ダンジョン27階層出撃編・その前
「誰が行く? 芋煮から一夜明け、作戦会議」
芋煮会の余韻がまだ身体に残る翌朝。
アリアンロッド中央区、第三会議室には
すでに何人もの影が集まっていた。
長机には簡易の地図と前回までの攻略メモ。
クリスタル製の照明が淡く揺れ、
“地下27階層・攻略会議” と書かれた札が掲げられている。
最初に口を開いたのはフェルナだった。
「さて。27階層に向かう前に……メンバーを決めましょう。
昨日の鍋で体力は十分。今日は頭を使う番よ」
机に肘をついたミャラが、手を挙げる。
「ミャラも行く! 27階層、まだ行ったことない!」
横でシルがため息をつく。
「あなた昨日、芋煮三杯食べた後すぐ寝たでしょ。大丈夫?」
「大丈夫! もう元気!」
ミャラの尻尾がぶんぶん揺れた。
どう見ても参加する気満々だ。
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◆ヨハネスの自己申告
ヨハネスは静かに手を上げる。
「……ヒソヒソ……ワタシも……行く……
あの階層……前回……気になる……ヒソヒソ……」
「何が気になるの?」
ヨハネスは淡々と答える。
「……ヒソヒソ……風……階層の風が……不自然……
“呼吸”が……合っていなかった……」
フェルナは軽く頷く。
「そう。前回は21階層秘匿扉に行ったせいで、
27階層には触れられなかった。
今回はちゃんと調べましょう」
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◆ハルドの参加表明
獣人の青年ハルドは、背筋を伸ばして言った。
「俺も行く。前の戦闘で剣の感覚が良くなった。
試しに行ってみたいんだ」
グレイが腕を組んで頷く。
「おれも行くぜ。あのダンジョン、悪くねぇ」
「……風呂と飯が最高だからじゃないの?」
とシル。
「それな!」とグレイは満面の笑み。
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◆リカルゾ&ダロッゾ、意外にも静かな主張
元リカントのリカルゾは、大きく手を振った。
「ヘイヘイ俺も行く! 体動かさねぇと、腹減らねぇ!」
ダロッゾは静かに言う。
「……左の通路。前回“何か”を感じた。
あれを確かめたい」
フェルナは目を細める。
「いい判断ね。あなたたちの嗅覚と感覚は頼りになるわ」
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◆愛菜の立場
愛菜はそっと手を挙げた。
「……わ、私は……どうすれば……?」
フェルナが柔らかく笑う。
「あなたは後方支援よ。
食料と水、それから帰還後の片付けをお願いしたい」
「……あ、うん。ありがとう……」
(本気で安心している表情だった)
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◆最終的な編成
フェルナは地図の前に立ち、指を一本立てた。
「では、27階層の正式メンバーは――」
・フェルナ(隊長)
・シル
・ヨハネス
・ハルド
・グレイ
・ミャラ
・リカルゾ
・ダロッゾ
彼女は続けて言った。
「今回は“探索”が目的。
敵の性質がわからない以上、戦闘は最小限に。
――でも、みんななら大丈夫」
ミャラが元気よく跳ねた。
「よし、行く! 27階層!」
ヨハネスはぼそり。
「……ヒソヒソ……油断は……禁物……」
ハルドとグレイが拳をぶつけ合い、
リカルゾとダロッゾは静かに頷いた。
こうして、27階層へ向かう“新チーム”が結成された。




