リリスブルク編 その6 石階段の先に待つもの
霧の消えた石門を抜けると、そこには冷たい空気が漂う長い石の階段が続いていた。
壁には古代文字が刻まれており、淡く光を放って道を照らしている。
「……これは、古代の加護だな」
円真が文字を指でなぞり、低くつぶやく。
「進む者を導く光。だが同時に、心の弱き者を拒むものでもある」
「なら、堂々と行けばいいだけのことだろ!」
豪善は大きな声で笑い、先頭を歩いた。
後ろから白狐と山犬が警戒するように周囲を見回す。
やがて階段を登り切った一行の前に、巨大な石造りの広間が広がった。
天井には宝石のような結晶が埋め込まれており、昼のような明るさを放っている。
その中央には――荘厳な宝箱が一つ、鎮座していた。
「おおっ……まさにゲームみたいな展開だな!」
豪善が目を輝かせる。
「……気を抜くな。こういう時こそ罠が仕掛けられている」
円真が錫杖を構え直した。
リリスは一歩前に出て、宝箱に手をかける。
深呼吸をして、慎重に蓋を開いた――
中に入っていたのは一本の巻物と、透明に近い水晶の指輪だった。
「……指輪?」
リリスが手に取った瞬間、宝箱の底から光が弾けた。
同時に、広間の奥の壁が裂けるように崩れ、そこから黒曜石の巨像がゆっくりと立ち上がる。
「……やっぱり、ただじゃ済まないよな」
豪善が腰を落とし、構えを取る。
巨像の目が赤く光り、低い声が響いた。
《汝ら、ここに至る資格を得た。だが真の守護は未だ揺らがぬ。
この地を踏み荒らす者に――試練を与える》
「また試練か……でも、今度は本物みたいだね」
リリスは弓を構え直し、仲間たちに声をかけた。
「気を付けて。これは遊びじゃない。全力で来るはずだから」
白狐が低く唸り、山犬が牙を剥いた。
円真は霊符を広げ、豪善は炎を灯す。
そして巨像が両腕を振り下ろした瞬間、広間全体が震え、石の兵士たちが次々と壁から抜け出してきた。
「くっ……雑魚も一緒かよ!」
「試練だろうが何だろうが、突破するしかない!」
リリスは叫び、矢をつがえた。
こうして第二の戦い――真の守護者との対決が始まった。




