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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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裁きの村、エルムウッド その3

裁きの村、エルムウッドで、アリアは真実の断片を掴みかけた。魔女として裁かれそうになったルーン、そして、彼女を庇ったアリア。村人たちの冷たい目に隠された、村長たちの思惑。しかし、その根底には、もっと深く、暗い秘密が横たわっていた。疫病の原因は、隣村の井戸の地下深くに潜む「恐ろしい魔物」。大昔から村の繁栄と引き換えに、生贄を差し出してきたという「古の血の盟約」──。この悲劇の連鎖を断ち切るため、アリアは最後の戦いに挑む。はたして、彼女は村の闇を払い、真の平和をもたらすことができるのか。全ての謎が解き明かされ、物語はクライマックスを迎える。



村長が口にした「疫病の原因は隣の村の井戸の地下深くにいる恐ろしい魔物」という言葉。

それは、アリアの知る常識を覆すものだった。ルーンは顔を青ざめさせ、震えていた。


「……隣の……村の……井戸……?」


アリアが問うと、ルーンは力なく頷く。


「……うん。村には昔から言い伝えがあるの……」


震える声で続ける。


「……この村は昔、大きな飢饉に襲われて……その時、村の長が、逃げ出そうとした人たちを捕まえて、隣の村の井戸に生贄として差し出した……。そしたら井戸の底から恐ろしい魔物が現れて……」


言葉が詰まる。


「……そして、その魔物がこの村に疫病を流行らせた……。だから村の長は魔物と取り決めをしたの……」


「……取り決め……?」


促すアリアに、ルーンは涙をこぼした。


「……村の繁栄と引き換えに、毎年一人を生贄に差し出すっていう……」


「……なんて非道な……!」


アリアの胸に怒りがせり上がる。


「……その生贄を“選ぶ”のが、魔女裁判だったの……」


アリアはついに、この村に隠された恐ろしい真実を理解した。

魔女裁判は迷信ではない。繁栄のために誰かを犠牲にする――“古の血の盟約”。

そしてその存在を知るのは村長だけではない。村の誰もが秘密を共有し、長く罪を隠し続けてきた。


「……この村の疫病は、魔女が原因じゃない……! 盟約を破った報い……だったんだ……!」


ルーンは泣き崩れる。アリアはその肩を抱きしめた。


「……ルーン。大丈夫。もう、こんな悲劇は終わらせる」



疫病の真実と血の盟約


アリアは村人たちに、村長から聞いたすべてを語った。

人々は顔を青ざめさせ、震えた。


「……そんな……ことが……!」


「……私たちは、ずっと騙されていたのか……!」


怒りと羞恥と恐怖が渦巻く中、アリアが一歩進む。


「皆さん。村長はもういません。そして疫病の原因は魔女ではない。

この村が長きにわたって続けてきた非道の“報い”です」


「……でも、どうすれば……! 盟約を破ったら、また疫病が……!」


絶望の声に、アリアは静かに頷いた。


「大丈夫です。私に任せてください」


「アリアさん……どうするの?」


「隣の村の井戸へ行く。そこで――魔物を断つ」


危険を案じる声が上がるが、アリアは村人たちを見回した。


「私は一人じゃない。皆がいる」


人々はうなずいた。


「アリアさん、私たちも行きます!」

「そうだ、共に戦おう!」


「……ありがとう」


アリアは村人たちと共に、隣村の井戸へ向かった。



井戸の底に潜む闇


井戸に着くと、底から不気味な気配が這い上がってきた。


「……この中に、魔物がいる」


アリアは剣を抜く。


「気をつけて、アリアさん!」


「大丈夫。皆はここで待っていて」


アリアは一人、縄梯子を伝い、底へ降りた。

じめついた空気。灯した松明の明かりに、巨大な洞窟が口を開ける。


さらに暗い瘴気。アリアは剣を構え、声を放った。


「そこにいるのは誰だ」


洞の奥から、湿った声が響く。


「……誰だ……わしを起こした者は……」


進むと、全身を黒い鱗で覆った巨大な蛇の魔物が現れた。

赤い双眸が、アリアを射抜く。


「お前が、疫病を流行らせたのか」


「そうだ。わしはこの村と盟約を結んだ。

繁栄と引き換えに、毎年ひとりの生贄――それが“古の血の盟約”よ。

だが、やつらは盟約を破った。ゆえに、わしは疫病を解き放った」


アリアは剣先を向ける。


「身勝手な“神”を名乗るな。命を弄ぶ権利は、誰にもない!」


魔物が襲いかかる。

鱗は硬く、刃を弾く。受け流しきれず、地へ叩きつけられる。


「……くっ……!」


「人間ごときが、わしに敵うか」


耳の奥で、ルーンの声が震えながら届く。


「……お姉さん、諦めないで……!」


アリアは息を吸う。


「……終わらせる。ここで」


魔物が最後の一撃を振り下ろす瞬間、アリアの剣が淡く光を帯びた。


「……これは――騎士としての覚悟」


光は脈打ち、刃は鱗の隙を射抜く。

心臓を穿たれた魔物が、断末魔とともに崩れ落ち、光に溶けた。


静寂。アリアは膝をつき、天を仰ぐ。


「……終わった」



地上へ戻ると、ルーンが駆け寄り、涙で笑った。


「アリアさん……!」


「うん。もう大丈夫」


「魔物は……?」


「断った。村は救われたわ」


人々は安堵と悔恨の涙を流し、深々と頭を下げる。


「ありがとう……あなたのおかげで、私たちは救われた」


「これからは皆で力を合わせて、この村を守ってください」


アリアは微笑んだ。

ルーンが手を握る。


「私、アリアさんみたいに強くなりたい!」


「なれるよ」



宿屋の主人が進み出る。


「アリアさん……お願いがあります。新しい長老に――」


アリアは静かに首を振った。


「申し訳ありません。私には、まだ成すべきことがあります」




独り旅の再開。


故郷サンマリノ王国の危機を知った彼女は、帰還を決意する。


アリアの旅は、焚き火のぬくもりと人々の温かさから、

国の未来を担う大きな使命へと変わっていった。

その剣は、再び故郷を守るために振るわれる。




女騎士アリアの旅は、エルムウッドで一つの区切りを迎えた。

彼女は闇を払い、真の平和をもたらした。

しかし旅は終わらない。物語は、次の地平へと続いていく。






挿絵(By みてみん)

女騎士アリアの旅は、エルムウッド村で、一つの大きな区切りを迎えた。彼女は、村の闇を払い、真の平和をもたらした。しかし、彼女の旅は、これで終わったわけではない。アリアの旅路は、まだまだ続く。

そして、その物語は、未来へと語り継がれていく。



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