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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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忘れられし研究室⑤ 武具の覚醒


ユリエとムウが新たな名を得た瞬間、墓の間の奥で長く閉ざされていた扉が静かに開いた。

重厚な石造りの回廊を抜けると、そこには古代の工房とは別格の「祭壇」が広がっていた。


中央には二つの台座。

そこに鎮座していたのは、以前は誰の手にも渡らなかった双武具——

《蒼剣アウロラ》と《紅魔剣インフェルノ》。


だが今、その刀身はまるで目覚めたかのように震えていた。

ユリエとムウが同時に歩み寄り、手をかざす。


「……我が名はユリエ・ネオ。蒼剣よ、再び我が手に」

「……余はムウ・アリアンロッド。紅魔剣よ、今一度余と共に」


次の瞬間、光と紅蓮の炎が迸り、二人の霊体が揺らめいた。

やがて武具は彼らの霊核と結びつき、半ば実体化した形で固定される。


エリオットが一歩進み、冷静に見届ける。

「……これで君たちは、ただの霊ではなく“戦力”だ」


だが二人は首を振った。


「否。蒼剣と紅魔剣は我らだけのものではない」

「この刃は……汝らの未来を護るためにある」


二つの武具が台座から浮かび上がり、光となって分かたれる。

それはアリアとルーン、そしてオートマタたちの前へと流れ込んだ。


ネオンの光が解析を始め、結論を告げる。

『双武具——分割複製可能。基幹をユリエとムウが保持し、

 アリアンロッドの同志にも適合版を供給可能』


「……つまり、国民にも使わせられる……?」

シャルルが息を呑む。


ルネオスは両手を震わせ、唇を噛んだ。

「これだ……! 我らが求めていた“未来を護る剣”が……!」


台座から放たれた光が周囲に降り注ぎ、アリアの手にも一振りの剣が形をとる。

それは蒼と紅を併せ持つ中庸の剣——

彼女だけの《調停のメディエイト》だった。


アリアは静かにその刃を掲げ、仲間を振り返った。

「これで……アリアンロッドはまた一歩、強くなれる」


ユリエとムウが同時に微笑む。

「ならば共に歩もう」

「余らの魂、汝らの未来に捧げよう」


研究室の深奥に眠っていた双武具は、今アリアンロッドのものとなった。


——だが、その瞬間。

壁の古代文字が一斉に赤黒く輝き始める。


ルネオスが顔を青ざめさせた。

「ま、まだ何か……! これは封印警告だ……!」


奥に続く闇の回廊から、低く重い咆哮が響き渡った。

それは“武具を守る最終の番人”の目覚めを告げる声だった。

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