魔境国アリアンロッド・秘匿扉探索編 村探し
翌朝。
リリスを先頭に、アリア、ルーン、ハルト、僧侶の二人、そして犬の子が揃って外周の内側を進んでいた。
森は深く、外の魔境と違って既に一度“アリアンロッド”の結界に馴染んでいるためか、獰猛な魔物の気配は薄い。
だが鳥や小動物は多く、緑が濃い。
リリスは軽やかに木々を見上げながら、耳をぴんと立てる。
「風が通っているわ。ここなら夏でも涼しいでしょうね」
僧侶の一人が水辺に手を伸ばし、清らかな水をすくって目を見張った。
「こ、これは……清水だ……。このまま飲んでも体に染み渡るようだ」
ルーンが地面に手を置くと、小さな魔方陣が浮かびあがり、周囲の地形を簡易的に示した。
「地下に水脈が通ってる。畑にも使えるな」
ハルトが頷きながら言葉を添える。
「丘の上に建物を置けば見晴らしがきく。防御もしやすいだろう」
アリアは腕を組んで皆の声を聞き、最後に一歩前に出る。
「……よし、ここだ。ここを彼らの村としよう」
犬の子が駆け回り、僧侶二人は顔を見合わせ、涙ぐみながら頭を下げる。
リリスは小さく微笑んで言った。
「名前はまだ決めなくてもいい。けれど、この村が彼らの未来になる……。
いずれ“リリスブルク”と呼ばれる日が来るかもしれないわね」
アリアが笑いながら返す。
「ふむ、それも悪くないな。国の外縁を守る砦にもなるだろう」
こうして、新たな村の第一歩が刻まれた。




