アリアンロッド発展の章 第十六階層編 第1話:音と影の回廊
転移陣を抜けた瞬間、一行はひやりとした空気に包まれた。
壁も床も黒曜石のように光を吸い込み、足音が妙に響く。天井から滴る水滴の音すら増幅され、まるで誰かに囁かれているようだ。
「……音が反響している。気を乱されるな」
アリアが声を落として仲間に伝える。
しかしその声に応じるように、闇から影が立ち上がった。
剣を構えた黒い兵士――シャドウソルジャー。
続いて、青白く燃える光の塊――ウィスプゴーストが漂い出す。
「出たな……!」
シルが短剣を抜いて飛び込むが、刃は虚空を斬り抜けただけ。
「くっ……! 当たらない!?」
ヨハネスも剣を振るうが、影は煙のように散ってすぐ再び形を取る。
「……ヒソヒソ……厄介だ……」
オリビエは盾を構えるが、背後から伸びた影が絡みつく。
「ぐっ……! 力を奪おうとしているのか!」
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「物理は効きにくいな……!」
アリアは気を練って入り身投げを放ち、辛うじて影を払い落とすが、効力は長く続かない。
「これでは数が多すぎる……」
その時、静かに声が上がった。
「……任せてくれ。ここは――俺の領分だ」
杖を構えたエリオットの目が、闇に輝いた。
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黒き魔法陣が床に浮かび上がる。
「来い……リッチ!」
重々しい風と共に、死霊の門が開いた。
現れたのは、骸骨とは比べ物にならない威容を持つ、黒衣の魔導士。眼窩には緑の炎が宿り、手には死霊の杖。
「リ、リッチだと……!?」
シャルルが思わず息を呑む。
リッチが杖を振るうと、影兵たちを縛るように鎖が迸り、次の瞬間には死霊の炎が炸裂した。
青白いウィスプゴーストが次々と焼き払われていく。
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「すっご……!」シルが後ろで目を丸くする。
「……ふふふ、頼もしいじゃないか」マリーヌは冷ややかに笑う。
「……ヒソヒソ……これなら……戦える……」ヨハネスは頷いた。
以蔵の霊体がふわりと現れ、抜刀する。
「ようやったなエリオット。ならばわしも――斬気をもって助勢しよう!」
幽玄の刀が閃き、迫る影を一閃。霊体は裂かれ、悲鳴を上げて消滅した。
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「……よし! みんな、体勢を立て直せ!」
アリアの号令に仲間が呼応する。
エリオットとリッチ、以蔵の剣が霊体を押し返し、フェルナの光矢が追撃。
物理組は守りを固めつつ機を待ち、次第に戦況は一転していった。
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影と音が支配する回廊。
だが今、その闇を切り裂くのは、ネクロマンサーと幽玄の剣士の力。
アリアは剣を構え、息を整えた。
「ここからが本番だ――進むぞ!」
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次回予告
第十六階層編 第2話:影を裂く剣、導く矢
リッチの力と仲間の連携が試される次の戦闘。
エリオット、そしてアリアの「止める剣」が再び光を放つ――。




