魔境国アリアンロッド・外伝:学園創設編 その2 学園に集う者たち
鐘の音から三日後。
新設された「アリアンロッド学園」の校舎がついに姿を現した。
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■校舎の外観
中心街から少し離れた広場の一角。
白い石材と強化木材を組み合わせ、三階建ての講堂を中心に、左右に教室棟が伸びている。
背後には広い訓練場と魔法演習用の結界庭。
さらに地下には研究工房と資料庫。
驚くべきことに寮と食堂まで併設されており、オートマタたちが昼夜を問わず働いた成果だった。
「……建設速度が人間の常識じゃない」
ハルトが苦笑すると、近くで図面を確認していたイザベラが胸を張る。
「ふふ、我ら研究者とオートマタの誇りよ。しかも耐震、耐爆仕様だ。竜が暴れても壊れはせん」
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■開校式
講堂前の広場には数千人の国民が集まった。
子供から若者、農民、戦士、職人に至るまで、みな希望に満ちた顔で新しい未来を見つめている。
留学生としてやってきたのは、ルナが招いた魔王領の若者、そしてリリスが解放した奴隷の子供たち数十名。
壇上に立ったアリアが、改めて宣言した。
「――ここは、剣も、魔法も、学問も、誰もが等しく学べる場所です。
名も血筋も関係ありません。すべての人が、未来を掴むために集う場所。
それが“アリアンロッド学園”です!」
歓声と拍手が大地を揺らした。
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■教師たち
教壇に立つ顔ぶれは豪華そのものだった。
•オリビエ:剣術科。鋭い眼光で弟子たちを一喝する。
•シャルル:政務・経済学。「計算を間違えた者は、まず商売で損をして学ぶのだ」と冗談めかす。
•ハルト:魔法理論。結界を展開しながら、「危険を制御することこそ学問だ」と説く。
•リリス:自然学・体術。太極拳の型を子供たちに教え、「流れるように、しかし大地に根を張れ」と諭す。
•東堂:体育・格闘。実演でいきなりローキックを披露し、生徒も魔族も目を白黒させる。
•愛菜:国語・歴史。教科書を手に「ここは異世界。だからこそ“文字”を持つことは力になるの」と言い切る。
さらに魔王留学生が「魔力制御学」「戦術論」を持ち込み、文化交流が自然に始まっていた。
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■設備と日課
授業は一日三刻(約3時間)。
午前は学問、午後は仕事や鍛錬に戻れるよう配慮された。
•図書室:魔導書から地球由来の学術書まで収められ、オートマタが司書として管理。
•実験室:農業と錬金術の研究。ゴブリンの若者が「これで土の質を変えられるのか!」と目を輝かせる。
•食堂:魔族も人間も共に机を囲み、ボリス特製のシチューが振る舞われる。
•寮:シェアルーム形式で、亜人も魔族も共に暮らし、夜は各種言語や文化を交換し合う。
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■小さな事件
開校初日、広場の遊具で遊んでいた子供たちが口論を始めた。
「俺は人間だ! 魔族なんかと一緒に遊ばない!」
その声に場の空気が凍りつく。
しかし、リリスがすっと立ち、太極拳の構えをとった。
「流れる水は器を選ばない。
――君たちも、ここで学ぶ以上は同じ器の中の流れだ」
子供たちはぽかんとした顔のあと、照れくさそうに手を取り合い、再び走り出した。
拍手が自然と起こり、大人たちも互いに顔を見合わせて頷いた。
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■ルナと林の視点
その様子を見ていたルナが小さく笑う。
「……これなら、戦うより学び合う方が強くなれる」
隣で林が肩をすくめた。
「まるで天下一学園祭だな。……でも、悪くない」
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■エピローグ
夕暮れ。
広場に再び鐘が鳴り響く。
「学園は今日から、未来を紡ぐ者たちの庭だ!」
グルーの声に、全員が歓声で応えた。
空を見上げれば、幸福の花がひとひら舞い降り、まるで新しい時代の始まりを祝福するかのようだった。




