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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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雨樋(あまどい)通りの影絵師




雨は、朝から一度もやまなかった。

屋根から屋根へ、雨樋が連なり、水は町の背骨をなぞって流れていく。ここは“雨樋通り”。細長い家々が並び、軒は短く、道は紙一枚ぶんほどの狭さでうねっている。通りのいちばん低い場所には大きな石桶が据えられ、雨水がそこに落ちるたび、ぽん、ぽんと太鼓のような音が響いた。


アリアは外套の裾を指で挟み、ぬかるみにはまらないよう拍を置いて歩く。剣は濡らさないに越したことはないが、今日は刃物の出番にはならないだろう――そういう匂いが町にあった。

湿ったパンの匂い、炭の匂い、紙のりの匂い。それから、油をしぼった皮の匂い。雨の日の町は、晴れの日よりも仕事の音がよく響く。針が布を刺す音、砥石に刃が触れる音、紙の束を整える音。アリアは、その全部が少しずつずれて、しかし最後には一つの拍に揃っていくのを聴いた。


通りの角で、子どもたちが黒い幕を張っている。木の枠に布をつけ、その向こうに灯りの箱を置く。影絵芝居だ。雨の町の名物らしい。

一人の少女が、濡れないよう紙束を胸に抱え、真剣な顔で脚立を開く。鼻にそばかす、額に濡れた前髪。彼女がふっとこちらを見て、アリアの腰の剣に目を丸くした。


「旅の人……? 影絵、見ていきますか? お代は、雨粒ひとつぶん」


「雨粒は払い過ぎかもしれない」


アリアが笑うと、少女も笑った。

「じゃあ、笑顔ひとつぶんで」


交渉成立。アリアは幕の近くの樽に腰を下ろした。樽は雨で少し膨らんでいる。向かいの屋根から、雨樋がS字に曲がっていて、ぽとり、ぽとりと同じ位置に落ちる滴が、幕の端をわずかに揺らした。


「わたし、ルルっていいます。影絵の師匠――といっても父ですけど――が病気で、今日はわたしがやります」


「灯りの箱は?」


「ここ。……でも、困ってることがあって――」


ルルが声を落とした。

「“黒狐くろぎつね”が出たんです。昨夜から、道具がちょっとずつなくなる。切り紙の型、細工バサミ、糸……幕の端に黒い泥がついてて、足あとみたいな」


黒い泥。アリアは幕の端を覗く。確かに、細い線状の泥が乾いてこびりつき、雨に濡れてもなかなか落ちない。狐の足あとに似せてあるが、踵の形が妙だ。人の指先で描いたような、ためらいの傷が混じっている。


「黒狐は、本当に狐かもしれないし、狐の仮面をかぶった誰かかもしれない」


「みんなは“泥棒”だって。影絵をやめろって言う人もいる。雨の日は火も危ないって」


「火は見てる人が多ければ多いほど安全になる。――やめる前に、確かめよう」


アリアは幕の裏に回り、灯り箱の位置を指先で測った。油皿は浅く、芯は短い。子どもが扱っても危なくない工夫がしてある。箱の背には、糸巻きがひとつ、空っぽになってぶら下がっていた。


「糸はどこにあった?」


「ここに。朝、消えてて……」


そのとき、通りの奥から、商人風の男が駆けて来た。雨をものともしない革靴。口髭は手入れが行き届いているが、息は少し切れている。


「ルル! また道具がなくなったって、本当か。影絵は中止だ。怪我でもされたら、あたしの店の前で揉め事だぞ」


「でも、みんな楽しみに……」


「楽しみよりも火事が怖い!」


男――サムエルと呼ばれていた――は腕を組み、幕を乱暴にめくろうとした。アリアは静かに彼の手首に指を当て、止めた。掴まない。触れるだけ。


「火事は怖い。だからこそ、火を見てる目を増やすのがいい」


「誰だ、あんた」


「通りすがり。剣は抜かない。代わりに目と耳を貸す。――黒い泥の足あと、あなたの靴にも少し」


サムエルはぎょっとし、足もとを見た。革靴の縁に、細い泥の線が乾きかけている。彼は顔を赤くした。


「誤解するなよ、これはさっき、滑って……!」


「泥をつけたのはあなたじゃない。あなたはここで足を止めない人だ。泥は止まる人がつける。……これは“誰かが、ここでしゃがみ込んだ”痕」


アリアは幕と樽のあいだ、狭い隙間に膝をつき、木枠の裏に指を滑らせた。何かが指先に触れる。薄い紙だ。引き出すと、狐の耳を模した切り紙。ところが、それには点々と針の穴が開いている。糸で吊るし、風に揺らせば影が生きる――そういう型だ。


「これは……父の型!」


ルルの顔が輝く。サムエルが眉をひそめる。


「誰かが、返した?」


「返したというより、“隠した場所から出た”。――黒狐は“盗る”ばかりじゃない。返してもいる。道具はどこか、別の場所に少しずつ移動してる。雨の音に紛れて動ける時間は長い。なら、黒狐は“舞台が好きな奴”だ」


「犯人は影絵の客の中?」

サムエルの声は疑いで硬い。


「客なら、もっと派手に持っていく。糸も鋏も、まとめて。……細切れに移すのは、“置き場を変えたい誰か”。――たとえば、雨漏りから遠ざけたい人」


アリアは天井を見上げた。屋根の継ぎ目が古く、雨樋の曲がり角から水がぽたぽた落ち、幕の上の梁はりを伝って、ちょうど道具箱の位置に滴が落ちる――そんな筋が見えた。

「昨夜の風向きなら、ここが濡れる。道具が湿れば、紙は波打つ。型は駄目になる。だから“どこかへ”移した。……見つけられないのは、“見つけてほしくないから”」


「誰がそんな……」


ルルが息を呑む。アリアは視線を、幕裏の隅に落とした。木箱の陰。そこに、子猫が二匹、丸くなっている。毛は濡れて、黒く見える。黒狐――黒い、細い足あと――。


「犯人は、猫?」


「半分」


アリアは笑った。子猫の首には細い紐が絡まり、そこに紙片や糸がちょっとずつ絡んでいる。遊んでいるうちに持っていってしまったのだろう。だが、猫だけが犯人ではない。猫が入れる隙間を開け、猫に糸を渡したのは誰か。

アリアは樽を指で叩き、音の高さを聴いた。ぽん、ぽん。二拍置いて、ぽん。水位の変化は少し。……樽の裏に小さな穴がある。穴は布でふさがれているが、誰かが手を突っ込みやすいように、近くに箱や踏み台が置かれていた跡が泥に残っていた。


「猫を通した“人の手”がある」


サムエルが険しい顔で周囲を見回す。

「誰だ、そんなこと……」


「問い詰めるより、舞台に上げたほうがいい」


アリアは幕をぱん、と軽く叩いた。雨音が一瞬だけ遠のき、子どもたちが近づく気配がする。ルルは戸惑い、しかし頷いた。

「やります。――お客さん、始まりますよ!」


雨樋通りの人たちが、桶のふちや軒の下に集まってきた。老人が杖を鳴らし、若い女が赤子を抱き、職人たちは濡れた手を布で拭いた。サムエルも腕を組んだままだが、視線は舞台に固定されている。


灯りが入る。幕に、狐の影がすっと走る。ルルの手つきは滑らかだ。紙はよく切れている。声は小さいが、雨が吸ってくれる。

物語は“狐が雨を集めて川を渡る話”。狐は空の穴から雨粒を集め、尻尾の先に結び、橋にする。橋――。アリアは小さく笑った。ならば今日は、橋をもう一本作ればいい。


狐が橋を渡り切る場面で、アリアは背後に回り、幕の下の隙間に手を差し入れた。布を持ち上げず、指先だけで箱の陰を探る。濡れた紙、丸まった糸巻き、細工バサミ。全部、猫の寝床のそばに整然と積まれている。整然――猫の仕業だけではない。

アリアは薄い紙片を一枚つまみ、そっと光にかざした。そこには小さな字がびっしりと書かれている。“湿りを避けること。灯り箱は左寄りに。猫には糸を渡すな。道具箱は高い棚へ”。

手習いの癖がある字だ。罫線を引かずに真っ直ぐ書く自信。インクの“止め”が強い。――職人の字。


「父さん……」


ルルが小さくつぶやいた。アリアは頷く。病床の父が、雨を嫌って道具を“移し”、間に合わせに猫を見張り役にした。しかし誰にも言わなかった。言えば叱られるから。あるいは、言う前に治そうと思ったのかもしれない。

けれど、その“移し”が行き過ぎて、みんなには“盗られた”に見えた。


「黒狐は、舞台の味方だ」


アリアは低く言い、紙片をルルの手に戻した。

「父の段取りは正しい。でも、やり方が伝わってない。――伝え方を、橋渡ししよう」


幕の外で、ざわめきが起きる。狐の影が二つになったのだ。アリアは幕の後ろから、紙片で作った小狐をすっと差し込み、ルルの狐に寄り添わせた。会場から小さな笑い声と拍手。

その笑いが切れないうちに、アリアは子猫を二匹、そっと抱え上げた。驚かせないよう、腹の下を支え、耳元で雨音をささやく。猫は丸くなったまま、ほとんど動かない。首の絡まった紐を解き、糸巻きを指で取る。

猫に代わる“見張り役”を立てればいい。アリアは通りの奥にいる大柄な男――桶屋のブラムに目を向けた。彼は腕が太いが、声は驚くほど小さい。いつも雨の音を聴いているからだろう。


「ブラム。舞台の裏で、猫の代わりに座っていてくれないか。道具箱を高い棚に。糸はこの袋へ。――サムエル、あなたは火の見張り。灯りの油が減ったら、声を出さずに指を立てて合図」


「なぜ俺が」


「店の前で揉め事が嫌いだろう。いちばんよく見える場所にいるのは、あなたの店の軒だ」


サムエルはむっとしたが、やがて肩を落とし、軒先の柱にもたれて腕を組み直した。

ブラムは、猫を受け取ると頬に当て、目を細めた。「ぬくい」。それから、言われたとおり高い棚に箱を移し、糸を袋にまとめ、椅子にどっかり腰を下ろした。椅子がきしむ音が、雨に吸われて消える。


芝居は続く。狐は雨をたばね、影の橋を渡り、人間たちの家々へと灯りを届ける。子どもたちが前のめりになり、老人は杖の先で拍を取り、赤子は灯りの揺れを目で追っている。

クライマックスの直前、突然、強い風が吹き、雨樋の曲がり角が外れた。樋からあふれた水が、まっすぐ灯り箱に落ちる――。


「危ない!」


誰かが叫ぶより早く、アリアは外套を脱ぎ、空中で蛇のようにひねって樋から落ちる水筋を受け止め、布の端で別の樋へ誘導した。布はずぶ濡れだが、拍は崩れない。

ブラムが立ち上がり、肩で樋を支え、サムエルが店から長い箒を持ってきて、樋の曲がりを仮に押さえた。誰も大声を出さない。雨の音に負けない合図は、腕の動きと、指の数だけで足りる。


芝居は――続く。ルルの声は震えなかった。狐は無事に橋を渡り、雨の町に“乾いた場所”を一つ作ってみせた。幕が閉じたとき、通りは拍手で満たされた。雨の日の拍手は、なんだか少し柔らかい。


「黒狐、退治、ってやつか」


サムエルが照れくさそうに言う。アリアは首を振った。

「退治ではなく、仕事の段取りを“橋渡し”しただけ。――それと、猫を見張り役から解任した」


ルルは紙片を胸に抱き、目を潤ませた。

「父さんの字、間違いなく父さん……。どうして言ってくれなかったんだろう」


「言う前に良くしようと思った。よくあることだ。――伝えることも仕事だって、次はあなたが父に教えればいい」


「はい」


そのとき、通りの上手から、ひときわ甲高い声が響いた。

「黒狐を捕まえたぞー!」


みんなが振り返る。魚屋のばあさんが、両手に大きな木の箱を抱えて立っている。箱の中では、ずぶ濡れの黒い犬――いや、犬に見える大きな雑種――が情けない顔でこちらを見ていた。首には、紙片や糸や小さな鈴が、これでもかと結びつけられている。

通りは一拍の静寂ののち、どっと笑いに崩れた。


「この子、いつも裏手の納屋に入ってきて、糸で遊んで、紙を持っていって……黒狐って、これのことじゃろう!」


ばあさんは誇らしげだが、犬のほうは目をまるくしている。舌が半分出て、尻尾は雨に貼りついて垂れたまま。

アリアは犬の首もとに手を伸ばし、結び目を解いた。糸は濡れると固くなる。歯で切らずに、指の腹でほぐす。犬は嫌がらず、むしろ嬉しそうに喉を鳴らした。


「黒狐は三匹いたわけだ。猫二、犬一。……人はゼロ。よかった」


サムエルは頭を掻いた。「疑って悪かった」。

ルルは笑いながら泣いた。ブラムは犬の頭を撫で、犬は雨を撒き散らしながら全身で喜びを表した。通りの人たちは、雨の中で笑い、拍手をした。拍手はまた柔らかく、しかしさっきより少し大きい。


「ただ、ひとつ問題が残った」


アリアが言うと、みんなが一斉にこちらを見る。

「樋の曲がり角が外れている。――このままだと、次の芝居のたびに瀑布ばくふだ」


「任せろい!」


ブラムが胸を叩いた。

彼は納屋から太い竹と縄、古い金具を持ってきて、濡れた屋根にするすると上った。雨の日の屋根は滑る。彼の足裏は、ぴたり、と瓦の凹みに合う。職人の足だ。

サムエルは店から油紙と布を持ってきて、結び目を覆う。ばあさんは犬に鈴をつけ直し、「もう泥棒はしちゃだめだよ」と説教する。説教は、犬にはほぼ通じないが、犬はうんうん頷いた(ように見えた)。


アリアは、樋の角度と雨の流れを見ながら、竹の支えの位置を指で示した。

「ここに“支え木”を一本。雨の重みは、ここで分ける。そうすれば、灯り箱に落ちない」


支え木。橋渡しと同じ、力を分けるための道具だ。ブラムは「なるほど」と声を出し、縄を二度ねじり、竹を梁に噛ませた。たわみが消え、雨水はふたたび素直に樋へ戻っていく。


「よし」


雨は弱くなった。芝居がもう一幕できる時間が残っている。ルルは父の型を乾いた布で拭き、糸を新しい袋に入れ替え、灯り箱の位置を、紙片の指示どおり、すこし左へ寄せた。

アリアは外套を絞り、手の甲の水滴を払ってから、幕の前に戻った。


「お代は、笑顔ひとつぶん、でよかったな」


「今のは二つぶんです。――だって、黒狐が三匹もいたから」


ルルが舌を出す。アリアは肩をすくめ、樽の上に座り直した。

二幕目は、狐が“雨をやませる”話だった。狐は空に穴を縫い、雲の端を結び、最後にひと声、鳴く。すると、雨が糸を引くように細くなり、樋の音がだんだんと小さくなっていく。

不思議なことに、現実の雨も、まるで芝居に従うかのように弱くなっていった。人々は顔を上げ、空を見た。雲の切れ目から、薄い光が降り、石桶の水面に白い輪が広がる。


幕が閉じると、通りはため息を吐き、次に笑い、そして、誰からともなく帽子を振った。雨の日の帽子は重い。けれど、振ると軽くなる。


「父さんに、言います。段取りを“ちゃんと書いて”、みんなに読んでもらうって」


ルルの目は晴れていた。アリアは頷く。

「書くだけじゃ足りない。読めない人には見せる。今日の芝居みたいに。――“伝える段取り”も段取りのうち」


「はい」


サムエルが咳払いをした。

「その……さっきは言い過ぎた。火は怖いが、目がたくさんあれば、怖くなくなる。次からは、店の軒を“見張り台”にしていい。お代は、雨粒ひとつぶんでどうだ」


「それは払い過ぎだ」


アリアが同じ返しをすると、通りに笑いが走った。

ブラムが、犬を抱えたばあさんに何か囁き、ばあさんが目を丸くする。

「この子、あんたが連れてっていいってさ。――ルル、看板犬だ。黒狐改め“黒狗くろいぬ”。糸は渡すなよ」


「渡しません!」


ルルは犬の首に、今度は鈴ではなく、小さな布のリボンを結んだ。犬は誇らしげに胸を張り、――が、次の瞬間、器用に尻尾で自分のリボンを追い始め、通りの笑いを一段高くした。


アリアは立ち上がり、外套を肩にかけた。

「そろそろ行く」


「もう行っちゃうの?」


「旅の人は、橋を渡したら、次の川へ」


ルルは頷いた。アリアは樋の新しい支え木を見上げ、雨の細い糸がそこを静かに伝って落ちるのを確かめた。

サムエルが、紙包みを差し出す。中には、干した柑橘の皮と、砂糖をまぶした生姜。雨の日に喉を守る“商人の薬”だ。


「受け皿、てのは、あんたのことだな」


「受け皿?」


「町の心配ごとを、一度受けて、薄く広げて返す。――そういう人だ」


アリアは曖昧に笑い、紙包みを鞄にしまった。

「受けたままにしないこと。必ず返すこと。それだけは気をつけてる」


雨はほとんど上がっていた。雲の縁がほどけ、光が樋の水滴に小さな虹を作る。

アリアはルルに手を振り、ブラムに会釈し、サムエルに軽く笑って、雨樋通りを後にした。背中で、鈴の音と犬の足音と、紙を切るシャッシャという音が混ざる。拍が揃っている。

振り返らない。町の拍が揃ったなら、旅人はそこから外れるだけでいい。それがいちばんの“橋渡し”だ。


通りを抜け、丘の小道に入ると、植え込みの隙間から、さっきの子猫が二匹、ぴょこんと顔を出した。アリアがしゃがむと、猫たちは彼女の外套の裾にもぐり込み、雨の匂いを嗅いだ。

「もう糸は持っていかないこと」


猫たちは“にゃ”とも言わず、代わりにくしゃみをした。

アリアは笑い、外套を軽く振って猫を送り出し、空を仰いだ。雲は薄く、風はやさしい。

鞄の中で、生姜砂糖がこつんと鳴る。その小さな音が、遠く離れても雨樋通りと自分をつなぐ“拍”になるだろう。


旅は続く。

橋を架け、支え木を立て、受け皿になり、そして手を離す。

剣が要る夜もあるだろう。けれど今日は、紙と糸と、猫と犬で十分だった。


――道は、雨上がりの匂いがした。


(了)


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