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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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アリアンロッド発展の章 第十五階層編 第2話:虚ろの石殿の謎解き

十五階層に降り立った一行を迎えたのは、冷え切った石の空気だった。

 どこまでも広がる灰色の石造りの広間。壁には古代の文様が刻まれ、天井は高く、声を出すと反響が幾重にも折り返してくる。


「……ここは、やけに静かだな」

 シルが耳をぴくりと動かし、辺りをうかがう。

「いや、静かどころか……虚ろな感じがする」マキシが剣を構えつつ呟く。


 その言葉どおり、石殿はまるで空洞の心臓のように虚無を響かせていた。



「見て!」リマが指差す。

 広間の中央には、巨大な石像が立っていた。

 人の形をしているが顔はなく、胸元には四つの凹み。


「……これ、仕掛けじゃない?」ヨーデルが目を輝かせる。

 彼はすぐに壁へ駆け寄り、古代文字をなぞり始めた。

「“声は扉をひらく。心をそろえ、響きを合わせよ”……だって!」


「心をそろえる?」カテリーナが薬箱を抱えたまま首をかしげる。


 そのとき、広間に再び虚ろな響きが広がった。

 ――タン……タン……タン……。

 まるで、足音のようなリズム。



「これは……音の試練かもしれない」フェルナが呟いた。

「声を合わせて、リズムを揃えろってことだろ」シルが短剣をくるりと回し、軽く足でタンと打つ。


「よし、やってみるか」アリアが仲間を見回した。

「ヨーデル、号令を頼む」


「任せて!」

 ヨーデルは胸を張り、みんなの前に立った。


「三拍子だ! 俺の合図で、“タン・タン・タン”って石床を踏むんだ!」



「せーの!」

 ――タン! タン! タン!


 最初はずれた音が響き、壁に不協和音が跳ね返る。

「ちょっ、マキシ遅れてる!」

「うるせぇ! お前が早いんだよ!」

「ふふ、落ち着いて」リマが二人の間に立ち、テンポを合わせた。


 もう一度。

 ――タン! タン! タン!


 今度は揃った。虚ろな広間に心地よいリズムが響き渡る。

 その瞬間、石像の胸の凹みが光り始めた。



「やった!」ヨーデルが歓声をあげる。

「なるほど……心を揃えるって、こういうことか」フェルナが感心して頷いた。


 四つの凹みには光の玉が浮かび、次第に石像全体が明るくなる。

 やがて、大地を震わせるような音とともに――


 ゴウン……ゴウン……


 奥の扉が開き、暗い回廊が顔をのぞかせた。


「突破成功だな!」アリアが剣帯を直す。

「よっしゃ! さすが俺ら!」マキシが拳を突き上げる。


「ふふ……でも、ここからが本番よ」リマが真剣な顔で言う。

「この先には、まだ何か試練があるはず」


「……楽しみだな」ヨーデルの瞳が、また好奇心で輝いた。


 一行は灯りを掲げ、奥の闇へと足を踏み入れていく。



→ 次回「第3話:腐蝕の溜まり場」

うじゃうじゃと湧き出るポイズンスライムの群れに、子ども組とルーンたちが挑む!


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