表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

416/666

アリアンロッド発展の章 第十四階層編 第1話:幻惑の回廊

十四階層へと降り立った瞬間、アリアたちは全身を湿った霧に包まれた。

 視界は白濁し、足音すら吸い込まれるように消えていく。


「……この気配、ただの霧じゃないな」

 オリビエが老いた瞳を細め、周囲に視線を巡らせる。


 次の瞬間、闇の中から蠢く気配。

 二十体――艶めかしい姿をした女型の魔族、サキュバスの部下たちが一斉に襲いかかってきた。



「来るぞっ!」

 シルが短剣を逆手に構え、矢継ぎ早に飛び込む敵を切り払う。だが彼女の刃は急所を外し、柄で叩くか浅く削ぐにとどまった。


「ぐっ……数が多い!」

 ヨハネスが巨剣を振り上げる。火力なら一撃で薙ぎ払えるはず――

 だがその刹那、アリアが前に出た。


「ヨハネス、待て!」


 彼女は刀を抜かず、合気道の構えへ。

 突進してきた淫魔の腕を掴み、滑らかに体を回転させ――


「はっ!」


 入り身投げ。

 悲鳴と共に二体が宙を舞い、霧の床に叩きつけられる。


 さらに背後から迫る気配に対し、アリアは四方投げを繰り出す。

 敵の力を利用し、別の敵の群れへ投げ飛ばす。

 十字に投げられた身体がぶつかり合い、周囲の陣形が一気に崩れた。


「さすがアリアさん……!」

 フェルナが驚嘆の声をあげつつ、矢を射て霧を裂く。彼女の水魔法が白濁を払い、敵の影が浮かび上がった。



「くっ、こいつら……!」

 ヨハネスが再び剣を握り直し、斬り伏せようとしたその瞬間――


「やめて!!」


 ルーンの叫びが響いた。

 彼女の額には冷や汗が浮かび、瞳はどこか怯えと決意が入り混じる。


「この人たち……自分の意思で戦ってない! 心が縛られてる……! だから、殺さないで!!」


 その声に、皆の動きが止まった。


「……操られている、か」オリビエが低く頷く。

「ならば、手加減で止めるだけだ」


 アリアもすぐに叫ぶ。

「聞いたな! 致命は避けろ! 投げて、峰打ちで、気絶させろ!」


「了解!」

「へへっ、面白くなってきた!」


 仲間たちの声が重なり、戦い方は即座に切り替わった。



 アリアは呼吸投げで突撃してきた敵を掴み、霧の中へと吹き飛ばす。

 シルは短剣の柄で相手の手首を打ち抜き、武装解除。

 フェルナは水魔法で床を凍らせ、動きを封じる。

 トットは闇魔術で「ペインバック」を展開、相手の痛みを返して戦意を削ぐ。


「ふんっ!」ヨハネスも剣を逆手にし、峰打ちで薙ぎ払う。

「……落ち着いたな」オリビエは部下たちの動きを読んで、最小限の打撃で制圧。


 数で勝っていたはずの二十体が、次々と倒れ伏していく。



 やがて、霧の奥に気配。

 艶やかな笑い声が響いた。


「……ふふ。よく見抜いたわね。私の可愛い下僕たちを、ただ斬り捨てるだけじゃないなんて」


 霧を割り、美貌のサキュバスが姿を現す。

 その瞳は妖しく輝き、ルーンをまっすぐ見据えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ