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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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芋煮会編その1 「風の温度と鍋の匂い」

 リリスブルクから戻った翌朝。

 アリアンロッド中央区――大庭園は、いつになく賑やかだった。


 ガレンが大声を張り上げる。


 「よーし! 薪組むのはオレの班!

  芋洗いは学園の坊主ども、急げッ!」


 その横で東堂が腕をまくり、鋭い眼光で作業台を確認する。


 「んー、こがぁに食材があったら、何百人でもいけるぜよ。

  ほいたら……ガレン、鍋の配置を変えるぜよ!」


 「おう任せろ!」


 二人の声が重なると、庭園の空気が一気に“祭り前の熱”に染まる。


 芋。里芋。山盛り。

 肉は東堂が仕留めた獣肉。

 野菜はガレンが農区から軽トラ(魔力車)で運び、

 学園生たちがカゴを抱えて走り回っていた。


 ピピが跳ねるように近づく。


 「ほらほら来たよ! 本当に芋煮会やるって!」


 ミャラは目を輝かせた。


 「ミャラ、いも食べたことない! わくわく!」


 フェルナが小さく笑った。


 「昔、森でも似たような鍋はあったけど……これは規模が違うわね」


 シルは芋を手にして眉を寄せる。


 「これ、人間世界の“郷土料理”とかいうやつ?」


 リリスは指を一本立てて軽く笑った。


 「正解。アリアンロッドの料理はね、

  “異世界混合”なのに、なぜか日本の味が強いんだよ」


 「たしかに」と林が遠くから頷く。


 「首相の影響がデカいからな……」



◆ヨハネス、芋を洗う


 その裏で、ヨハネスは静かに芋を洗っていた。

 動きは異常に丁寧。

 周囲の学園生たちはざわつく。


 「あの人……洗うの早くない?」

 「無言で怖い……」

 「けど、めっちゃ助かる……」


 ヨハネスは小声で呟く。


 「……ヒソヒソ……芋……敵ではない……

  だが……ぬめり……油断できぬ……」


 ミャラは「なんで芋と戦ってるの?」と首を傾げた。



◆以蔵、火起こし組に参加


 以蔵はガレンの隣で薪を組みながら不満げだ。


 「こがぁなこと、ワシにやらせる気かえ……」


 だがガレンは豪快に笑い飛ばした。


 「以蔵、おまえ火起こしはうまいからな!

  刀より薪の方が似合ってんぞ!」


 「だまらんかッ!!」


 そのやり取りに、学園生たちは爆笑していた。



◆豪善たち、僧組も参戦


 リリスブルクから、

 豪善・円真・宗蓮の三人がのそのそと現れる。


 豪善は鍋を見た瞬間、歓声を上げた。


 「なんやこれ! 本気の芋煮やないか!!」


 円真は手際よく包丁を取り出し、野菜の下処理を始める。


 「ほいほい、わいらも手伝うで。

  大将、あれ、あとで味見さしてな!」


 宗蓮は静かに火力を調整しながら呟く。


 「鍋の火も“呼吸”ですよ……強すぎず、弱すぎず」


 その姿を見た学園生がぽつり。


 「料理なのに寺みたい!」



◆リリス、酒と器を配る


 リリスは庭園の端に座り、酒の瓶を並べていた。


 「みんな、終わったら乾杯しようね。

  二十歳以上だけだけどねぇ」


 以蔵は手をすり合わせる。


 「おお……こがぁな祭り、久しぶりぜよ……」


 バロスとボリスも酒樽を持って参戦。


 「あー、これは飲まなきゃ始まらんわい!」

 「芋煮には酒じゃろ酒ぉ!」



◆ピピがひと言、そして…


 ちょっと高い場所で見ていたピピが大声を張る。


 「みんなーッ!

  芋煮会、もうすぐ始まるよーー!!

  準備できたら集まってーー!!」


 その声が空に広がり、

 アリアンロッドの人々がわらわらと集まってくる。


 フェルナが息をつく。


 「……なんて賑やかなんだ。

  アリアンロッドって、こういう文化なのね」


 シルとミャラが同時に言った。


 「好き!!」


 リリスは満足げに腕を組んだ。


 「よし。今日は全員、腹いっぱい食べて帰りな」



次は

《芋煮会編その2:開宴!味と笑いと伝説の具材》

(実食スタート・爆笑イベント・リリスの小話・豪善の謎の技・東堂の味変講座…)

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