魔境国アリアンロッド・秘匿扉探索編 幕間:魔王会議(後編) 〜決戦宣言〜
魔王会議が終わり、各々の軍勢は黒鉄の門をくぐって散じていった。
冷たく澄んだ夜気の中、残ったのはルナと、その側近たち。
「ルナ様……よくぞ、あの場で退かなかった」
羅刹丸が腕を組み、朱鬼丸は尻尾をぱたぱたと揺らす。
「退けば、あそこで“終わり”だった。
どれだけ罵られようと、わたしは立ち続けるしかないの」
ルナは吐息とともに夜空を仰いだ。星が冴え冴えと瞬いている。
その光の向こうに、仲間たち――アリア、ガレン、東堂の顔を思い浮かべる。
⸻
翌朝。
ルーンブルク。
報を受けたアリアたちは大広間に集まっていた。
愛菜が口をあけて呆然とした表情を浮かべる。
「ちょ、ちょっと待って……それって、まんま天下一武道会じゃん!?」
「まあ……呼び方はともかく」
アリアは苦笑し、杯を置いた。
「でも、魔王たちが正面から受け入れたなら、避けられない。
むしろ好機かもしれないな」
「ふふ……血が騒ぐぜ」
ガレンが立ち上がり、拳を鳴らす。
「久々に“正面から”ぶつかれるってわけだな!」
「俺も参加する」
東堂も手を挙げた。
「向こうの世界じゃ柔術もMMAもやってた。こっちの魔王連中に通じるか、試してみたくてな」
「……まさかの参戦表明か」アリアは呆れつつも笑った。
「いいだろう、ならば全員で挑もう」
⸻
数日後。
ルーンブルク大広場。
旗が掲げられ、円形の闘技場が組まれ、観客席には魔族も人族も入り混じって座っていた。
ざわめきは期待と緊張の入り混じった熱。
「これが舞台か……」
ルナは深呼吸し、視線を巡らせた。
父の姿も、遠くに見える。
魔王たちは次々と現れ、己が側近を従え、広場へ降り立った。
「始めようではないか!」
「魔王の座にふさわしき者を決める戦を!」
歓声が天を突く。
その瞬間――。
「おっせぇぞ! 俺らも混ぜろ!」
空から轟音。
黒鉄の翼を背負ったオートマタ勢が舞い降り、フル装備の姿で整列した。
「え……あれは、なんだ……!?」
魔王たちは目を見張り、息を呑む。
「こ、これが……ルーンブルクの戦力……?」
その驚愕を背に、アリアは静かに剣を抜いた。
「――なら、示そう。わたしたちの道を」
魔王たちと、ルーンブルク勢。
二つの力が、いまぶつかり合おうとしていた。




