アリアンロッド発展の章 第17階層編 第1話:影と幻の門
夜が明け、集落に朝の光が差し込む。アリアンロッドの広場では、再び階層探索へ挑むための準備が整えられていた。
「さて……第十六階層か」
アリアは腰の刀を確かめ、仲間たちを見渡す。昨日の宴の余韻を残しつつも、誰もが気を引き締めていた。
シルが跳ねるように前に出る。
「今度はどんなとこだろうな? ワクワクするぜ!」
「油断は禁物よ」フェルナは矢筒を整えつつ、冷静に釘を刺した。
「過去の階層を思い出しなさい。仕掛けや幻影が待っている可能性もあるわ」
⸻
階層の入口
巨大な石造りの門が前に立ち塞がっていた。表面には複雑な文様が刻まれ、まるで動いているかのように揺らめいて見える。
「幻惑系の魔法陣か……」とシャルルが分析する。
「触れ方を誤れば、内部に迷い込んだまま出られなくなる危険がある」
オリビエはボロボロの剣を預けたばかりだが、その代わりに簡素な長剣を手にしていた。
「……剣の質に頼らずとも、技で切り抜ける。それが騎士というものだ」
ハルトはその背を見つめ、胸を張って続いた。
「自分も後に続きます!」
⸻
最初の試練
門をくぐった途端、一行を包むのは濃い闇。
視界は閉ざされ、足音すら吸い込まれていく。
――だが次の瞬間、仲間たちの姿が二重三重に分かれて見え始めた。
「幻影だ!」フェルナが叫ぶ。
「本物と偽物を見分けなきゃ、同士討ちになる!」
偽のアリアが刀を振り下ろし、偽のシルが双剣で跳ね回る。
混乱の中でアリアは深呼吸し、静かに構えた。
「……落ち着け。幻は必ず綻びを見せる」
刀を納めたまま、足捌きだけで偽の影をかわす。その動きは合気道の「入り身投げ」の型を思わせる。
やがて――偽物の幻影が霧のように崩れ落ちた。
「やっぱりアリアさんだ!」とマキシが叫ぶ。
「俺たちも惑わされるな!」
⸻
戦いの予感
闇の奥からは、さらに不気味な唸り声が響いてきた。
「……ヒソヒソ……来る……敵が……」ヨハネスが低く呟く。
シルが短剣を構え、フェルナが矢をつがえる。
「おおっと、今度は幻影じゃないっぽいな!」
「ええ、本物よ。さぁ、腕試しの始まりね」
アリアは刀を握り直し、仲間に短く告げた。
「――行くぞ。次の階層の洗礼を、受け止めてやろう!」




