外伝:酒場会議編 その4「学び舎の夢を語る夜」
湯気の立つ鍋の匂いに包まれた酒場は、もうすっかり賑わいの場となっていた。
笑い声、杯の音、焼き鳥の香ばしい匂い。その中で、シャルルが再び静かに口を開く。
「――国の形を整えるなら、学びの場も必要ですな」
ハルトが頷き、真面目な口調で続けた。
「子らだけでなく、大人も学べる場所。読み書き計算、歴史、そして戦術や農業、鍛冶や薬学まで。知識を分け合う仕組みがあれば、国はより強くなる」
オリビエが杯をあおり、大きな声で笑った。
「それは良い! 戦の力だけでなく、知の力こそ国を豊かにする。兵を鍛える場も兼ねれば一石二鳥だな!」
リリスが少し考え込みながらも口を開く。
「……ならば、リリスブルクの外周に学び舎を。自然と共に学ぶ、そんな場が似合うと思うの」
アリアは黙っていたが、ふと呟いた。
「旅の中で多くの人に出会った。学べる場所があれば、もっと救えた命もあっただろうな……」
グルーが杯を掲げる。
「なら決まりだ! “学園”を作ろうではないか!」
愛菜が手を挙げ、苦笑しながら言った。
「ちょっと待って! 先生が足りなくなるよ。私も手伝うけど……俊傑や東堂、マキシ、それにルラとマリーヌにもお願いして、持ち回りにしないと」
東堂がにやりと笑う。
「……じゃあ、俺も誘いたい奴らがいるんだ。きっと役に立つ」
「また飲み会が増えるな」健太が肩をすくめ、
「けど、ええやん。ウチらの国らしいやり方や!」
「ふふっ……」ルナが笑みを浮かべる。
「民が笑って学べる場。まさしく理想じゃない」
杯がまた一斉に掲げられた。
「「「乾杯!!!」」」
――こうして、アリアンロッドに“学園”の設立が決まった。
それは新たな国の柱となり、子どもから大人までを支える知の城となる。




