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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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雪山の小さな冒険者たち ― 第2話「吹雪と凍河」



吹雪は止む気配を見せなかった。

アリアは頭巾を深くかぶり、ひとつひとつの足跡を丁寧に追っていく。

雪に沈んだ小さな靴跡は、まだ風に消されきっていない。


(まだ近い。だが、子どもの歩幅だ。無理をすればすぐに体力を奪われる……)


遠くで木々が揺れる鈍い音。

吹きつける風が雪を舞い上げ、視界を奪っていく。

だがアリアの耳は、風の合間に小さな声を拾った。


「……兄ちゃん、寒い……」

「大丈夫だ。父さんを探すんだ……」


声の方角に向かうと、雪の吹き溜まりに小さな影があった。

兄妹が互いの手を握り合い、震えながら進んでいたのだ。


アリアは雪を踏みしめ、真顔で声をかける。

「お前たち、無茶だ。ここは子どもが歩く道ではない」

「……でも!」兄が睨み返す。「父さんを助けに行くんだ!」


妹は唇を噛みしめ、必死に兄の外套を掴んでいる。

アリアは彼らの視線を受け止め、短く答えた。

「ならば、歩調を合わせろ。――“いち、に”だ」


アリアが歩幅を示すように雪を踏む。

「いち、に。吸って、吐け」

子どもたちもぎこちなく真似る。

乱れていた呼吸が、徐々にそろっていく。



やがて一行は凍った川に出た。

表面は薄い氷で覆われ、雪に隠れて危うい。

兄妹は渡ろうとしたが、アリアが槍の石突きで氷を突き、止めた。


ぱきん――氷が割れ、水が顔を覗かせる。

「……落ちれば命はない」

アリアは枝を組んで即席の橋を作り、子どもたちを渡らせる。

妹が足を滑らせた瞬間、アリアは腕を伸ばして引き寄せた。

「――油断するな」

「……うん」


渡りきったあと、兄妹は肩で息をしながらも目を輝かせた。

「父さんも、この先にいるんだよな……」

「生きているなら、だ」アリアは真顔で答える。「見つけ出すまでは、決して止まるな」



さらに進むと、雪崩の小さな痕跡に行き当たった。

雪の壁が崩れ、道を塞いでいる。

そこに――不思議な足跡が混じっていた。


「……これは」

爪の跡。丸い肉球。

まだ新しい。小さな熊の足跡だ。


兄妹は顔を見合わせた。

「く、熊……?」

「大丈夫なのか……?」


アリアは雪に残る爪跡を見つめ、低く答えた。

「子熊だ。まだ近くにいる」

そして真顔で続けた。

「……親がいれば、こちらが侵入者になる。気を抜くな」


風が、雪の帳を揺らした。

その向こうに、冒険の続きが待っている。


(つづく)


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