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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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アリアンロッド発展の章 第十五階層編 第4話:リカントとの邂逅

腐蝕の溜まり場を抜け、石殿の奥へと進むと、空気が一変した。

 広間の中央に立つのは、毛並み逆立つ獣人の巨戦士――リカント。

 瞳は血に濡れ、咆哮とともに爪を振りかざす。


「うわっ……でけぇ……」マキシが後ずさる。

「気をつけて! 普通のリカントじゃない!」フェルナが声を張る。

「……彼、理性を失いかけてる」ルーンの声が震えた。


 リカントは牙を剥き、仲間へ突進。

 リマが盾を構え、衝撃を正面から受け止める。ガァン!

「くっ……重い!」


 すかさずアリアが踏み込み、リカントの腕を取り――入り身投げ。

 巨体が床に叩きつけられるも、すぐに立ち上がる。まるで痛みを感じていない。



「殺さないで!」ルーンが叫んだ。

「彼はまだ……完全には堕ちていない!」


 その声に、アリアが動きを止める。

「ルーン、行けるか?」

「……試す!」


 ルーンは杖を握りしめ、リカントの瞳をまっすぐに見つめた。

「あなたの痛み……私に預けて!」


 闇魔術が影を伸ばし、リカントの胸へ繋がる。

 ルーンの心に流れ込むのは、孤独と怒り、群れを失った絶望。


「……こんなにも……!」ルーンが歯を食いしばる。

「三拍で切れ!」トットが叫ぶ。

「タン、タン、タン……ピタッ!」


 痛みを闇に吸い取り、ルーンは大地へ返した。



 リカントの瞳が揺らぐ。

 まだ荒ぶる呼吸の中に、かすかな理性が戻っていた。


「……お前……」

 低い声が漏れる。

「俺の声が……聞こえるか?」ルーンが問いかける。

「……ああ……」リカントは膝をついた。「俺は……ただ、守りたかった……」


 その言葉に、ルーンは微笑んだ。

「じゃあ、これからは一緒に守ろう。アリアンロッドという居場所を」


 リカントは深く頷き、荒い息を吐いた。

「……導いてくれるなら、従おう」



 アリアは剣を収め、ルーンの肩に手を置いた。

「よくやったな。お前の力がなければ、彼は倒れるだけだった」


 ルーンは息をつき、額の汗を拭う。

「まだ……次がある。ミノタウロスも待ってる」


 闇の奥から、重い足音が響いた。

 ――ドォン……ドォン……


 壁を揺らす巨躯の影。次なる試練が迫っていた。



次回予告


第十五階層編 第5話:ミノタウロスの試練

力の化身、迷宮の牛頭が立ちはだかる。

ルーンのティムが、再び仲間を増やす鍵となる。


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