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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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雪山の小さな冒険者たち ― 第1話「雪深き村の決意」


雪は音を吸い込んでいた。

旅路の先に現れたのは、白銀に埋もれた小さな村。屋根には厚く積もり、煙突から細い煙がまっすぐに立ち上っている。


アリアは外套を深く羽織り直し、村の門をくぐった。

(補給のために立ち寄るだけ……のつもりだったが)


広場には焦ったように声を張り上げる人々の姿があった。

「だめだ! 子どもだけで山に行くなんて!」

「待ちなさい、危険だ!」


雪道を駆けていく小さな影が二つ。

兄妹らしき子どもたち。背中には小さな背嚢を負っている。


「父さんを助けるんだ!」

「絶対に見つける!」


叫びながら、彼らは吹雪に溶けるように林道へ消えていった。


村人たちは慌てふためくが、雪道は危険すぎて追えない。

「吹雪が強くて大人は無理だ……」

「でも、あの子たちを放っておけるか!」


アリアは足を止め、深い息を吐いた。

(父が行方不明か……)

外套の裾から雪を払いつつ、真顔で言葉を落とす。

「私が追おう。慣れない者が行けば、命を落とす」


「騎士様……! ですが、あの山は……」

「吹雪の中を子どもが進むよりはましだ。――鐘を鳴らすより前に、手を打つ」


村人たちは顔を見合わせ、やがて誰かが深く頭を下げた。

「どうか……二人をお願いします」



林道はすでに雪に覆われていた。

足跡は小さく、まだ新しい。兄妹のものだろう。

アリアは槍を背に回し、歩幅を整えて追跡を始める。


(子どもは無鉄砲だ。父を思う気持ちは尊いが……雪山は情けを知らぬ)


吹雪が頬を刺し、耳がじんと痺れる。

遠くで風が木々を揺らし、軋む音が巨獣の呻きのように響いた。


アリアは心を鎮めた。

(“ほどほど”を忘れなければ、山は道を示す。子どもたちを見つけて、必ず連れ帰る)


雪の中に続く小さな足跡は、まだ途切れていない。

アリアは真顔のまま、白の帳の奥へと進んでいった。


(つづく)


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