から“存在”を主張してくる道。


 ミャラは不安そうに見上げた。


 「……ここ、うるさい」


 フェルナは頷いた。


 「観測と感情の道。

  見られることを拒まない者の道ね」


 シルは静かに息を吸う。


 「私たち向き、ね」


 ミャラは一瞬だけ躊躇い――

 それから、前を向いた。


 「……行く」



◆分かたれた後


 三本の回廊が完全に閉じ、

 28階層は再び静寂に包まれた。


 だが――


 その静けさは、

 始まりの合図だった。


 フェルナは歩きながら、確信する。


 (この階層……

  “誰を先へ進ませるか”を決めている)


 ヨハネスの言葉が、遠くで反響した気がした。


 ――ヒソヒソ……

 ――まだ……試してる……


 28階層は、

 仲間を信じることと、

 自分の役割を受け入れることを求めていた。


◆後書き(短)


28階層中編では

「選択」「資質」「役割分岐」を描きました。


・誰と進むかではなく

・どの“在り方”を選ぶか

・全員が同じ試練を受けない


次回、28階層後編では

それぞれの回廊で

“選ばれた理由”が突きつけられます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ