アリアンロッド発展の章 第十五階層編 第1話:魔物マンションと新たな挑戦
十四階層から戻って数日、アリアンロッドの集落はまた一段と賑やかになっていた。
その理由は――仲間になった魔物たちの数が増えすぎたからである。
「さすがにこれ以上は、外の小屋じゃ無理だな」
バロスが頭をかきながら言う。
「夜中に暴れだすやつもいるし、共生するならきちんと棲み分けを考えねぇと」
集落の広場では、ルーンがティムした魔物たち――狼型や鳥型のもの、果ては大きなカエルまで――が楽しげに跳ね回っていた。
その姿にピピたちゴブリンの子どもは大はしゃぎ。だが、寝床を確保するのは切実な問題だった。
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「そこで、俺が考えたのがだな!」
胸を張って声を上げたのはボリス。
「魔物たちが安心して暮らせる集合住宅――名づけて、魔物マンション計画!」
「マンション……?」ヨーデルが首をかしげる。
「……え、でっかい家ってこと?」マキシが肩をすくめる。
「ふふ、確かに人間の都市ではそう呼ぶ建物があるな」シャルルが補足すると、子ども組はおおっと声を上げた。
「ただの建物じゃないぞ。各階層に合わせた環境を再現して、魔物が心地よく暮らせるんだ。
水棲型には水槽と水流、鳥型には止まり木と風通し……」
「おお!」リマが目を輝かせる。「それなら、みんな安心して過ごせるわね」
「しかもだ」ボリスが指を突き上げる。
「屋上には……宴会場を作る!」
「ウヒョー!」イザベラがどこからともなく現れ、手を叩く。
「それ最高じゃん! 温風装置も付けてやるよ!」
「……余計なもんをまた勝手に増やすな」バロスがぼやき、場は笑いに包まれた。
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数日後、魔物マンションの建設は急ピッチで進んでいた。
ゴブリンの若者ハルトやドッグの警備隊まで総出で手伝い、巨大な骨組みが立ち上がっていく。
「すごい……! 本当に町みたいになってきたね」カテリーナが感嘆の声を上げる。
「これでアリアンロッドはまた一歩、進化するってことだな」マキシが誇らしげに言った。
「うん!」ヨーデルも拳を握る。「じゃあ、俺たちも次の挑戦で進化しよう!」
その言葉に、アリアは静かに頷いた。
「そうだな。次は十五階層だ。――お前たちの出番だぞ」
緊張と期待が入り混じる中、子ども組の四人は視線を交わした。
リマの瞳には確かな決意、マキシの表情はやんちゃながらも頼もしさ、ヨーデルは知識への渇望に燃え、カテリーナは薬箱を抱え微笑む。
「行こう。俺たちの未来を試す階層へ!」
仲間たちの声が重なり、十五階層への挑戦が幕を開ける。
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→ 次回「第2話:虚ろの石殿の謎解き」
石造りの広間に隠された仕掛けと、虚ろな響きが一行を試す――。




